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◇86 変わり者には変わり者を
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鈴来は何故か、誘いを断った。
その理由はその性格が由来する。鈴来は明るい性格と裏腹に、群れを成すことが苦手だった。
つまり自分を押し殺すことが嫌いで、弓道も個人しか出ていない。
完全に仕事人の風格を持っていた。その辺りは斬禍とは真逆と言える。
「確かに人前だと合わせるよ。でも、ゲームの中ぐらい一人でいたいでしょ」
「それは私を誘ったことと矛盾していますよ。それにまだ一度もパーティーを組んでいません」
「気心が知れてたら、考えなくていいの! とにかく知らない子とずっと一緒だと、最高のパフォーマンス何て発揮できないでしょ」
鈴来の言うことももっともだった。
しかしここで折れるわけにはいかない。あのトンボを倒す倒さないではない。
雷斬はみんなでやりたかった。いつも一人でいる鈴来が本気を出せる場所を提供はできないけど、気にしなくてもいいようにしてあげたい。
「鈴来、私はたかがゲームなんて思っていませんよ。あの場所は、リアルの1つです」
「リアルの1つ? 確かにゲームっぽさは薄いけど、ファンタジーだと思うよ」
空気を壊した。
だけどめげない斬禍は自分の言葉で繋ぐ。
「そういう意味ではありません。あの空間は、そこにいる人間もNPCも全ての和得御結ぶことを共有する場所だと思うんです。本人と出会うことはできなくても、そこにいるのはディスプレイの向こうにいるアバターではなく、れっきとした人間。本人なんです」
「斬禍がそう言うのは珍しいわね。とことん入れ込んでいるみたいだけど……」
「何故でしょうか。最近になって、如実にそれが伝わってくるんです。これが実感と言うものでしょうね」
胸に手を当てて考えていた。最近はステータスにも変化が出ている。特に変化していたのは、精神力だった。
ギルドに加入してからと言うもの、いやアキラたちに出会ってからと言うもの、斬禍の精神力が大きく膨れ上がった。
これが変化。あの世界が起こすのは、この世界での行動だけではない。
無効の世界の影響は良くも悪くも、こちらの自分にも影響を及ぼしてくれる。
今回は良い方向に転がった。
「ですから、鈴来にも知ってほしいんです。ギルドがではなく、あの方たちを紹介したいんです」
「そこまで言われちゃうと……はぁー。わかったわ」
「本当ですか! ありがとうございます」
斬禍は頭を下げた。しかし鈴来はここまでさせる「あの方たち」と言う言葉に引っかかっていた。
そこまで良い人たちなのか、それとも強いものを持っているのか。
何がそこまで誘導させたのかわからないんだ。だから少しだけ聞いてみることにしたんだ。
「ねえ斬禍。その人たちって、どんな子?」
「学生です。私たちと同じ、一年生の。ここからさほど遠くない御鷹の方に住んで居るらしいですよ」
「御鷹って、ローカル線で4駅じゃない。意外に近い距離に……」
「そうですね。でも芯を持っている方たちです。ですが……」
「ですが何よ、そこで止まらないでよ!」
鈴来は言葉に詰まらせた斬禍に些か動揺した。
斬禍が喉を詰まらせたように話を切るのは、大概よろしくないことだと踏んでいたから。
けれど、今回は少し違う。口角を上げ、頭の中で話す言葉を考える。
それから10秒ほど。
夕日に照らされ、綺麗な直立で立ち尽くす斬禍を向かいで見守る鈴来の構図。
住宅路に立つ二人の影が怪しく伸び、そんな中斬禍は思いついた言葉を口にする。
「変わった方たちですよ。芯があって、それでいて個性的。変わり者私たちにとっては、特に気にすることもない方たちです」
「そうなんだ。変わり者……ちなみにどんな子たち?」
「そうですね、やたら物騒な思考回路の方や無尽蔵の体力を持った方、意識の切り替えの変化で何でもこなせる万能な方ですね」
鈴来は黙って聞いていたが、ポカンとしていた。
目が泳ぐどころか点になる。
「変わったって言うか、個性の塊ね」
「そうですね。確かにそうです!」
斬禍も納得して、2回も口にする。大事なことなので、2回も言う。
黒い影になって、赤々と光る太陽の輝きが2人を鮮やかにした。
その理由はその性格が由来する。鈴来は明るい性格と裏腹に、群れを成すことが苦手だった。
つまり自分を押し殺すことが嫌いで、弓道も個人しか出ていない。
完全に仕事人の風格を持っていた。その辺りは斬禍とは真逆と言える。
「確かに人前だと合わせるよ。でも、ゲームの中ぐらい一人でいたいでしょ」
「それは私を誘ったことと矛盾していますよ。それにまだ一度もパーティーを組んでいません」
「気心が知れてたら、考えなくていいの! とにかく知らない子とずっと一緒だと、最高のパフォーマンス何て発揮できないでしょ」
鈴来の言うことももっともだった。
しかしここで折れるわけにはいかない。あのトンボを倒す倒さないではない。
雷斬はみんなでやりたかった。いつも一人でいる鈴来が本気を出せる場所を提供はできないけど、気にしなくてもいいようにしてあげたい。
「鈴来、私はたかがゲームなんて思っていませんよ。あの場所は、リアルの1つです」
「リアルの1つ? 確かにゲームっぽさは薄いけど、ファンタジーだと思うよ」
空気を壊した。
だけどめげない斬禍は自分の言葉で繋ぐ。
「そういう意味ではありません。あの空間は、そこにいる人間もNPCも全ての和得御結ぶことを共有する場所だと思うんです。本人と出会うことはできなくても、そこにいるのはディスプレイの向こうにいるアバターではなく、れっきとした人間。本人なんです」
「斬禍がそう言うのは珍しいわね。とことん入れ込んでいるみたいだけど……」
「何故でしょうか。最近になって、如実にそれが伝わってくるんです。これが実感と言うものでしょうね」
胸に手を当てて考えていた。最近はステータスにも変化が出ている。特に変化していたのは、精神力だった。
ギルドに加入してからと言うもの、いやアキラたちに出会ってからと言うもの、斬禍の精神力が大きく膨れ上がった。
これが変化。あの世界が起こすのは、この世界での行動だけではない。
無効の世界の影響は良くも悪くも、こちらの自分にも影響を及ぼしてくれる。
今回は良い方向に転がった。
「ですから、鈴来にも知ってほしいんです。ギルドがではなく、あの方たちを紹介したいんです」
「そこまで言われちゃうと……はぁー。わかったわ」
「本当ですか! ありがとうございます」
斬禍は頭を下げた。しかし鈴来はここまでさせる「あの方たち」と言う言葉に引っかかっていた。
そこまで良い人たちなのか、それとも強いものを持っているのか。
何がそこまで誘導させたのかわからないんだ。だから少しだけ聞いてみることにしたんだ。
「ねえ斬禍。その人たちって、どんな子?」
「学生です。私たちと同じ、一年生の。ここからさほど遠くない御鷹の方に住んで居るらしいですよ」
「御鷹って、ローカル線で4駅じゃない。意外に近い距離に……」
「そうですね。でも芯を持っている方たちです。ですが……」
「ですが何よ、そこで止まらないでよ!」
鈴来は言葉に詰まらせた斬禍に些か動揺した。
斬禍が喉を詰まらせたように話を切るのは、大概よろしくないことだと踏んでいたから。
けれど、今回は少し違う。口角を上げ、頭の中で話す言葉を考える。
それから10秒ほど。
夕日に照らされ、綺麗な直立で立ち尽くす斬禍を向かいで見守る鈴来の構図。
住宅路に立つ二人の影が怪しく伸び、そんな中斬禍は思いついた言葉を口にする。
「変わった方たちですよ。芯があって、それでいて個性的。変わり者私たちにとっては、特に気にすることもない方たちです」
「そうなんだ。変わり者……ちなみにどんな子たち?」
「そうですね、やたら物騒な思考回路の方や無尽蔵の体力を持った方、意識の切り替えの変化で何でもこなせる万能な方ですね」
鈴来は黙って聞いていたが、ポカンとしていた。
目が泳ぐどころか点になる。
「変わったって言うか、個性の塊ね」
「そうですね。確かにそうです!」
斬禍も納得して、2回も口にする。大事なことなので、2回も言う。
黒い影になって、赤々と光る太陽の輝きが2人を鮮やかにした。
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