93 / 617
◇93 ランクアップとカタログ
しおりを挟む
7月ももう終わり頃。リアルの外の暑さもさることながら、ゲームの中も暑かった。
とはいえ、ゲームの中だからそこまで暑くないだろうと高をくくっていると大間違い。
実際は何倍も暑いんだ。
「ううっ、暑い……」
「暑い暑い言うな。余計に暑く感じるだろ」
Nightは涼しい顔で文庫本を読みながら返した。
アキラとフェルノは床に寝そべりだらしない格好で凄いしている。
それもそのはず、ギルドホームの中は蒸し暑くはないが、かなり温度が高いんだ。
「ねえフェルノ。この家の中って今何℃なのかな?」
「わかんない。もしかしたら、外より暑いかもしれないよー」
「それはやだなー。Night、今ッて気温は何℃なの?」
アキラは尋ねる。
するとNightは文庫本から目を離し、自分が据わっているソファー席から一番近いところの壁にかけられた温度計を見た。
如何やらこの部屋の中は30℃越えらしい。
「33℃だ。その方が気温は高い」
「33℃! それってもう外だよ」
「そうだーそうだー。エアコンを入れろー」
「そんなものがこの世界にあると思うな」
Nightはすぐさま一蹴した。
フェルノは仰向けになり大の字になる。目の奥の闘志が余計にフェルノ体を熱く煮えたぎらせていた。
その様子を横になって同じく寝転ぶアキラは死んだ目で認識した。
「フェルノが珍しいね。砂漠でも暑いの大丈夫だったのに」
「そういう暑さとは少し違うんだよー。ほら、まだエアコンのつかない教室で受ける蒸し暑い初夏の授業よりもグラウンドを走って風を全身で感じているときの方が気持ちいいでしょ? そういうもんなんだよー」
「確かにわかるかも」
「でしょー。だから流石にこの暑さはね。でも変だよね、Nightは全然汗かいてないよねー」
フェルノはNightに尋ねる。
すると文庫本を閉じてしまい、インベントリから何かを取り出す仕草をしながら軽く答える。
「私だって暑いのは暑いぞ。だが元々体温が低い方だからな。そこまで暑さを感じないんだ」
「それでこの間は倒れちゃったけどね」
「……あれは、砂漠の暑さが悪い」
Nightはムッとした顔になる。不甲斐ないところを見られてしまってきっと恥ずかしいのだろう。
アキラはNightの唇を尖らせた表情を見てすぐに勘づくと、今度はインベントリの操作が気になる。何を取り出そうとしているのかな?
「Nigh、何探しているの?」
「この間ランクアップしたんだ。ギルドから届けられたものがあったんだが……これだ」
ランクアップ。ベルが仲間に加わってくれたおかげで思った以上に早くDランクになることができた。
そのランクアップ報酬としてギルドから何か届け物があったのは知っていたけれど、一体何だろうか?
アキラは起き上がりテーブルの上に叩きつけられたものを見てみると雑誌のようだった。
「これって何? 雑誌」
「カタログじゃないのー?」
「そうだな。これはカタログだ。ほら、何千円分支払うことで描かれている商品が貰えるようになるプレゼントカタログみたいなものだ」
淡々と説明されているけど、わかりやすかった。
今日は雷斬とベルは来ていないけど、試しに中身を読んでみることにした。
たくさんの商品がリストアップされている。
「うわぁ、なにこれ?」
「変なのがたくさん載ってるね。ほら、これとか誰が選ぶのかな?」
「弓道用の的みたいだね。ベルなら欲しいって言うかも」
弓道の試合で使われるような立派な的のセットだった。
とは言え必要かどうかわからない。いざとなればNightがスキルで作ってくれる。
「これは如何だ、電光丸」
「日本刀? 刃渡りが88センチの細身の刀だね」
「鍔の部分が雷マークになってる。使い難そうだねー」
「インテリア用らしいな。そもそも武器の需要の少ないこの世界で、選ぶ奴はよっぽどのマニアだろ」
Nightは敵を作りそうなことを言いだした。
とは言え、雷斬だったらこう言い返すはずだ。「刀は自分に適したものを使うべきです。しかし一番重要なことは、刀の切れ味も寿命も担うのは、使い手の腕次第ですから」とか言い出すに決まっている。ちょっとカッコいい。
本人たちがいないところで好きかって言い合った。
「うーん、どれもよくわからないね。ほとんど手に納まる程度のものならNightが作れちゃうでしょ?」
「無論だ」
「チートスキルだよね。じゃあせっかくだから、何か大きいものでも頼んでみる?」
「大きいものって、そんなのどこに置くの?」
「あっ!」
まだ森の整備が終わっていない。
このギルドホームの反対側には未だに立ち入ったことのない森が広まり、スペースなどは確保できていない。少しは取ることができるが、景観を損ねるから嫌だった。
3人は考える。カタログを延々と見ていても何も決まらない。
幸い3か月期間が設けられていたので、アキラの判断で一度見なかったことにした。
それまでには森の開拓も必要だと、心に決めたアキラたちなのだ。
とはいえ、ゲームの中だからそこまで暑くないだろうと高をくくっていると大間違い。
実際は何倍も暑いんだ。
「ううっ、暑い……」
「暑い暑い言うな。余計に暑く感じるだろ」
Nightは涼しい顔で文庫本を読みながら返した。
アキラとフェルノは床に寝そべりだらしない格好で凄いしている。
それもそのはず、ギルドホームの中は蒸し暑くはないが、かなり温度が高いんだ。
「ねえフェルノ。この家の中って今何℃なのかな?」
「わかんない。もしかしたら、外より暑いかもしれないよー」
「それはやだなー。Night、今ッて気温は何℃なの?」
アキラは尋ねる。
するとNightは文庫本から目を離し、自分が据わっているソファー席から一番近いところの壁にかけられた温度計を見た。
如何やらこの部屋の中は30℃越えらしい。
「33℃だ。その方が気温は高い」
「33℃! それってもう外だよ」
「そうだーそうだー。エアコンを入れろー」
「そんなものがこの世界にあると思うな」
Nightはすぐさま一蹴した。
フェルノは仰向けになり大の字になる。目の奥の闘志が余計にフェルノ体を熱く煮えたぎらせていた。
その様子を横になって同じく寝転ぶアキラは死んだ目で認識した。
「フェルノが珍しいね。砂漠でも暑いの大丈夫だったのに」
「そういう暑さとは少し違うんだよー。ほら、まだエアコンのつかない教室で受ける蒸し暑い初夏の授業よりもグラウンドを走って風を全身で感じているときの方が気持ちいいでしょ? そういうもんなんだよー」
「確かにわかるかも」
「でしょー。だから流石にこの暑さはね。でも変だよね、Nightは全然汗かいてないよねー」
フェルノはNightに尋ねる。
すると文庫本を閉じてしまい、インベントリから何かを取り出す仕草をしながら軽く答える。
「私だって暑いのは暑いぞ。だが元々体温が低い方だからな。そこまで暑さを感じないんだ」
「それでこの間は倒れちゃったけどね」
「……あれは、砂漠の暑さが悪い」
Nightはムッとした顔になる。不甲斐ないところを見られてしまってきっと恥ずかしいのだろう。
アキラはNightの唇を尖らせた表情を見てすぐに勘づくと、今度はインベントリの操作が気になる。何を取り出そうとしているのかな?
「Nigh、何探しているの?」
「この間ランクアップしたんだ。ギルドから届けられたものがあったんだが……これだ」
ランクアップ。ベルが仲間に加わってくれたおかげで思った以上に早くDランクになることができた。
そのランクアップ報酬としてギルドから何か届け物があったのは知っていたけれど、一体何だろうか?
アキラは起き上がりテーブルの上に叩きつけられたものを見てみると雑誌のようだった。
「これって何? 雑誌」
「カタログじゃないのー?」
「そうだな。これはカタログだ。ほら、何千円分支払うことで描かれている商品が貰えるようになるプレゼントカタログみたいなものだ」
淡々と説明されているけど、わかりやすかった。
今日は雷斬とベルは来ていないけど、試しに中身を読んでみることにした。
たくさんの商品がリストアップされている。
「うわぁ、なにこれ?」
「変なのがたくさん載ってるね。ほら、これとか誰が選ぶのかな?」
「弓道用の的みたいだね。ベルなら欲しいって言うかも」
弓道の試合で使われるような立派な的のセットだった。
とは言え必要かどうかわからない。いざとなればNightがスキルで作ってくれる。
「これは如何だ、電光丸」
「日本刀? 刃渡りが88センチの細身の刀だね」
「鍔の部分が雷マークになってる。使い難そうだねー」
「インテリア用らしいな。そもそも武器の需要の少ないこの世界で、選ぶ奴はよっぽどのマニアだろ」
Nightは敵を作りそうなことを言いだした。
とは言え、雷斬だったらこう言い返すはずだ。「刀は自分に適したものを使うべきです。しかし一番重要なことは、刀の切れ味も寿命も担うのは、使い手の腕次第ですから」とか言い出すに決まっている。ちょっとカッコいい。
本人たちがいないところで好きかって言い合った。
「うーん、どれもよくわからないね。ほとんど手に納まる程度のものならNightが作れちゃうでしょ?」
「無論だ」
「チートスキルだよね。じゃあせっかくだから、何か大きいものでも頼んでみる?」
「大きいものって、そんなのどこに置くの?」
「あっ!」
まだ森の整備が終わっていない。
このギルドホームの反対側には未だに立ち入ったことのない森が広まり、スペースなどは確保できていない。少しは取ることができるが、景観を損ねるから嫌だった。
3人は考える。カタログを延々と見ていても何も決まらない。
幸い3か月期間が設けられていたので、アキラの判断で一度見なかったことにした。
それまでには森の開拓も必要だと、心に決めたアキラたちなのだ。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる