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3章

第22話 鉄鉱石を採掘するぞ

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 俺とエクレアはツルハシ片手に採掘を回避した。
 左手で展開した《武器庫の空間チェスト・スペース》から取り出したのだが、エクレアは何処から取ってきたのだろう。
 正直、何処に隠していたのか気になる。

「さーてと、ガンガン掘っちゃうよ!」
「そうだな。……この変だな」

 俺はエクレアと違い、目で見た判断材料を基に鉄鉱石の当たりを付ける。
 どうやらそこそこ良い大きさの鉄鉱石が埋まっていそうだ。
 俺はツルハシを大きく振り上げ、腕と腰の運動を利用して楽に叩いた。

 カキーン!

 ツルハシの先が鉱山内部の壁に叩きつけられる。
 甲高い音を発しながら、男のパワーも噛み合い破片が飛び散る。
 鋭いツルハシの先端だ。それだけ細かく壁が剥がれ、頬のすぐ傍をすり抜けた。

「なるほどな。確かにここは鉱山に相応しいものが採掘できるみたいだ」
「それどれ……おっ! 立った一振りでこんなに」

 エクレアは転がって落ちてきた鉄鉱石を拾い上げた。
 黒い石ころのようだがかなり硬い。しかも色黒でまるでガラスだ。
 ただしいくら顔を近づけても反射することはない。
 かなり良い鉄鉱石の特徴を色濃く残していた。綺麗な黒だ。

「この調子で掘り進めれば1時間から2時間で10キロは採掘できるだろう」
「よーし! 私もがんばろーっと」

 エクレアは自分の持ち場に付いた。
 それから細く華奢な体からは到底思えないパワーを生み出し、ツルハシを振り下ろした。
 ガツン! と響くような音を立てエクレアの頬を引き攣らせる。

「いったぁい! 何、この硬さ」
「どうした?」
「とっても硬いんだね鉄鋼石って。私、採掘何て初めてだからビックリしたよ」
「そうだな。初めてなら仕方ない。怪我はしていないか?」
「うん大丈夫だよ」
「痺れていないか。鉄を叩いたんだ、腕に衝撃があってもおかしくない」
「だから大丈夫だよ。心配しすぎだって……でも、ありがとう」

 エクレアは気恥ずかしいのか、顔を背けた。
 耳の先が若干赤い。もしかしたら血管にダメージがあったのかもしれない。
 俺は心配して包帯を取り出そうとしたが、何故か遠慮されてしまった。
 相手の心を読むのは難しい。

「……鉄鉱石の塊だな。これなら1つで3キロぐらいあるだろうな」
「3キロ! こんな塊まで残っているんだ。でもさカイ君……」
「どうした、急に黙って」

 俺はエクレアが急に黙ったことを訝しんだ。
 そこで視線をエクレアが砕こうとした鉄鉱石に目を落とす。すると明らかにおかしなことがあった。
 黒いはずの鉄鉱石の中身が鈍くはあるが金色に輝いていたからだ。

「これは……金だな」
「き、金! えっ、ここって金が出るんだ。確かに昔は金が出てたはずだけど、金の採掘は冒険者ギルドの人が20年前に終わったって言っていたはずだよ。まだ出るんだね」
「おかしいな。俺が掘ったところには出なかった。もう少し掘ってみるか」

 俺はエクレアとは別の場所を狙って掘り始めた。
 ツルハシの先が硬い降参の壁を破壊する。
 ボロボロと削れていくが、何処にも金は出てこない。明らかにおかしい。
 金の採掘ポイントだとすればこの辺り一帯に広がっていてもおかしくないはずだ。多分……

「あれれ? カイ君、こっちからも出たよ」
「嘘だろ!」
「ううん本当だよ。ほら、この量見てよ」

 エクレアは採掘した鉄鉱石とは別に金をありったけかき集めていた。
 運が良いのか、それとも何か理由があるのか。
 俺には後者のように思えたが、エクレアは楽しそうだ。本人のポジティブさがモチベーションの向上に繋がっているのならそれに越したことはない。

「そうだ。カイ君もこっちに来て一緒に掘ろうよ。洞窟の奥に行けば行くほど金が埋まっているみたいだよ」
「俺はいいよ。……洞窟の奥?」

 鉱山は元を辿れば洞窟だ。そこを人間が鉱山に変え、ダンジョンになった。
 となると何か嫌な予感がする。
 もしかしたらとんでもないモンスターが潜んでいるのではないかと思い、俺は鉱山の奥を睨んでいた。
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