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◇94 夏休み前の試練
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カタカタカタカタ——
暗くした部屋の中に無機質な音が響く。
これは電子音だ。パソコンのキーボードを叩く音にとても似ている。
いや、まさにそうなのだ。
「静だ……」
蒼伊は部屋に籠っていた。
3台のディスプレイに視線を配りながら、キーボードを無にして叩く。
完全にその姿はロボットで、ブルーライトカット仕様の眼鏡をかけていた。もちろん、目なんて悪くないから度は入っていない。
代わりにコンタクトレンズは外していた。
「もうすぐ夏休みだな。とは言っても、うちの高校は進学組の奴らでむせ返る。行く気が失せるな」
夏休み。それはほとんどの学生からしてみれば、長い長い休日を堪能し、謳歌する場所。
普段はいけないような場所、例えば海や山に旅行しに行き普段の羽目を外す。
それだけじゃない。
夏はイベントが多い。企業が広めた商売目的のものが多いが、昔から続いている文化もある。とは言え、洋風のこの屋敷の中では風流などありもしない。
「そう言えば、明輝たちが言っていたな。海に行きたいとかなんとか……」
思い出した蒼伊は別に何をしようとは思わない。
ただ思わないだけだ。
そんな中、ドライブにメッセージが届いた。
「明輝からか。……今すぐログインして?」
蒼伊は首を捻る。
今日は何かイベントがあるわけでもない。
島の開拓もまだ先の話だ。となると何かあったのか?
「仕方ない、行くか」
蒼伊はログインしてみることにした。
すでに課題などは終えている。テストも十分とれるだろう。
こう見えて蒼伊は友達想いのいい子だ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ログインしたNightはギルドホームの中にいた。
そこには既にアキラとフェルノがスタンバイしている。
何があったのだろうかと思い顔を出すが、するとフェルノが泣きついた。
「Night、助けてー!」
「おい、なんだ離れろ」
Nightはいつものツンケンした態度で接した。
珍しいことだ。フェルノが泣きべそをかいている。
むしろアキラの方が冷静だった。
「アキラ、これはどうなっているんだ!」
「フェルノがこの前の小テストで散々だったから、今度の1学期末テストで赤点取るかもーって」
「……よくわからない話だ」
「勉強教えて! せめて山だけ張って、死ぬ気で覚えるからー」
ウザかった。
フェルノの種族スキルで爪が服の中に食い込む。むしろ痛い上に逃げ出せなかった。
よっぽど不安なのか、いつものフェルノらしくもない。
死ぬ気のところに熱気が注がれている。
「わかった。わかったから、少し離れろ。服が……あー」
Nightの着ていた黒のワンピースは汚く汚れた。
洗えば着られるだろうが仕方ない。
インベントリから何着か取り出し、適当に着ることにした。
「Night、イメチェン?」
「そういうつもりはないが……なんだ、似合っているのか?」
「うん、そっちの方が動きやすそう」
相変わらずファッションとは縁遠いメンバーだった。
Nightのマントはいつも通りとして、白のブラウスシャツにネクタイ、黒のショートパンツにニーソックス、足下は茶色のショートブーツ。ごちゃごちゃだ。
「それで何の教科が駄目なんだ。現文か、それとも社会系か? 歴史ならまだ邪馬台国を抜けて平城には行ったぐらいか?」
「数学……」
「はぁ? 数学、暗記できるのは公式だけだろ」
「だから困ってるんだよー!」
Nightの予想を超えてきた。
まさか暗記するとか言っていたぐらいには、暗記を前提としていると思えば柔軟な思考力が試される数学ときたか。進学校の自分とは習っている範囲が被っていないだろう。
そこでアキラから教科書を借りた。
電子化されていて読み進めると印がしてある。
かなり序盤の段階。関数系は公式を覚えた後が難しいからな。
Nightは瞬時に把握して、フェルノに伝える。
「関数の公式を全部覚えろ。その後は、私が問題を予測してやる」
ありえないことを吹っ掛けた。
暗くした部屋の中に無機質な音が響く。
これは電子音だ。パソコンのキーボードを叩く音にとても似ている。
いや、まさにそうなのだ。
「静だ……」
蒼伊は部屋に籠っていた。
3台のディスプレイに視線を配りながら、キーボードを無にして叩く。
完全にその姿はロボットで、ブルーライトカット仕様の眼鏡をかけていた。もちろん、目なんて悪くないから度は入っていない。
代わりにコンタクトレンズは外していた。
「もうすぐ夏休みだな。とは言っても、うちの高校は進学組の奴らでむせ返る。行く気が失せるな」
夏休み。それはほとんどの学生からしてみれば、長い長い休日を堪能し、謳歌する場所。
普段はいけないような場所、例えば海や山に旅行しに行き普段の羽目を外す。
それだけじゃない。
夏はイベントが多い。企業が広めた商売目的のものが多いが、昔から続いている文化もある。とは言え、洋風のこの屋敷の中では風流などありもしない。
「そう言えば、明輝たちが言っていたな。海に行きたいとかなんとか……」
思い出した蒼伊は別に何をしようとは思わない。
ただ思わないだけだ。
そんな中、ドライブにメッセージが届いた。
「明輝からか。……今すぐログインして?」
蒼伊は首を捻る。
今日は何かイベントがあるわけでもない。
島の開拓もまだ先の話だ。となると何かあったのか?
「仕方ない、行くか」
蒼伊はログインしてみることにした。
すでに課題などは終えている。テストも十分とれるだろう。
こう見えて蒼伊は友達想いのいい子だ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ログインしたNightはギルドホームの中にいた。
そこには既にアキラとフェルノがスタンバイしている。
何があったのだろうかと思い顔を出すが、するとフェルノが泣きついた。
「Night、助けてー!」
「おい、なんだ離れろ」
Nightはいつものツンケンした態度で接した。
珍しいことだ。フェルノが泣きべそをかいている。
むしろアキラの方が冷静だった。
「アキラ、これはどうなっているんだ!」
「フェルノがこの前の小テストで散々だったから、今度の1学期末テストで赤点取るかもーって」
「……よくわからない話だ」
「勉強教えて! せめて山だけ張って、死ぬ気で覚えるからー」
ウザかった。
フェルノの種族スキルで爪が服の中に食い込む。むしろ痛い上に逃げ出せなかった。
よっぽど不安なのか、いつものフェルノらしくもない。
死ぬ気のところに熱気が注がれている。
「わかった。わかったから、少し離れろ。服が……あー」
Nightの着ていた黒のワンピースは汚く汚れた。
洗えば着られるだろうが仕方ない。
インベントリから何着か取り出し、適当に着ることにした。
「Night、イメチェン?」
「そういうつもりはないが……なんだ、似合っているのか?」
「うん、そっちの方が動きやすそう」
相変わらずファッションとは縁遠いメンバーだった。
Nightのマントはいつも通りとして、白のブラウスシャツにネクタイ、黒のショートパンツにニーソックス、足下は茶色のショートブーツ。ごちゃごちゃだ。
「それで何の教科が駄目なんだ。現文か、それとも社会系か? 歴史ならまだ邪馬台国を抜けて平城には行ったぐらいか?」
「数学……」
「はぁ? 数学、暗記できるのは公式だけだろ」
「だから困ってるんだよー!」
Nightの予想を超えてきた。
まさか暗記するとか言っていたぐらいには、暗記を前提としていると思えば柔軟な思考力が試される数学ときたか。進学校の自分とは習っている範囲が被っていないだろう。
そこでアキラから教科書を借りた。
電子化されていて読み進めると印がしてある。
かなり序盤の段階。関数系は公式を覚えた後が難しいからな。
Nightは瞬時に把握して、フェルノに伝える。
「関数の公式を全部覚えろ。その後は、私が問題を予測してやる」
ありえないことを吹っ掛けた。
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