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第二章:ビーダの街と空白の星
■12 手紙を運ぶよ
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村にやって来た私とルクス。
その村はステラさんの領地からはそこそこ離れていて、荷馬車を使えば丸一日はかかるだろう。
だけどこっちは竜だ。そのスピードは凄まじく、ものの一時間もあれば着いてしまった。そもそも空を飛べばどんなに遅くても王都まで一日もあれば着いてしまう程なので、それも致し方ないと言えよう。
「ララド村。ここが一番近いんだね」
「みたいですね」
「入ってみよっか。あっそれとルクスは人の姿になってね」
「わかりました」
ルクスは指示通り直ぐに人の姿になる。
流石に村の中で竜に乗った人が現れたら怪しまれちゃうよ。
「じゃあ行こっか」
「はい」
人の姿になったルクスを連れて私はララド村に入った。
ちなみに補足だけどララド村の名前は師匠に聞いたのと、普通に看板が立っていたからわかった。外から見た限りでも治安は良さそうだ。
それからルクスの人の姿だけど長くて白い髪に前髪が一部赤い毛が混ざっている。自分の体表の色がそっくりそのまま髪に表れたんだと思う。
にしてもスリムだなー。背高いし。見惚れるってこう言うことだよね。
「どうかしましたか?」
「ううん。なんでもない」
私は素っ気なく流す。
さてさてそんなことよりも初めて村だ。どんな感じなんだろ。
私は村の中に入った。
村の中は結構普通だった。
ちょっとした集落って感じで、そこそこの広さもある。
主に畑が目立ち、人もかなりいた。
だけど一つだけ気がかりがあった。
「なんか集まってない?」
「ですね」
私は何故か人だかりが出来ているのが気になった。
見れば困ったような顔をしている。
何かに落ち込んでいるのか困惑しているのか、とにかく只事ではなさそうだった。
「あの、どうかしたんですか?」
「えっと、貴女は?」
「あっ、初めまして。私はナナヤと言います。いわゆる旅人です」
「旅人?そちらの方も?」
「はい。こっちはルクスと言います」
「ルクスです」
私達はしんみりムードの村人の前で軽い挨拶を交わした。
村人の人達は不審な目で見るのではなく、不思議な面持ちと何処か悲しそうな顔をしている。
やっぱりそこが気になる。
「あの、失礼ですがなにかあったのですか?」
「は、はい。旅人さんは、この先で倒木によって道が塞がれていることをご存知でしょうか?」
「倒木ですか?いえ、存じませんが(崖になってはところは通ったけどね)」
代表して話してくれた若い女性は重たい雰囲気をはらんでいた。
倒木か。それは大変だ。
「もしかして道が通らなくて困っているんですか?」
「はい。旅人さんもわかるとお思いですが、村を繋ぐ道はあの道しかないんです。そんな道を塞がれてしまっては隣村にも顔を出せず、さらには行商人も来てくださらないので皆日用品など、消耗品が底をつきかけていて」
「この村は野菜を育てているんだが、行商が来てくれないと売って収入も得られない。貴重な魚や肉も手に入らないんだ」
「私達も隣村の人の顔が見られなくてね。それでこうして皆んなで話し合っているんです。どうすればこの状況が打開できるのかどうかと」
「ですが皆んな手詰まりでして。この村はあまり冒険者の方々にも訪れてもらえないので誰かに依頼することもできずにいて。自分たちでどうにかしたくても」
「この村には馬が引ける荷車が二つと馬が二頭しかいないから、流石に力負けしてしまってね」
「男連中をかき集めても駄目だったんだ」
「なるほど。それは大変ですね」
私はスルッと流してしまった。
と言うのも具体的にどうしたらいいのかわからない。
まあ私が倒木を壊せばいいんだけどね。
「よかったら、私達がどうにかしましょうか?」
「「「えっ!?」」」
村人の視線が私に集まる。
まあ私もこれから利用しようと思っている道だ。困った時はお互い様。こう言うのも何かの縁ということで手助けしてあげよう。そう思っただけだ。
だけど村人達は笑顔になるのも早々、深刻そうな顔をし出すではないか。
「えっと、どうしたんです?」
「その申し上げ難いのですが、倒木はこの村の男達を集めても動かなかった程ですから」
「その、アンタの申し付けは嬉しいけどよ、流石にな」
「ああ流石にアレはな」
男衆までそう言う始末だ。
困ったなー。まだどんなのか見てもいないのにイマイチピンとこない。
早々につまづいてしまった私。
しかしそんな中、村人の中に混ざり込むようにして会話に誰か混ざった。
「どうじゃ村のもの」
「村長」
「村長?」
そこにやって来たのは恒例のお爺さんだった。
その隣には妻と思しきお婆さんの姿もある。如何にもって感じだ。かなーり失礼だけどね。
「どうじゃ、なにかいい案はでたかの」
「いえ。そっちはどうでしたか?」
「うむ。やはり誰かが街まで行き、冒険者ギルドに依頼を出すしか手はないじゃろうな」
「そう、ですか……ですがここから街までは」
「うむ。二週間はかかるじゃろう」
「二週間……」
何だろ。
聞いてるだけで重々しい空気に飲み込まれそうになる。
完全に蚊帳の外の私とルクスの身からしてみれば、知ったこっちゃないが適切なのだが流石にここまで切羽詰まった人達を見過ごせる程私も鬼ではない。
「あの、やっぱり私達がどうにかしますよ」
「だからアンタ達には無理だって言ってるだろ!」
またさっきの男の人に怒鳴られてしまった。
そんなに強く言わなくてもいいじゃないか!まあ、私はそんなに体強くないけど。
「こちらの方々は?」
「はい私はナナヤでこっちは相棒のルクスです。二人で旅をしてるんです」
「ほう旅人ですかな。それはいいですなー、旅は人生の経験です。一度は各地を赴いて様々な経験を積むことも人生の楽しみですな」
「そうですね、お爺さん」
「あっ、はぁ」
私は妙にその話に乗れなかった。
まあ私達はこの国の街に辿り着いたらそこを拠点にするだけなので本格的な旅ではないからだろうけど。
しかし如何やら村長さんは話のわかる人みたいで、私の話に興味を持ってくれたみたいだ。
「ところで貴女方が倒木の件をどうにかなされると言うのですかな?」
「はい。根拠とか確信とかじゃないんであてにはしてもらえないんですけど、多分できると思うので」
「ほう。では貴女方に任せてみることにしましょうかな」
「村長!」
男の人は尊重な向かって激しく抗議した。
しかし村長は男に目を向ける。じっと見つめてしばらく男は観念したのか黙ってしまった。
「と言うことです。先程までの非礼をお許しください」
「大丈夫です。それに私達が疑われるのも無理はないので」
そうだろう。
村の一大事だと言うのに正体不明の旅人が如何にか出来るとかほざいているんだ。そりゃ怪しまれても無理はない。
だけど、村長さんは私達のことを信じてくれているみたいだ。しかしあんまり都合の話でもない。
「それで報酬なのですが」
「あっ、いいですよ。私達だって通る道ですし」
「うーむ。では一つ頼まれてはくれんかの」
「はい?」
私は首を傾げた。
村長はそんな私を差し置いて手紙を手渡す。
白い便箋だ。赤い判で封がされている。
「コレを隣村に暮らす私の孫達夫婦に渡してくれんかの?」
「えっ!?」
「儂の孫達は隣村に住んでいるんじゃが、例の倒木のせいでここ数ヶ月顔も見れておらんのだ。だから頼めんかの?」
一瞬迷った。
倒木問題が解決してからでも遅くないのではないだろうか?
しかしそんなことを私が気にしても仕方がない。今のところ、私の「なんとなく」は感知していないので少なくとも良さそうだった。
「わかりました。その依頼、お引き受けします」
「うむ。頼みましたぞ、旅人殿」
如何やら私は冒険者か何かと勘違いされているっぽい雰囲気があった。
だけどまあ人助けはしといて越してことはない。
私は快くその依頼を引き受けるのだった。
その村はステラさんの領地からはそこそこ離れていて、荷馬車を使えば丸一日はかかるだろう。
だけどこっちは竜だ。そのスピードは凄まじく、ものの一時間もあれば着いてしまった。そもそも空を飛べばどんなに遅くても王都まで一日もあれば着いてしまう程なので、それも致し方ないと言えよう。
「ララド村。ここが一番近いんだね」
「みたいですね」
「入ってみよっか。あっそれとルクスは人の姿になってね」
「わかりました」
ルクスは指示通り直ぐに人の姿になる。
流石に村の中で竜に乗った人が現れたら怪しまれちゃうよ。
「じゃあ行こっか」
「はい」
人の姿になったルクスを連れて私はララド村に入った。
ちなみに補足だけどララド村の名前は師匠に聞いたのと、普通に看板が立っていたからわかった。外から見た限りでも治安は良さそうだ。
それからルクスの人の姿だけど長くて白い髪に前髪が一部赤い毛が混ざっている。自分の体表の色がそっくりそのまま髪に表れたんだと思う。
にしてもスリムだなー。背高いし。見惚れるってこう言うことだよね。
「どうかしましたか?」
「ううん。なんでもない」
私は素っ気なく流す。
さてさてそんなことよりも初めて村だ。どんな感じなんだろ。
私は村の中に入った。
村の中は結構普通だった。
ちょっとした集落って感じで、そこそこの広さもある。
主に畑が目立ち、人もかなりいた。
だけど一つだけ気がかりがあった。
「なんか集まってない?」
「ですね」
私は何故か人だかりが出来ているのが気になった。
見れば困ったような顔をしている。
何かに落ち込んでいるのか困惑しているのか、とにかく只事ではなさそうだった。
「あの、どうかしたんですか?」
「えっと、貴女は?」
「あっ、初めまして。私はナナヤと言います。いわゆる旅人です」
「旅人?そちらの方も?」
「はい。こっちはルクスと言います」
「ルクスです」
私達はしんみりムードの村人の前で軽い挨拶を交わした。
村人の人達は不審な目で見るのではなく、不思議な面持ちと何処か悲しそうな顔をしている。
やっぱりそこが気になる。
「あの、失礼ですがなにかあったのですか?」
「は、はい。旅人さんは、この先で倒木によって道が塞がれていることをご存知でしょうか?」
「倒木ですか?いえ、存じませんが(崖になってはところは通ったけどね)」
代表して話してくれた若い女性は重たい雰囲気をはらんでいた。
倒木か。それは大変だ。
「もしかして道が通らなくて困っているんですか?」
「はい。旅人さんもわかるとお思いですが、村を繋ぐ道はあの道しかないんです。そんな道を塞がれてしまっては隣村にも顔を出せず、さらには行商人も来てくださらないので皆日用品など、消耗品が底をつきかけていて」
「この村は野菜を育てているんだが、行商が来てくれないと売って収入も得られない。貴重な魚や肉も手に入らないんだ」
「私達も隣村の人の顔が見られなくてね。それでこうして皆んなで話し合っているんです。どうすればこの状況が打開できるのかどうかと」
「ですが皆んな手詰まりでして。この村はあまり冒険者の方々にも訪れてもらえないので誰かに依頼することもできずにいて。自分たちでどうにかしたくても」
「この村には馬が引ける荷車が二つと馬が二頭しかいないから、流石に力負けしてしまってね」
「男連中をかき集めても駄目だったんだ」
「なるほど。それは大変ですね」
私はスルッと流してしまった。
と言うのも具体的にどうしたらいいのかわからない。
まあ私が倒木を壊せばいいんだけどね。
「よかったら、私達がどうにかしましょうか?」
「「「えっ!?」」」
村人の視線が私に集まる。
まあ私もこれから利用しようと思っている道だ。困った時はお互い様。こう言うのも何かの縁ということで手助けしてあげよう。そう思っただけだ。
だけど村人達は笑顔になるのも早々、深刻そうな顔をし出すではないか。
「えっと、どうしたんです?」
「その申し上げ難いのですが、倒木はこの村の男達を集めても動かなかった程ですから」
「その、アンタの申し付けは嬉しいけどよ、流石にな」
「ああ流石にアレはな」
男衆までそう言う始末だ。
困ったなー。まだどんなのか見てもいないのにイマイチピンとこない。
早々につまづいてしまった私。
しかしそんな中、村人の中に混ざり込むようにして会話に誰か混ざった。
「どうじゃ村のもの」
「村長」
「村長?」
そこにやって来たのは恒例のお爺さんだった。
その隣には妻と思しきお婆さんの姿もある。如何にもって感じだ。かなーり失礼だけどね。
「どうじゃ、なにかいい案はでたかの」
「いえ。そっちはどうでしたか?」
「うむ。やはり誰かが街まで行き、冒険者ギルドに依頼を出すしか手はないじゃろうな」
「そう、ですか……ですがここから街までは」
「うむ。二週間はかかるじゃろう」
「二週間……」
何だろ。
聞いてるだけで重々しい空気に飲み込まれそうになる。
完全に蚊帳の外の私とルクスの身からしてみれば、知ったこっちゃないが適切なのだが流石にここまで切羽詰まった人達を見過ごせる程私も鬼ではない。
「あの、やっぱり私達がどうにかしますよ」
「だからアンタ達には無理だって言ってるだろ!」
またさっきの男の人に怒鳴られてしまった。
そんなに強く言わなくてもいいじゃないか!まあ、私はそんなに体強くないけど。
「こちらの方々は?」
「はい私はナナヤでこっちは相棒のルクスです。二人で旅をしてるんです」
「ほう旅人ですかな。それはいいですなー、旅は人生の経験です。一度は各地を赴いて様々な経験を積むことも人生の楽しみですな」
「そうですね、お爺さん」
「あっ、はぁ」
私は妙にその話に乗れなかった。
まあ私達はこの国の街に辿り着いたらそこを拠点にするだけなので本格的な旅ではないからだろうけど。
しかし如何やら村長さんは話のわかる人みたいで、私の話に興味を持ってくれたみたいだ。
「ところで貴女方が倒木の件をどうにかなされると言うのですかな?」
「はい。根拠とか確信とかじゃないんであてにはしてもらえないんですけど、多分できると思うので」
「ほう。では貴女方に任せてみることにしましょうかな」
「村長!」
男の人は尊重な向かって激しく抗議した。
しかし村長は男に目を向ける。じっと見つめてしばらく男は観念したのか黙ってしまった。
「と言うことです。先程までの非礼をお許しください」
「大丈夫です。それに私達が疑われるのも無理はないので」
そうだろう。
村の一大事だと言うのに正体不明の旅人が如何にか出来るとかほざいているんだ。そりゃ怪しまれても無理はない。
だけど、村長さんは私達のことを信じてくれているみたいだ。しかしあんまり都合の話でもない。
「それで報酬なのですが」
「あっ、いいですよ。私達だって通る道ですし」
「うーむ。では一つ頼まれてはくれんかの」
「はい?」
私は首を傾げた。
村長はそんな私を差し置いて手紙を手渡す。
白い便箋だ。赤い判で封がされている。
「コレを隣村に暮らす私の孫達夫婦に渡してくれんかの?」
「えっ!?」
「儂の孫達は隣村に住んでいるんじゃが、例の倒木のせいでここ数ヶ月顔も見れておらんのだ。だから頼めんかの?」
一瞬迷った。
倒木問題が解決してからでも遅くないのではないだろうか?
しかしそんなことを私が気にしても仕方がない。今のところ、私の「なんとなく」は感知していないので少なくとも良さそうだった。
「わかりました。その依頼、お引き受けします」
「うむ。頼みましたぞ、旅人殿」
如何やら私は冒険者か何かと勘違いされているっぽい雰囲気があった。
だけどまあ人助けはしといて越してことはない。
私は快くその依頼を引き受けるのだった。
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