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6章
第58話 洞穴を見つけたぞ!
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俺とエクレアは周囲に警戒を怠らなかった。
キョロキョロと不必要なほど視線を配り、モンスターを警戒していた。
「ねえカイ君。さっきから凄いんだけど」
「何が凄いんだ?」
「果実のニオイだよ」
「果実? そんなもの俺にはしないぞ」
「五感が鈍いんだよ。でもするでしょ? この森、リンゴなんて実ってないよ?」
そうは言われてもあまりに突然すぎて俺には同感できない。
立ち止まって嗅覚を頼ってみても流石にリンゴのニオイなんてしなかった。
甘いに香りも酸味の強さも何も感じないので、俺はエクレアを疑ってしまった。
「本当にそんなものがするのか?」
「するよ。だってあのおじさんの馬車の荷物、ほとんどなかったでしょ?」
「そうだな。確かに何もなかった」
「私カイ君が出た後に急いで聞いたんだよ。あのおじさんの馬車には大量の果物が乗っていたって」
「果物が? ゴブリンは確かに雑食性だが、そう果物ばかり食べるのか?」
モンスターにとって食事は必要不可欠だ。
人間であれ動物であれ、結局食べて寝ないと生きていけない。
モンスターの中には体格のわりに大柄なものも多いが、ゴブリンは基本雑食ですき好むのは肉だ。果物を好んで食べるようなエネルギー効率をしているゴブリンを俺は聞いたことがない。
「まあ、そこにあったからついでに持って行ったんだろうな。だから……」
「だから、このニオイを追えばいいんだよ」
「何言っているんだ? 足跡はこの先に通じているだろ」
俺は地面を見た。
草が折れていて、明らかにゴブリンが進んだと思しき痕跡がある。
しかしエクレアは否定する。俺の経験が間違っているとでも言うのか?
「絶対違うよ。この足跡、絶対罠だって」
「どうしてそう言い切れる。ゴブリンは知性に関しては著しく他のモンスターに比べても低い。いくら相手が群れる種だからとは言っても、知性を持つ個体は限りなくゼロに近いんだよ」
「だからそこが問題なの! 常識や確立に囚われててもダメだよ」
「そこまで言うならこの先に何があるかわかるのか?」
「そんなのわかんないよ。でも、この先は死のニオイがする。とっても臭い、死のニオイがするの」
エクレアは俺の肩を掴んで離さなかった。
仕方ないので引き剥がし、俺は先に進もうとしたがエクレアがまた割り込む。
これじゃあ埒が明かないので、俺は武器庫の空間を展開し、そこからあるアイテムを取り出した。取り合の頭の形をした単眼鏡だ。
「それは何?」
「これは鷹之眼鏡だ。コイツを使えば、どれだけ遠くても俺の視野に入れば一発でわかる」
そう言いながら、俺は鷹之眼鏡を使ってみた。
するとこの先には何もないようで、安全らしい。だが何かおかしい。
俺は魔力を込めてよりはっきりと覗き込むと、真下に沼のようなものがある。
あんなものなかったはずだが、そこには骨が浮かんでいる。
「アレは毒沼か。酸性の性質を持つ毒を使っているな!」
「ほら、やっぱりあったでしょ?」
「だがあんなものがあったところで引っかかる奴が……」
俺はさらに目を凝らす。すると何でもないイノシシがやって来て沼に触れた。
すると全身がドロドロに溶けて、青緑色をした期待を噴射する。
俺は絶句してしまい、不意に鷹之眼鏡を離した。
「なるほどな。アレはゴブリンの仕業とは思えない」
「ほら、やっぱり何かあるでしょ?」
「だがよくわかったな。お前には見えているのか?」
「うーん、どうかな? でも、明らかに危険な香りするでしょ?」
「そうだな。全くお前の嗅覚はどうなっているんだ……」
「どうして溜息吐いてるの?」
「お前は少し、自分の実力を見てからものを言え」
「どういうこと! 私は自分のできることをしているだけなんだけど!」
エクレアが下手なツッコミを入れた。
だが俺はコイツの実力を見て、相当レベルが上がっていると思った。
単純にエクレアの実力を買い被っていたのだろうか?
「それじゃあ私の方に行こうね」
「仕方ないな」
俺はエクレアの言い分に従うと、エクレアの嗅覚に頼ることにした。
それから草むらをかき分けて木の枝々を抜けると、先に見えてきたのは岩場だった。
「あっ、ここに岩場があるね」
「しかも目の前には洞穴か?」
「そうだね。ニオイはこの先に通じているよ!」
「どんな嗅覚だ」
エクレアの実力はどうなっているんだ。
俺は洞穴周りを見て回ると、頻繁にゴブリンが出歩いていることが窺えた。
地面が少し凹んでいて、砂が巻き上がっている。
「これは相当な頻度で洞穴から出入りしているな」
「そうなの?」
「お前は嗅覚と魔法以外に優れている面はないのか!」
「酷いなー。そういうこと、他の人に言ったら絶対ダメだからねっ!」
「そうか。俺は知らんな」
「はい、そこがダメなとこだよ!」
エクレアに注意されてしまった。
しかし俺が悪いのか? 俺は悪くないと完全に言い切る。
キョロキョロと不必要なほど視線を配り、モンスターを警戒していた。
「ねえカイ君。さっきから凄いんだけど」
「何が凄いんだ?」
「果実のニオイだよ」
「果実? そんなもの俺にはしないぞ」
「五感が鈍いんだよ。でもするでしょ? この森、リンゴなんて実ってないよ?」
そうは言われてもあまりに突然すぎて俺には同感できない。
立ち止まって嗅覚を頼ってみても流石にリンゴのニオイなんてしなかった。
甘いに香りも酸味の強さも何も感じないので、俺はエクレアを疑ってしまった。
「本当にそんなものがするのか?」
「するよ。だってあのおじさんの馬車の荷物、ほとんどなかったでしょ?」
「そうだな。確かに何もなかった」
「私カイ君が出た後に急いで聞いたんだよ。あのおじさんの馬車には大量の果物が乗っていたって」
「果物が? ゴブリンは確かに雑食性だが、そう果物ばかり食べるのか?」
モンスターにとって食事は必要不可欠だ。
人間であれ動物であれ、結局食べて寝ないと生きていけない。
モンスターの中には体格のわりに大柄なものも多いが、ゴブリンは基本雑食ですき好むのは肉だ。果物を好んで食べるようなエネルギー効率をしているゴブリンを俺は聞いたことがない。
「まあ、そこにあったからついでに持って行ったんだろうな。だから……」
「だから、このニオイを追えばいいんだよ」
「何言っているんだ? 足跡はこの先に通じているだろ」
俺は地面を見た。
草が折れていて、明らかにゴブリンが進んだと思しき痕跡がある。
しかしエクレアは否定する。俺の経験が間違っているとでも言うのか?
「絶対違うよ。この足跡、絶対罠だって」
「どうしてそう言い切れる。ゴブリンは知性に関しては著しく他のモンスターに比べても低い。いくら相手が群れる種だからとは言っても、知性を持つ個体は限りなくゼロに近いんだよ」
「だからそこが問題なの! 常識や確立に囚われててもダメだよ」
「そこまで言うならこの先に何があるかわかるのか?」
「そんなのわかんないよ。でも、この先は死のニオイがする。とっても臭い、死のニオイがするの」
エクレアは俺の肩を掴んで離さなかった。
仕方ないので引き剥がし、俺は先に進もうとしたがエクレアがまた割り込む。
これじゃあ埒が明かないので、俺は武器庫の空間を展開し、そこからあるアイテムを取り出した。取り合の頭の形をした単眼鏡だ。
「それは何?」
「これは鷹之眼鏡だ。コイツを使えば、どれだけ遠くても俺の視野に入れば一発でわかる」
そう言いながら、俺は鷹之眼鏡を使ってみた。
するとこの先には何もないようで、安全らしい。だが何かおかしい。
俺は魔力を込めてよりはっきりと覗き込むと、真下に沼のようなものがある。
あんなものなかったはずだが、そこには骨が浮かんでいる。
「アレは毒沼か。酸性の性質を持つ毒を使っているな!」
「ほら、やっぱりあったでしょ?」
「だがあんなものがあったところで引っかかる奴が……」
俺はさらに目を凝らす。すると何でもないイノシシがやって来て沼に触れた。
すると全身がドロドロに溶けて、青緑色をした期待を噴射する。
俺は絶句してしまい、不意に鷹之眼鏡を離した。
「なるほどな。アレはゴブリンの仕業とは思えない」
「ほら、やっぱり何かあるでしょ?」
「だがよくわかったな。お前には見えているのか?」
「うーん、どうかな? でも、明らかに危険な香りするでしょ?」
「そうだな。全くお前の嗅覚はどうなっているんだ……」
「どうして溜息吐いてるの?」
「お前は少し、自分の実力を見てからものを言え」
「どういうこと! 私は自分のできることをしているだけなんだけど!」
エクレアが下手なツッコミを入れた。
だが俺はコイツの実力を見て、相当レベルが上がっていると思った。
単純にエクレアの実力を買い被っていたのだろうか?
「それじゃあ私の方に行こうね」
「仕方ないな」
俺はエクレアの言い分に従うと、エクレアの嗅覚に頼ることにした。
それから草むらをかき分けて木の枝々を抜けると、先に見えてきたのは岩場だった。
「あっ、ここに岩場があるね」
「しかも目の前には洞穴か?」
「そうだね。ニオイはこの先に通じているよ!」
「どんな嗅覚だ」
エクレアの実力はどうなっているんだ。
俺は洞穴周りを見て回ると、頻繁にゴブリンが出歩いていることが窺えた。
地面が少し凹んでいて、砂が巻き上がっている。
「これは相当な頻度で洞穴から出入りしているな」
「そうなの?」
「お前は嗅覚と魔法以外に優れている面はないのか!」
「酷いなー。そういうこと、他の人に言ったら絶対ダメだからねっ!」
「そうか。俺は知らんな」
「はい、そこがダメなとこだよ!」
エクレアに注意されてしまった。
しかし俺が悪いのか? 俺は悪くないと完全に言い切る。
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