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73話 鬼嫁送り
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僕たちが辿り着いたのは、些か妙な村。
そこまで大きくはなく、村の周りには取り囲むように壁が気づかれていた。それこそ、まるで外部からの侵入を防ぐみたいで、人よりも大きなものを遠ざけているようだった。
「静かですね」
「そうみたいですね。何かあるのでしょうか?」
村の周りには、目印の篝火がされていた。
しかしそれ以外に目立つものはなく、干草と土を混ぜて築かれた壁があるだけだった。
僕は耳を澄ました。
村の外からだと中の声は反響して聞こえない。しかしリーファさんは、エルフ特有の力を使い、森の木々たちから情報を集める。
「何やら祈祷をなさっているみたいですね」
「祈祷?」
「はい。お祓いのようにも聞こえると言いますか、どちらにせよ今は立ち寄らない方がいいかと思います」
その話を聞いてなんとなく不信感を覚えた。
この時期にこんなことをするのか。
それにソトオニ村では如何してリュウガの卵を奉納した。
気になる。もう少し思考をしてみよう。
ソトオニとウチオニ。どちらの村も鬼に恐怖心を抱いている。そのせいで心に狂気を抱え、影鬼族になってしまった。
女の人は村から逃げたがっている。
それはどうしてか。ある時期になると、若い村の女の人が、生贄として差し出されるからだ。一体何に? もちろん、この山でのさばっている鬼にだ。これは、あまりに悪き風習だ。
鬼によってここまでの恐怖心を与えていること、今なお監視されているようなしんどい感覚。
おそらくこの山に住む鬼は、魔力を持っている。
それを使って人の恐怖心を煽っている。そうとしか考えにくい。そこにまで至れば、答えは簡単だ。
「生贄……鬼嫁送り!」
僕はこのタイミングを把握した。
離れた点が一列に並ぶ。点と点が繋がった瞬間だった。
しかし一方ではーー
「鬼嫁送りですか? それは一体」
「リーファさんは知らないんでしたっけ。この村に伝わる悪しき風習です。僕はそれを止めるために、ここに来たんです」
あいも変わらず、僕は宣言した。
リーファさんは、少なからず腑に落ちないのか、この村に入るのを躊躇う。何故なら、それは僕たちが危険に晒されるだけではなく、村人も反感を買う可能性があるからだ。
「鬼嫁送り。それはたとえよくないことだとしても、この山の近隣に住まう方々にとっては、命を守るための行為なのではないでしょうか?」
「それはそうだよ。でも、そんな悪き風習は、捨てたほうがいい。ソトオニ村の村長さんも、辞めたがっていたから」
「ですがそれは!」
わかっている。だからこそ、ここにいるんだ。
鬼は凶悪だ。
リーファさんは見に染みていたが、僕の方が理解している。これだけは譲れない。
そんな僕だからこそ、ここにいると思った。
「リーファさん、それなら僕一人でも行くよ」
「はぁー。それは流石にできませんね。わかりました、私が折れます。ですが、無理はしないようにしてくださいね。鬼は怖いですから」
「わかってるよ。鬼は怖いけど、いい鬼もいるから、それを見分けないとね」
僕は笑っていた。
やっぱり仲間っていいや。こうやって口論になっても、いざ一緒にいてくれるなんて、と僕は朗らかになる。そんな中、僕たちは無断で村の中に入った。その間も、誰からも止められることはなく、祈祷の音が耳をつんざいたんだ。しかし気にしなかった。
そこまで大きくはなく、村の周りには取り囲むように壁が気づかれていた。それこそ、まるで外部からの侵入を防ぐみたいで、人よりも大きなものを遠ざけているようだった。
「静かですね」
「そうみたいですね。何かあるのでしょうか?」
村の周りには、目印の篝火がされていた。
しかしそれ以外に目立つものはなく、干草と土を混ぜて築かれた壁があるだけだった。
僕は耳を澄ました。
村の外からだと中の声は反響して聞こえない。しかしリーファさんは、エルフ特有の力を使い、森の木々たちから情報を集める。
「何やら祈祷をなさっているみたいですね」
「祈祷?」
「はい。お祓いのようにも聞こえると言いますか、どちらにせよ今は立ち寄らない方がいいかと思います」
その話を聞いてなんとなく不信感を覚えた。
この時期にこんなことをするのか。
それにソトオニ村では如何してリュウガの卵を奉納した。
気になる。もう少し思考をしてみよう。
ソトオニとウチオニ。どちらの村も鬼に恐怖心を抱いている。そのせいで心に狂気を抱え、影鬼族になってしまった。
女の人は村から逃げたがっている。
それはどうしてか。ある時期になると、若い村の女の人が、生贄として差し出されるからだ。一体何に? もちろん、この山でのさばっている鬼にだ。これは、あまりに悪き風習だ。
鬼によってここまでの恐怖心を与えていること、今なお監視されているようなしんどい感覚。
おそらくこの山に住む鬼は、魔力を持っている。
それを使って人の恐怖心を煽っている。そうとしか考えにくい。そこにまで至れば、答えは簡単だ。
「生贄……鬼嫁送り!」
僕はこのタイミングを把握した。
離れた点が一列に並ぶ。点と点が繋がった瞬間だった。
しかし一方ではーー
「鬼嫁送りですか? それは一体」
「リーファさんは知らないんでしたっけ。この村に伝わる悪しき風習です。僕はそれを止めるために、ここに来たんです」
あいも変わらず、僕は宣言した。
リーファさんは、少なからず腑に落ちないのか、この村に入るのを躊躇う。何故なら、それは僕たちが危険に晒されるだけではなく、村人も反感を買う可能性があるからだ。
「鬼嫁送り。それはたとえよくないことだとしても、この山の近隣に住まう方々にとっては、命を守るための行為なのではないでしょうか?」
「それはそうだよ。でも、そんな悪き風習は、捨てたほうがいい。ソトオニ村の村長さんも、辞めたがっていたから」
「ですがそれは!」
わかっている。だからこそ、ここにいるんだ。
鬼は凶悪だ。
リーファさんは見に染みていたが、僕の方が理解している。これだけは譲れない。
そんな僕だからこそ、ここにいると思った。
「リーファさん、それなら僕一人でも行くよ」
「はぁー。それは流石にできませんね。わかりました、私が折れます。ですが、無理はしないようにしてくださいね。鬼は怖いですから」
「わかってるよ。鬼は怖いけど、いい鬼もいるから、それを見分けないとね」
僕は笑っていた。
やっぱり仲間っていいや。こうやって口論になっても、いざ一緒にいてくれるなんて、と僕は朗らかになる。そんな中、僕たちは無断で村の中に入った。その間も、誰からも止められることはなく、祈祷の音が耳をつんざいたんだ。しかし気にしなかった。
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