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69話 オオオニ伝説②
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話の前半を聞いた僕は、それから村長さんに話の後半を聞くことにした。
短い昔話みたいな話だけど、多分この後半部分が大事だと思う。僕は直感的に、そう感じていた。
天からのお叱りを受けた後、村は天を仰いだそうな。
沢山の供物を祀り、天に祈りを捧げる祭壇も建てた。
村人は総出で毎日のように祈りを捧げ続けた。
村では完全に信仰意識が恐怖として蔓延しておったんじゃ。
そんなある日のこと。
村で異変が起こった。
朝起きると、村人たちは普段は聞きなれないけたたましい音を聞いたんじゃ。足音のような、地面を踏み荒らす音じゃったそうな。
村人は何事かと思い、慌てふためいた。
すると一人の若い男が、家を飛び出し外に出た。男の姿は皆が家の窓から見えていたそうだが、男は音のした方角を探し出し、それがあのオオオニ山じゃとわかった。
だが男はオオオニ山に近づいたところ、それっきり帰ってくることはなかった。
次の日、川辺で男の無惨な姿が発見された。見ると無惨な、口に出すのも悍ましいほどに赤く染まっていたそうな。
それを見た村人たちは、オオオニ山の祟り。
いつの間にか天からのお叱りではなく、オオオニ山に住う鬼の祟りだと思い、崇め奉った。
しかしそれ以降、不審なことは起こるばかりじゃった。
ある時は村へ繋がる道が塞がれ、ある時は畑が踏み潰され、干物を食われる。
最初の日から異変はあった。
そんなことが続いた日じゃった。
鬼からの要求があった。
それは村の若い女を、毎年二人外と内の山の入り口から、一人で参らせること。
そうすれば、一年間は何もしないというものじゃった。
来年のこともある。
皆痩せ細り、食べていくことも叶わないと思った。子供が死に絶えていたからじゃな。
過ちは起こってしまった。
それは何か、言うまでもないじゃろうて。
村人たちは、恐怖で恐れた。それから鬼の言う通りにし、毎年まだ年端のない処女の女をこの村と、山の中の村から、白と赤の装束を纏わせ、送り出す儀式、鬼嫁送りが行われるようにようになった。
歯痒い気持ちであった。
苦しい心ではあった。
女はかえってくることはなく、 村人たちは悲しみに暮れる暇もないまま、今がある。
それがここソトオニ村とウチオニ村の伝説。
普段は口には出さんが、この時期になると、女を連れて外に逃げるものたちがいるが、追い回すことはなく、何も知らずに育った女、役目を背負った女を連れて、この村は安寧を保っておると言うわけじゃ。
話が終わった。
それがこの村の正体。僕は胸がざわついた。
「これがオオオニ伝説。別名、鬼嫁送りの儀式のことですじゃ」
「それは……酷い話ですね」
「酷いですかな?」
村長さんの目が変わった。
これは狂気の目だ。内側に潜む、影鬼族。その正体は、恐怖意識が芽生えた鬼の成り代わりだ。
「はい、酷い話です。誰かを犠牲にしなければいけない。そんな萎えた話はないぇすよ。あっちゃ駄目だと思います」
「それはそうですが、この村ではそれが普通。生贄になるのは、この村出身の女だけ。それがこの村を鎮める、唯一の方法なんですじゃ。ですから、このリュウガの卵も、これから送られる女に送るものですじゃ。無事を願って」
なんだその話。
僕は虫唾が走った。
この村のことだから首を突っ込むか気はなかったけど、これは流石に見過ごせない。
僕の中に眠る狂気がどうとかじゃない。
僕は生贄を許せなかった。そんな都合のいいことで、犠牲になるのは、単なる保身でしかない。これからも続き続けることなら、僕はこうする。
「村長さん」
「なんですかの?」
「その話聞かせてもらってありがとうございました。ですから僕、その鬼を退治してきます」
僕の声は酷く濁っていた。
祭壇のいや拝殿の中に響き渡り、瞳の色は赤く狂気に駆られていた。
短い昔話みたいな話だけど、多分この後半部分が大事だと思う。僕は直感的に、そう感じていた。
天からのお叱りを受けた後、村は天を仰いだそうな。
沢山の供物を祀り、天に祈りを捧げる祭壇も建てた。
村人は総出で毎日のように祈りを捧げ続けた。
村では完全に信仰意識が恐怖として蔓延しておったんじゃ。
そんなある日のこと。
村で異変が起こった。
朝起きると、村人たちは普段は聞きなれないけたたましい音を聞いたんじゃ。足音のような、地面を踏み荒らす音じゃったそうな。
村人は何事かと思い、慌てふためいた。
すると一人の若い男が、家を飛び出し外に出た。男の姿は皆が家の窓から見えていたそうだが、男は音のした方角を探し出し、それがあのオオオニ山じゃとわかった。
だが男はオオオニ山に近づいたところ、それっきり帰ってくることはなかった。
次の日、川辺で男の無惨な姿が発見された。見ると無惨な、口に出すのも悍ましいほどに赤く染まっていたそうな。
それを見た村人たちは、オオオニ山の祟り。
いつの間にか天からのお叱りではなく、オオオニ山に住う鬼の祟りだと思い、崇め奉った。
しかしそれ以降、不審なことは起こるばかりじゃった。
ある時は村へ繋がる道が塞がれ、ある時は畑が踏み潰され、干物を食われる。
最初の日から異変はあった。
そんなことが続いた日じゃった。
鬼からの要求があった。
それは村の若い女を、毎年二人外と内の山の入り口から、一人で参らせること。
そうすれば、一年間は何もしないというものじゃった。
来年のこともある。
皆痩せ細り、食べていくことも叶わないと思った。子供が死に絶えていたからじゃな。
過ちは起こってしまった。
それは何か、言うまでもないじゃろうて。
村人たちは、恐怖で恐れた。それから鬼の言う通りにし、毎年まだ年端のない処女の女をこの村と、山の中の村から、白と赤の装束を纏わせ、送り出す儀式、鬼嫁送りが行われるようにようになった。
歯痒い気持ちであった。
苦しい心ではあった。
女はかえってくることはなく、 村人たちは悲しみに暮れる暇もないまま、今がある。
それがここソトオニ村とウチオニ村の伝説。
普段は口には出さんが、この時期になると、女を連れて外に逃げるものたちがいるが、追い回すことはなく、何も知らずに育った女、役目を背負った女を連れて、この村は安寧を保っておると言うわけじゃ。
話が終わった。
それがこの村の正体。僕は胸がざわついた。
「これがオオオニ伝説。別名、鬼嫁送りの儀式のことですじゃ」
「それは……酷い話ですね」
「酷いですかな?」
村長さんの目が変わった。
これは狂気の目だ。内側に潜む、影鬼族。その正体は、恐怖意識が芽生えた鬼の成り代わりだ。
「はい、酷い話です。誰かを犠牲にしなければいけない。そんな萎えた話はないぇすよ。あっちゃ駄目だと思います」
「それはそうですが、この村ではそれが普通。生贄になるのは、この村出身の女だけ。それがこの村を鎮める、唯一の方法なんですじゃ。ですから、このリュウガの卵も、これから送られる女に送るものですじゃ。無事を願って」
なんだその話。
僕は虫唾が走った。
この村のことだから首を突っ込むか気はなかったけど、これは流石に見過ごせない。
僕の中に眠る狂気がどうとかじゃない。
僕は生贄を許せなかった。そんな都合のいいことで、犠牲になるのは、単なる保身でしかない。これからも続き続けることなら、僕はこうする。
「村長さん」
「なんですかの?」
「その話聞かせてもらってありがとうございました。ですから僕、その鬼を退治してきます」
僕の声は酷く濁っていた。
祭壇のいや拝殿の中に響き渡り、瞳の色は赤く狂気に駆られていた。
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