VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇238 座布団1

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 アキラたちはモミジヤから南南西にある大きな山にやって来た。
 たくさんの杉が生え、完全に鬱蒼とした森になっている。

 山の斜面をゆっくり登っていると、時折小型のモンスターの姿を目撃した。
 けれど特に変わった光景ではなく、それほど変な物も落ちている様子がない。

「……普通の森だね」
「うん。暗いけど、椿の森とかに比べたらそんなに暗くもないねー」
「そうだな。だが位置関係を把握してないけれど、容易に迷ってしまうぞ。気を付けろよ、私まで迷うのはごめんだからな」

 Nightはアキラたちに厳しく言った。
 もちろん厳しく言うのは叱咤激励のためで、だれ1人迷って貰っては困るからだ。

 そんな中、先頭でいつものように鉈で草木を切り分けるフェルノは思った。
 どんなありえない物が落ちているのか。
 答えが見つかっていないけれど、想像力を膨らまして遊んでみた。

「ねえねえ、どんな物が落ちていると思う?」
「ん? そうだな。まあ山の中だ。それなりに風景に溶け込むものの方が違和感はないだろ。確かにありえない物という定義があったが、今の時期という決まりはない。例えばふきのとうやたらの芽辺りがベタじゃないか?」
「それはベタなのかな? うーん、私は柿とかブドウとかの方が嬉しいかな」
「こんな山の中にあると思うのか?」
「意外なものの方がありえないでしょ?」

 Nightの指摘を真っ向から打ち返すアキラだった。
 その様子を見ていたフェルノも少し考えてみる。

 絶対にありえない物。
 例えばこんな視点も有りじゃないかと聞いてみた。

「例えばテニスのラケットとか?」
「「はい?」」
「おっと、何かな……その、微妙だけどそこまで悪くもない反応はー。私もちょっとは凹んじゃうよー」

 フェルノがアキラとNightが普段見せない表情を見せたので煽ってみた。
 するとNightから真面目な意見が入る。

「その可能性もなくはないな」
「うんうん。ありえない物ってことは、山の中にないものだもんね。私たち、ちょっと固かったかも」

 以外にも好印象を貰えたようで、フェルノは驚いていた。
 けれどいつもと発想が異なる2人に違和感を覚えたのでついつい口にした。

「もしかして私、誰かに化かされているのかな?」
「いや、それは無いからな」
「そうだよ。ほら、いー!」

 アキラはフェルノの頬をつねる。
 痛い。フェルノは如何して自分がつねられるのかわからなかったが、これは夢ではないようだ。

 それがわかると、すぐに鉈を使って草木をかき分け始める。
 止まっていた手が動き出すと、道を阻害して進め無くしていた雑草が次々に薙ぎ払われていく。
 刈った草木はフェルノが足で押し潰し、緑の道を作り出した。

「そろそろ普通の道に出る頃かな?」
「獣道ばっかり進んでたもんね」

 本来はもう少し整備された道がある。
 けれど山に入った位置が悪かったのか、はたまたNightの「普通の道端に変な物が落ちていたらもっとうわさも広がっているはずだ」とか言う、常識から少し外れた考えに飲まれてわざわざ脇道に逸れてしまったせいか。
 どちらにせよ、ここ30分でかなり歩き進めた。
 ようやく広い道に出る。そう思ったのも束の間。

「おっ、この先草木がないよ!」
「やっと整備された道に出たか」
「それじゃあみんな、せーのっ?」

 アキラたちは馳せる気持ちを表に出して、整備されたであろう道に踏み出した。
 けれどそこは森の中、中央にぽっかりと空いた、草木が生えていないだけの場所だった。
 周囲を背の高い杉の木が覆い隠していて、道のようなものは特にない。
 
「えーっと、これはアレだよね。完全に道に迷った?」
「そうだな。今から戻って本来の道を進むのも有りだ」
「うん、そうしようー。でもさ、1つだけ忘れちゃいけないのあるよね?」
「ああ、コレのことだな」

 昭たちの視線が固まっていた。
 確かにありえない物が落ちてるが、そのチョイスが微妙過ぎて笑うにも笑えない。
 何処から突っ込んでいいのかわからないが、とりあえずちゃんと落ちていた。
 噂通りで間違いない。

「確かに落ちてたね」
「そうだな。だがどうして座布団なんだ?」
「しかも結構濃い藍色の座布団だよね。1枚だけは逆にメッセージ性を感じないー?」

 青をより濃くした藍色の座布団が1枚、そこに鎮座していた。
 ツッコミ待ちをしているのだろうか?
 アキラたちは扱いに困り、茫然と見つめる他ない。

 けれどこのまま放置する勇気もない。
 触らぬ神に祟りなしと言う言葉があるが、流石にこれを見過ごすのは運営にも悪いと思った。
 アキラの感情論とNightの警戒から来る疑心に苛まれつつ、フェルノは恐る恐る人差し指を振れた。

「えいっ!」
「「何で触っているの!」」

 アキラとNightは怒鳴りつけた。
 まだ何かともわからないそれを平気で触るフェルノの勇気は凄いが、あまりに不用心すぎたからだ。

 けれどフェルノは何ともない。
 体に異常があるわけでも幻覚を見ているわけでもない。
 一緒にいるアキラたちにも変化はなく、謎が謎を呼ぶだけだった。

「えーっと、これは如何したら?」
「まさかとは思うが、バグか何かなのか?」

 一体何が起きたのか、それは誰にもわからない。
 とりあえず即死系ではないことだけはわかり、安堵しているのだった。
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