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3章

第21話 コボルトの群れ

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 俺はエクレアと共に、鉱山内部の坑道をただひたすらにまっすぐ歩いていた。
 すると広い空間に出た。如何やら噂に聞いた中間地点に位置する採掘場跡らしい。
 その証拠に、地面にはトロッコのレールが敷かれている。
 昔使われていた採掘した鉱石運搬用のトロッコだ。今も使えるのだろうか?
 俺はエクレアの前を歩き、警戒して覗き込んだ。
 見たところ目立ったモンスターは1種類のみだ。

「コボルトだね」
「そうだな。数は7匹か……」
「ううん。《黄昏の陽射し》だと、まだ少しいるよ」
「……そうだな。全部で13匹か」

 俺はエクレアの飲み込みの良さに驚いた。
 どうやら俺が言ったことを気にしてのことだ。確かに周りに意識を向けろとは言ったが、魔法はやりすぎだ。無駄な労力はコストカットだ。

「そうだな。エクレア偉いぞ」
「ふへっ! あ、ありがとう」

 俺が褒めただけでエクレアは瞬きを繰り返した。
 そんなに意外だったのか。確かに俺はあまり褒めるような真似をしないが、褒めない訳ではない。
 けれどここまで動揺して頬まで赤くなられるのは困る。熱でもあったら戦闘に支障が出るだけだ。

「エクレア。《黄昏の陽射し》はなしだ」
「どうして? こんなに数がいるんだよ」
「正直どうして太陽も届かない場所に“黄昏”が生じるのかは疑問だが、その魔法は切り札に取っておけ」
「切り札は他にあるのに……了解。じゃあ、全力で倒しちゃうぞ」

 俺とエクレアはコボルトを倒しに向かった。
 俺は腰に携えた剣を抜刀し、コボルトを真っ二つに切った。
 突然の奇襲にコボルトは驚き、俺に向かって来る他のコボルト達だったが、背後から迫る少女を見逃していた。

「せーのっ!」

 エクレアはコボルトを2匹も横に一閃した。
 さらに自分に注意が向いた瞬間、太陽の聖剣の柄の部分を使ってコボルトの脳天を貫いた。
 さらに続けざまに、コボルトの体を引き裂く。
 あまりの速さと正確さに俺は驚く。

「まさか、こんな真似ができるのか!」

 俺はエクレアの凄さを目の当たりにした。
 瞬く間にコボルトを5匹倒してしまい、俺はその間に1匹だけ倒す。
 それから残っていた6匹のコボルトは隠れたまま出てこない。

「カイ君、残りのコボルトはどうするの?」
「そうだな。出てくるまで待つか」
「えっ!? それって危なくないの?」
「普通はそう思うだろうな。だがここまで圧倒的だったんだ。目の前で仲間を殺され、魔石に変わった。そして本能的な性格のモンスターならこの状況を本能的に感じ取るはずだ」
「……恐怖だよね。なんて、恐ろしいことを思いつくの?」

 エクレアは俺の考え読むと身震いをした。
 だけどすぐに振り切って俺の手を掴むと、パッと明るい笑みを浮かべる。
 あまりに情緒を無視した動きに、俺に動揺が伝染した。
 珍しく反応がたどたどしくなる。

「な、何だ急に」
「凄いよ、カイ君って本当に凄い。私カイ君のそういうところ好きだよ」
「はい?」

 正直に俺は首を捻る。何が良いのかわからない。
 だけど同じようなことを言った奴がいた。
 リオンは俺の戦い方を見て、こう言ったんだ。

「カイの戦い方は勝利に貪欲で僕は嫌いじゃないよ」

 そのことを余韻として思い出すと、不意に笑みが零れた。
 エクレアはその表情を見逃さず、ニカッと口角を上げる。
 その様子を見ていたコボルト達は“今だ”と踏んで襲い掛かるも、俺はそれすら見逃さない。

「邪魔だ」

 バッサリとコボルトが切り刻まれた。
 エクレアは油断していたらしく、俺の素振りに驚いて口を開ける。

「あ、ありがとう。もしかして油断を誘ったの?」
「いいや。油断ができたからな、それを囮に使った」
「むっ! 何だか嫌だな。私は本気だったのに」

 エクレアは勝ったにもかかわらず怒っていた。
 やっぱり女心は難しい。俺は腕組をしてエクレアに向き合った。
 何が良いのかさっぱりだ。
 だから俺はよくよく観察していると、エクレアの頬が膨らんでまるでフグみたいで可愛かった。
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