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74話 ウチオニ村
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ウチオニ村の入り口は狭く、人が一人入れるぐらいだった。
僕はリーファさんと一列に並んで入り口をくぐると、その先では案の定、祈祷が聞こえる。
僕たちは邪魔しないように、こっそり忍び寄ると、視界の先には白装束に身を包んだ女性と、周りにはたくさんの人の姿があった。
「天月さん、あれは?」
「鬼嫁送りの儀式だよ。見て、あの女の人ないてるよ」
白装束を身に纏った女性。
その瞳は下を向いていて、半分以上が隠れてしまっていたが、薄らと涙がこぼれ落ちていた。
その周りには大人ばかりが輪を囲んでいた。
神社の神主さんのような方が、白装束の女の人に祈りを捧げるとともに、周りにいる大人たちも手を合わせたり、顔を覆い隠したりしている。
ガサッ!ーー
その時、僕はうっかり木の枝を踏んづけてしまった。
もちろんわざとだ。村の人たちの視線が一斉に集まる。
「何者です!」
「あっ、僕たちは冒険者です。ソトオニ村からこの村に上ってきたんです」
そう説明すると、村長さんのような人が神主さんの後ろから出てきた。
それから僕たちを歓迎するでも怪訝に思い、追い返すでもなく、深々と頭を下げる。
「そうですか。もう時間ですか」
「時間?」
「はい。私たちの村では、古くからのこの習わしがあるのです。ささっ、トキコよ。時間じゃ」
「はい、お爺さま」
白装束を見に纏った女の人は、か細い声で返事をし、立ち上がる。
それから周りで輪を作っていた大人たちが避けた。取り囲むではなく、道を作ったんだ。
「あの、待ってください!」
僕は叫んだ。
咄嗟だった。村の大人たちが、僕の顔を一斉に見る。辛く悲しみに暮れた表情だった。
(うわぁ、これは酷いことになってるよ)
僕は顔を顰めた。
辛さが心を侵食する。目の奥に光はなく、永久の中に消えていくのが見えた。
だからこそ、僕は答えた。
「鬼嫁送りはもうしなくてもいいです。僕はそれを伝えにきたんです」
はっきりと答えた。
すると村人が訝しい顔をした。
「どういうことだ」
「鬼嫁送りがなくなる? 何を言っているんだ!」
「だからもうしなくてもいいんです。僕が倒します。その鬼を、そのために冒険者が来たんですから」
小さな体を大きく見せた。
しかし村人、特に男の人たちは、僕のことを信用できないまま胸ぐらを掴みかかる人たちもいた。
そして怖い顔をして、僕の表情を覗き込む。
「ふざけんじゃねえぞ、ガキが!」
「ふざけてなんていませんよ。僕は本当のことを言っているんです」
「嘘でもそんなこと言うんじゃねえ。そんなことできるわけねぇんだよ」
「どうしてですか?」
「この村は……この村はよ」
「落ち着きなさい」
村長さんが口を出した。
すると僕の胸ぐらが軽くなり、地面に下ろされる。
それから土埃を払い、村長さんは咳払いを一つ。
「いいですかな、冒険者さんよ。この村は鬼によって支配されておるんじゃ。何をしようが、鬼の監視の目は光っておる」
「鬼の監視? それは魔力が何かですか?」
「それはわからん。じゃがの、鬼はおるんじゃ。すまんが、冒険者さんは帰ってくれんか」
「帰りませんよ。僕は、鬼を殺します」
「だからガキが!」
僕の瞳がぎらりと光った。
決めたことを捻じ曲げはしない。その目を見た瞬間、村人は硬直する。
まるで凍りついたついたみたいに、その場で動かない。
それには秘密があった。
「なんだこのガキ……」
「鬼だ。本物の鬼だ」
「鬼じゃないですよ。僕は、狂気なだけですから」
そう説明した。
僕の瞳に正気はなく、鬼よりも悍ましかっただろう。
そんな瞳をほんの少しでも見れば、きっと立ってはいられない。
何故なら、僕の邪魔はできないんだから。
僕はリーファさんと一列に並んで入り口をくぐると、その先では案の定、祈祷が聞こえる。
僕たちは邪魔しないように、こっそり忍び寄ると、視界の先には白装束に身を包んだ女性と、周りにはたくさんの人の姿があった。
「天月さん、あれは?」
「鬼嫁送りの儀式だよ。見て、あの女の人ないてるよ」
白装束を身に纏った女性。
その瞳は下を向いていて、半分以上が隠れてしまっていたが、薄らと涙がこぼれ落ちていた。
その周りには大人ばかりが輪を囲んでいた。
神社の神主さんのような方が、白装束の女の人に祈りを捧げるとともに、周りにいる大人たちも手を合わせたり、顔を覆い隠したりしている。
ガサッ!ーー
その時、僕はうっかり木の枝を踏んづけてしまった。
もちろんわざとだ。村の人たちの視線が一斉に集まる。
「何者です!」
「あっ、僕たちは冒険者です。ソトオニ村からこの村に上ってきたんです」
そう説明すると、村長さんのような人が神主さんの後ろから出てきた。
それから僕たちを歓迎するでも怪訝に思い、追い返すでもなく、深々と頭を下げる。
「そうですか。もう時間ですか」
「時間?」
「はい。私たちの村では、古くからのこの習わしがあるのです。ささっ、トキコよ。時間じゃ」
「はい、お爺さま」
白装束を見に纏った女の人は、か細い声で返事をし、立ち上がる。
それから周りで輪を作っていた大人たちが避けた。取り囲むではなく、道を作ったんだ。
「あの、待ってください!」
僕は叫んだ。
咄嗟だった。村の大人たちが、僕の顔を一斉に見る。辛く悲しみに暮れた表情だった。
(うわぁ、これは酷いことになってるよ)
僕は顔を顰めた。
辛さが心を侵食する。目の奥に光はなく、永久の中に消えていくのが見えた。
だからこそ、僕は答えた。
「鬼嫁送りはもうしなくてもいいです。僕はそれを伝えにきたんです」
はっきりと答えた。
すると村人が訝しい顔をした。
「どういうことだ」
「鬼嫁送りがなくなる? 何を言っているんだ!」
「だからもうしなくてもいいんです。僕が倒します。その鬼を、そのために冒険者が来たんですから」
小さな体を大きく見せた。
しかし村人、特に男の人たちは、僕のことを信用できないまま胸ぐらを掴みかかる人たちもいた。
そして怖い顔をして、僕の表情を覗き込む。
「ふざけんじゃねえぞ、ガキが!」
「ふざけてなんていませんよ。僕は本当のことを言っているんです」
「嘘でもそんなこと言うんじゃねえ。そんなことできるわけねぇんだよ」
「どうしてですか?」
「この村は……この村はよ」
「落ち着きなさい」
村長さんが口を出した。
すると僕の胸ぐらが軽くなり、地面に下ろされる。
それから土埃を払い、村長さんは咳払いを一つ。
「いいですかな、冒険者さんよ。この村は鬼によって支配されておるんじゃ。何をしようが、鬼の監視の目は光っておる」
「鬼の監視? それは魔力が何かですか?」
「それはわからん。じゃがの、鬼はおるんじゃ。すまんが、冒険者さんは帰ってくれんか」
「帰りませんよ。僕は、鬼を殺します」
「だからガキが!」
僕の瞳がぎらりと光った。
決めたことを捻じ曲げはしない。その目を見た瞬間、村人は硬直する。
まるで凍りついたついたみたいに、その場で動かない。
それには秘密があった。
「なんだこのガキ……」
「鬼だ。本物の鬼だ」
「鬼じゃないですよ。僕は、狂気なだけですから」
そう説明した。
僕の瞳に正気はなく、鬼よりも悍ましかっただろう。
そんな瞳をほんの少しでも見れば、きっと立ってはいられない。
何故なら、僕の邪魔はできないんだから。
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