VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

文字の大きさ
304 / 617

◇302 クリスマスの結果を経て

しおりを挟む
「ふぅふぅ……いつ来ても美味しいですね」

 ズルズルズルズル!

 麺を啜る音がお店の中に響いた。
 これだけ音を立てても許されるのは、店の中にほとんど人が居ない時間帯だったからだ。

「あの、社長」
「社長じゃないです。エルエスタです」
「エルエスタ社長」
「エルで構いませんよ、耶摩さん」

 エルエスタはズルズルとラーメンを食べていた。
 それだけ落ち着いている証拠で、普段なら音何てほとんど立てなかった。

 一方、対面に座る耶摩は少し緊張していた。
 手元のラーメンの湯気が少し冷め始めていた。
 割り箸はほとんど濡れていなくて、それもそのはずまだ数本しか麺を掬っていなかった。

「こんな時間にお昼をいただいても良いのでしょうか?」
「構いませんよ。私が許可します。それにどんな時でもお腹は膨らませておかなければ、肝心な時に最高のパフォーマンスを発揮できませんよ」
「そ、それはそうですけど……」

 副社長の耶摩やまは社長には頭が上がらなかった。
 それに言っていることは理に適っていた。
 だから否定できなかったし、お昼をまだ食べていなかったから、誰が反論しても反論返しできた。

「それにお店の人にも……」
「エルエスタさんにはいつも世話になってっからな。全然構わねえぜ!」
「大将、いつもありがとうございます」

 強面だけど優しいお店の大将に言われて耶摩は安堵した。
 そんな中、エルエスタは腕に付けたドライブから画像を引っ張り出した。

「それより今回の結果ですが……上々、いえそれ以上ですね」
「予期していなかった事態が起きてしまいましたけど、無事に収拾がついてくれて良かったです。しかもまたこのプレイヤーたち……逸材ですね」
「可能性を常に感じさせてくれますよ。私は彼女たちに期待していますから」
「……贔屓ですか? あまりそう言うのは」
「確かに贔屓はしているかもしれませんね。ですが、あの世界における困難は私たちの想定を超えてきます。時には協力しなければならないこともあるんですよ。利用できるものは利用する。そうしなければ、人類の革新はまた止まってしまいますからね」

 エルエスタの言うことは常に先を見ていた。
 それが良いことなのか悪いことなのかは分からなかった。
 だけど危険を多少は負ってでも、成すべきことを成す信念があった。
 故に人を惹きつける、常に最善を尽くし、常に人の可能性と進化を期待してた。

「そのための地盤も盤石ですからね。……大変ですけど」
「ですが誰にも……いえ、そう言っているのは私だけかもしれませんね。でも私は他者に悪意を振りまいてはいないと自負したいのですが」
「当たり前ですよ。エルエスタさんは常に身を粉にしているんです。否定する人は私が許しません」
「ありがとうございます。その期待に応えられれば幸いなのですが」

 エルエスタは薄っすらと笑みを浮かべた。
 その表情に耶摩は嬉しくなった。

「それはそうと、今回の困難で何が分かったんですか?」
「人の脳波や感情に影響を及ぼす範囲ですよ。あの世界はリアリティが高いので、それだけ影響も強く、色濃く出るみたいです」

 分かり切っていることだった。
 だけど耶摩は不服そうな顔色をみせることはなく、「そうですね。それだけ人の持つ可能性や確信を極まらせることができると思います」と答えた。

「それはそうですね。ですがまさかここまで世界が共振するとは……」
「エルさん?」
「私たちが管理、監視できる範囲を超えることがあるかもしれませんよ。あの世界は常に進化を続けていますから」

 エルエスタはそう答えると、ラーメンを一口啜った。
 耶摩にはエルエスタの考えていることがよく分かっていなかった。
 何処まで視野に入れているのか、想像することしか叶わなかった。

「それよりも耶摩さん」
「は、はい!?」
「ラーメン、早く食べないと伸びてしまいますよ」

 エルエスタは急に話を切り替えた。
 耶摩は自分の器を見てみると、ラーメンがスープをかなりふやけていました。

「ああっ!?」
「ゆっくり食べている余裕はありませんね」

 そう言うと、二人はラーメンを食べることに集中した。
 水分が増えてしまい、少し味が落ちかけていた。けれどエルエスタはそんなこと気にせず美味しく頂くと、ポツリと口走った。

「本当に、あの子は面白いですね。たくさんの可能性を私たちに見せてくれますから」

 あまりにも意味深に呟いた。



「は、はくしゅん!」

 明輝が大きな咳をした。
 その様子を見ていた烈火は首を捻った。

「明輝風邪? 急に咳き込んでさー」
「うーん、如何なのかな? 体調は悪くないけど」

 明輝の体調は絶好調だった。
 もちろん風邪を移されるようなところにも行っていなかった。

「ふーん、もしかして誰かが噂してるとかー?」
「あはは、まさか。そんな訳ないよ」

 烈火の冗談を、明輝は一蹴した。
 それ以降、明輝が咳をすることはなく、二人は夕方まで遊んでいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~

RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。 試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。 「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」 枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!

処理中です...