208 / 617
◇208 迷ってしまった……
しおりを挟む
椿の森に入ってリアルに1時間近くが経過した。
アキラ、Night、フェルノの3人は立ち止まっていた。
「ねえ、Night」
「ちょっと待て。ここがこうで、この部分はさっき書いたな。ということは、ここか?」
「ちょっとヤバいよね」
「いいや、何もヤバくはない。おかしい、この部分は地図内に書いたはず。なのにどうして……」
「もういいよ。迷ったんでしょ」
アキラは地図を見ながら考えているNightにそう言った。
しかしNightはまだ諦めきれないらしく、地図に嚙り付く。
だけど薄々Nightも感じてはいた。自分たちが迷っていることに。
それを認められないのもNightなりに腑に落ちないからだ。
「いや、待て。やはりおかしい」
「おかしいって何が? もしかしてその地図がおかしいの? それとも私たちの頭がおかしいの?」
「そうは言っていない。だが明らかにおかしな点がある。私の地図は正確で、脳内の記憶を辿っても、こんなところに着いた覚えはない」
「こんなところって、いまがそんなところでしょ? 周りには木々が四方八方を囲んでいるしさー、ちょっと霧まで出てきてるよ?」
「そうだよ。木に付けてた傷が無くなっているけど」
「そこが問題だ。お前たち、ここに来るまでに自分たちの矢ってことを全部覚えているか?」
「それは……大体は」
アキラは断言できなかった。
椿の森に入って数分までは覚えている。フェルノが透明トカゲを倒したぐらいだ。
安堵して落ち着いたと思えば、少しだけ開けた木々の間を見つけたので、アキラたちは真っ直ぐ進んだ。
それからしばらく真っ直ぐな道が続いて、曲がり角のようなものはなく、気が付けば道に迷っていた。
「あれー? 私たち、何で迷っているんだろー」
「曲がった覚えないよね? なのに……」
振り返れば道がない。
こんなこと、普通起こるだろうか?
確かに正確な地図は無いから自分たちで何となく付けてきた。
とは言えマッピング担当はあのNightだ。間違うはずがない。
確実にとは言えないが、ほぼほぼありえないので、こうなった原因を疑うには2つしか候補が無くなった。
「1つは私たちの記憶が間違っている。もう1つはこの森自体は一種の生き物のようになっていて、私たちは罠にまんまとはまってしまった」
Nightはピースサインを作り、今考えられる原因を2つまで絞る。
アキラとフェルノもその考えに賛同し、とりあえず記憶が間違っているかどうかをお互いに会話しながら思い出した。
「フェルノ。私たちが付けた傷って、全部で36個だよね?」
「そうだよー。傷を付けるたびに、この板にも傷を付けていたから間違いないよー」
フェルノが取り出した小さな板にはナイフで付けられた傷が正の字のように入っている。
つまり2人の記憶に齟齬はない。
「Nightの方はどう?」
「ここに入る前、椿の花が1輪咲いているのを見た。それが関係しているのかもしれないな」
「椿の花? そう言えば、途中見かけたね」
「うんうん。綺麗だったよねー」
椿の森だけあって、流石に椿は咲いているんだなと思いアキラたちはスルーしていた。
しかし今覚えばおかしな話だ。
たった1輪だけ。しかも真っ直ぐな椿の木が立ち並ぶ森の中で、1輪しか咲いていない。
裏があるとしか思えない。
「もしかしてあの椿を見たせいで」
「そうだよそう。あの椿が原因で、うわぁ!」
急に霧が濃くなった。
アキラたちは分断される前に一塊になると、周囲を警戒して見回した。
「どうやら私たちは正解に辿り着いたらしいな」
「そうだね。つまりこの霧は私たちを迷わせる罠ってことだ!」
「冴えているじゃないか。ならどうする?」
「決まっているよね。霧は水蒸気だもん。全部飛ばしちゃえばいいんだよ」
アキラはフェルノにウィンクした。
フェルノも自分の出番だと気が付き、炎を燃やした。
霧の水蒸気を全部蒸発させてしまおうと頑張る。
「よーし、全部消えちゃえ!」
高温に当てられ、霧がどんどん水蒸気になって上に上がっていく。
すると木の枝がフェルノに襲い掛かるが、アキラがガードした。
「正体現したね」
アキラは枝を掴むとそのまま引っ張った。だけど枝が折れることもなく、次の攻撃が始まった。
枝ではなく、もっと細かい種たちが超高速で何処からともなく放たれる。
しかしフェルノの炎の壁、それからNightの正確無比な投げナイフには敵わず攻撃は止んでしまった。
霧がだんだんと無くなって薄くなっていく。
すると道が幾つも広がって、またしても迷わせようとしていた。
やっぱりこの森は意思を持っている。つまり間違えればまた同じことの繰り返しだ。
「どうする。どの道にする」
「知らん。既に向こうが張ったブラフの方が多いんだ。確率論も計算もなにも通用しない」
「それじゃあもう勘に頼る? 勘に頼るんだねー」
「心配だ」
Nightは顔を背けた。
アキラもプチパニックになって冷静な意識に切り替えようと脳を回転させると、不意に声が聞こえたような気がした。
「こっちです」
女性の声だった。アキラたちを呼んでいるようで、敵意は感じない。
ちょうどNightの目の前の道の左から聞こえる。
アキラは何故かわからないけれど、いつの間にか走り出していた。
「2人とも、あの道だよ」
「「ちょっと、アキラ!」」
2人はアキラに腕を掴まれて、抗う間もなく連れられた。
アキラ、Night、フェルノの3人は立ち止まっていた。
「ねえ、Night」
「ちょっと待て。ここがこうで、この部分はさっき書いたな。ということは、ここか?」
「ちょっとヤバいよね」
「いいや、何もヤバくはない。おかしい、この部分は地図内に書いたはず。なのにどうして……」
「もういいよ。迷ったんでしょ」
アキラは地図を見ながら考えているNightにそう言った。
しかしNightはまだ諦めきれないらしく、地図に嚙り付く。
だけど薄々Nightも感じてはいた。自分たちが迷っていることに。
それを認められないのもNightなりに腑に落ちないからだ。
「いや、待て。やはりおかしい」
「おかしいって何が? もしかしてその地図がおかしいの? それとも私たちの頭がおかしいの?」
「そうは言っていない。だが明らかにおかしな点がある。私の地図は正確で、脳内の記憶を辿っても、こんなところに着いた覚えはない」
「こんなところって、いまがそんなところでしょ? 周りには木々が四方八方を囲んでいるしさー、ちょっと霧まで出てきてるよ?」
「そうだよ。木に付けてた傷が無くなっているけど」
「そこが問題だ。お前たち、ここに来るまでに自分たちの矢ってことを全部覚えているか?」
「それは……大体は」
アキラは断言できなかった。
椿の森に入って数分までは覚えている。フェルノが透明トカゲを倒したぐらいだ。
安堵して落ち着いたと思えば、少しだけ開けた木々の間を見つけたので、アキラたちは真っ直ぐ進んだ。
それからしばらく真っ直ぐな道が続いて、曲がり角のようなものはなく、気が付けば道に迷っていた。
「あれー? 私たち、何で迷っているんだろー」
「曲がった覚えないよね? なのに……」
振り返れば道がない。
こんなこと、普通起こるだろうか?
確かに正確な地図は無いから自分たちで何となく付けてきた。
とは言えマッピング担当はあのNightだ。間違うはずがない。
確実にとは言えないが、ほぼほぼありえないので、こうなった原因を疑うには2つしか候補が無くなった。
「1つは私たちの記憶が間違っている。もう1つはこの森自体は一種の生き物のようになっていて、私たちは罠にまんまとはまってしまった」
Nightはピースサインを作り、今考えられる原因を2つまで絞る。
アキラとフェルノもその考えに賛同し、とりあえず記憶が間違っているかどうかをお互いに会話しながら思い出した。
「フェルノ。私たちが付けた傷って、全部で36個だよね?」
「そうだよー。傷を付けるたびに、この板にも傷を付けていたから間違いないよー」
フェルノが取り出した小さな板にはナイフで付けられた傷が正の字のように入っている。
つまり2人の記憶に齟齬はない。
「Nightの方はどう?」
「ここに入る前、椿の花が1輪咲いているのを見た。それが関係しているのかもしれないな」
「椿の花? そう言えば、途中見かけたね」
「うんうん。綺麗だったよねー」
椿の森だけあって、流石に椿は咲いているんだなと思いアキラたちはスルーしていた。
しかし今覚えばおかしな話だ。
たった1輪だけ。しかも真っ直ぐな椿の木が立ち並ぶ森の中で、1輪しか咲いていない。
裏があるとしか思えない。
「もしかしてあの椿を見たせいで」
「そうだよそう。あの椿が原因で、うわぁ!」
急に霧が濃くなった。
アキラたちは分断される前に一塊になると、周囲を警戒して見回した。
「どうやら私たちは正解に辿り着いたらしいな」
「そうだね。つまりこの霧は私たちを迷わせる罠ってことだ!」
「冴えているじゃないか。ならどうする?」
「決まっているよね。霧は水蒸気だもん。全部飛ばしちゃえばいいんだよ」
アキラはフェルノにウィンクした。
フェルノも自分の出番だと気が付き、炎を燃やした。
霧の水蒸気を全部蒸発させてしまおうと頑張る。
「よーし、全部消えちゃえ!」
高温に当てられ、霧がどんどん水蒸気になって上に上がっていく。
すると木の枝がフェルノに襲い掛かるが、アキラがガードした。
「正体現したね」
アキラは枝を掴むとそのまま引っ張った。だけど枝が折れることもなく、次の攻撃が始まった。
枝ではなく、もっと細かい種たちが超高速で何処からともなく放たれる。
しかしフェルノの炎の壁、それからNightの正確無比な投げナイフには敵わず攻撃は止んでしまった。
霧がだんだんと無くなって薄くなっていく。
すると道が幾つも広がって、またしても迷わせようとしていた。
やっぱりこの森は意思を持っている。つまり間違えればまた同じことの繰り返しだ。
「どうする。どの道にする」
「知らん。既に向こうが張ったブラフの方が多いんだ。確率論も計算もなにも通用しない」
「それじゃあもう勘に頼る? 勘に頼るんだねー」
「心配だ」
Nightは顔を背けた。
アキラもプチパニックになって冷静な意識に切り替えようと脳を回転させると、不意に声が聞こえたような気がした。
「こっちです」
女性の声だった。アキラたちを呼んでいるようで、敵意は感じない。
ちょうどNightの目の前の道の左から聞こえる。
アキラは何故かわからないけれど、いつの間にか走り出していた。
「2人とも、あの道だよ」
「「ちょっと、アキラ!」」
2人はアキラに腕を掴まれて、抗う間もなく連れられた。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位>
<カクヨム週間総合ランキング最高3位>
<小説家になろうVRゲーム日間・週間1位>
現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。
目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。
モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。
ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。
テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。
そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が――
「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!?
癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中!
本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ!
▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。
▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕!
カクヨムで先行配信してます!
【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます
鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。
このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。
それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。
その称号効果はスライム種族特効効果。
そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・
このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。
主人公は経験値でモンスターを殴ります。
──────
自筆です。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!
ゆるり
ファンタジー
【書籍化!】第17回ファンタジー小説大賞『癒し系ほっこり賞』受賞作です。
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です)
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様でも公開しております。
ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー
びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。
理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。
今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。
ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』
計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る!
この物語はフィクションです。
※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる