VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇118 増殖するメタル

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  アキラたち継ぎ接ぎの絆パッチワーク・フレンズの面々。
 今回のダンジョンは、岩場ばかりが続く自然だった。
 ちなみに名前はない。

「名前のないダンジョンって可哀そうだよね」
「そもそもダンジョンの定義をこの世界で定義するのは難しいぞ」
「じゃあ何がダンジョンなの?」
「……自分の心の中にあるものがダンジョンだ」
「オッケー、わかったー」

 フェルノが話を流して助けた。
 これ以上は自分に分がない。Nightはほっと胸を撫で下ろしていた。

「それでメル系のモンスターがいるのよね?」
「そうみたいだけど……ベルは戦えるの?」
「もちろん。私が弓しかないと思ったら大間違い」
「テンション高い」

 自分のキャラを忘れている。
 ツンデレでもなくお嬢様系でもなく、ただの雰囲気に合わせる人が抜けていた。
 弓意外に何かある。とても楽しみだ。

「って私は弓しかないと思ったの!」
「う、うん。ごめんね」
「そんなー。って酷いわね」

 ベルはすぐに反発した。
 しかし幼馴染で親友の雷斬がポンポンと肩を叩いた。

「大丈夫です。ベルは弓よりもそっちの方が得意ですもんね」
「それは言わないで欲しいんだけどね」

 そんな漫才を繰り広げ、談議に盛り上がっていると急にフェルノが叫んだ。

「ちょっと止まって!」
「なに、フェルノ!」

 目を凝らして遠くを覗き込む。
 すると何か動いているのが見えた。鋼のボディ。でっかいアリだ。

「あれはメタルアントだな。探していたメタル系だ」
「硬そうだね」
「当然硬いぞ。まともに攻撃が効くと思うな」
「確かに矢は効きそうにないわね」

 ベルも頭を掻いた。
 しかし策はあるらしく、にやりと微笑んでいる。
 アキラたち一行はメタルを狩るために近づいた。
 大量のメタル種がひしめき合っている。気持ち悪い量だった。

「何あれ! どうしてこんなに増えてるの」
「知らないが、バグではなさそうだ。だが流石にこの量は……」
「とりあえずここなら炎が使えるんでしょ? だったらやることは1つだよ」

 フェルノは炎を点火させた。
 轟々と燃え盛る炎とともに、拳が竜の手に変わる。鋭い爪まで燃え盛る。

「メタルなら高温で溶けるでしょ!」
「確かにそうだな。よし、行くぞ!」
「オッケー。それじゃあとっとと……」
「ちょっと待って、フェルノ」

 アキラは呼び止めた。
 何だろうと思い、振り返るとアキラは【灰爪】でオオカミの爪になり、ナルは弓を取り出すと何やら刃のようなものを2枚展開している。弓と言うより、薙刀に近い。

「どうしたの2人とも?」
「炎を少し貸してよ。私たちの武器じゃ対抗できならないから」

 フェルノはすぐに納得した。
 自分のアイデンティティである炎を、仲間のために簡単に貸すと、アキラとベルも炎を手にする。
 ただフェルノと違い、普通に熱いので汗がだらだらと流れる。

「これ熱いね。速くしないと、こっちがぶっ倒れちゃうかも」
「そうだね。私の炎はめちゃめちゃ熱いからねー」

 この炎を纏った拳で叩きつけられるモンスターの身になってみたら、かなり怖いことをしている。
 だけどフェルノは全く気にせず、先に飛び出した。
 開幕一発でメタルアントをノックアウトする。

「凄い、こいつら簡単に倒せるよ!」
「そうみたいね。そりゃ!」

 ベルは弓をまるで薙刀のように使っていた。
 もしかして最初からその仕様だったのか、アキラは見ていて不思議に思う。
 しかし考えている暇もない。
 メタルアントは突然の急襲に驚いて攻撃を開始するが、アキラたちはメタルアントを倒して回る。

「注意を怠るな。それにしても数が多いな」
「そうですね。これは長期戦を見越した方が賢明かもしれません」
「それもそうだが……聞こえてるな、3人とも」
「聞こえてるけど、2人が……」

 気が付くと半分近いメタルアントが倒されていた。
 フェルノの超火力をベルの薙刀による斬撃が的確に一撃で仕留めていく。
 その動きに目を奪われていると、遠くの方からギギギと鈍い音が聞こえていた。
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