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◇335 水神池
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アキラたちはモミジヤの外へと出た。
一旦掲示板を見てから情報を洗い直し、確かにクロユリの言っていたことは正しかった。
如何やらイベントの期間中は、本来釣り上げることの困難なはずのモンスターを釣り上げるチャンスのようで、アキラたちも気合が入る。
「面白そうだね」
「そうだねー。でもさ、本来は釣り上げにくいってことは、普段でも釣り上げられない訳じゃないってことだよねー?」
「そういうことになりますね。ですが、龍の髭はこのイベント中にしか入手できないということでしょうか?」
「おそらくな」
ということは入手したかったら何としてでも頑張らないといけない。
早速インベントリの中に釣竿が全員分入っていることを確認すると、アキラたちは揃って向かった。
アキラたちはモミジヤの東に足を運んだ。
大体十キロほど行った先に目的の湿地帯があるらしく、その証拠に川が流れていた。
「湿地帯にしては綺麗な川だな」
「そうですね。透明度も高く、小魚たちがたくさん泳いでいます」
雷斬がそう答えると、フェルノは土手に近づいた。
指先を川の水に浸してみると、かなり冷たかった。
この世界の季節も現実とかなり沿っているので、その影響か水嵩や水温も適度に調節されていた。
「水もかなり冷たいよ。コレって煮沸したら飲めるかなー?」
「濾過した上で煮沸すれば大抵の場合は飲める。有害物質が含まれている場合は別だが……」
流石に飲まないとは思っている。けれど透明度が高いから飲んでもきっと美味しいとアキラは思った。
「でもさ、私たちが向かっている池って……」
「この先にある湿地帯の中だ。しかもそこを水源として、多方向に川が流れている」
つまりここに流れている川はそのうちの一つということ。
それなのに水嵩は高く、川の流れも緩やか。
どれだけ大きな水源なのか、池と呼ばれるからにはそこまで大きくないとこの時は全員思っていた。
「うわぁ、たくさんの木が生えてるね」
「当たり前だ。ここは湿地帯だからな」
「当たり前って……そう言えばあの時もそうだったっけ?」
アキラはガスマスクを付けた時のことを思い出した。
あの時に比べたらこの湿地帯はそこまで蒸し暑くもないし、地面もぬかるんではいなかった。
軽快に歩くことができて、アキラたちはとにかく池を目指した。幸いなことに川が流れているので沿って歩けばそのうち見えてくるはずだ。
「とは言え、一つ気がかりがある」
「如何したのNight?」
Nightは周囲を見回していた。高い木の枝々の間やぬかるんでもいない地面へと視線を配る。
何を見ているのかと思ったが、顔色を窺わなくてもアキラに伝わった。
「モンスターいないね」
「そうだな。これだけデカい湿地帯だ。モンスターが私たちを見つけていないはずはない。だが視線も殺気も気配さえ感じないのは些か不気味だ」
「おまけにちょっと冷たいよね。空気が重いとかじゃなくてフワフワしているっていうかー、神聖な感じがヒシヒシ感じるよねー。私の気のせいかもだけどー」
フェルノも湿地帯絶対の空気を不思議に感じ取る。
それはアキラを始め、この手のことに関して関心の強い雷斬も同感な様子だ。
「私も同じことを考えていました。もしかすると、この湿地帯は強力なモンスターが守っているのかもしれませんね」
「如何いうこと?」
「そのままの意味よ。この湿地帯全体を強力で純真な心を持ったモンスターが守っている可能性があるのよ。下手な真似をして怒らせない方が良いわ」
それはそうだ。別にモンスターと戦わないのならそれでいい。
アキラは胸に手を当てた。特に意味はないものの、何故か熱いものを感じてしまった。
「とは言えだ。私たちは……アレは?」
「もしかして池が見えたのかな?」
Nightは何か言おうとしたけれど、途中で口が閉じた。
アキラたちは視線の先を追ってみると、光ってはいなかったけれど、何かが張っているような気がした。
「アレって池だよ! 近づいてみよ」
「そうだな」
アキラたちは少し足早になった。
細い川を傍に控え、水源になっている池へと向かうと、確かに大きな池があった。
しかしアキラたちは固まってしまった。想像以上の規模感だと思った。
「な、何これ!?」
「沼のようにも見えますが、池のようで間違いありませんね……反対側は少し遠いみたいですよ」
アキラたちがいま立っているところから反対側の岸までは距離があった。
予想の斜め上を言っていたので言葉を失ってしまう。
「これが水神池か」
「うん……本当に神様が住んでそうだよね」
これで太陽光が差し込んでいたらもっと凄かった。
ちょっとだけ惜しいなと思いつつ、薄っすらと霧の張った池を目の当たりにし、アキラたちはしばしの間思考がフリーズした。
目の前に広がるのは神様が住んでいるんじゃないかと噂もある巨大な池。
その言葉に神聖さを感じてはいなかったけれど、実際にやって来たら本当に不思議な感じがして何とかしみじみと感じてしまった。
一旦掲示板を見てから情報を洗い直し、確かにクロユリの言っていたことは正しかった。
如何やらイベントの期間中は、本来釣り上げることの困難なはずのモンスターを釣り上げるチャンスのようで、アキラたちも気合が入る。
「面白そうだね」
「そうだねー。でもさ、本来は釣り上げにくいってことは、普段でも釣り上げられない訳じゃないってことだよねー?」
「そういうことになりますね。ですが、龍の髭はこのイベント中にしか入手できないということでしょうか?」
「おそらくな」
ということは入手したかったら何としてでも頑張らないといけない。
早速インベントリの中に釣竿が全員分入っていることを確認すると、アキラたちは揃って向かった。
アキラたちはモミジヤの東に足を運んだ。
大体十キロほど行った先に目的の湿地帯があるらしく、その証拠に川が流れていた。
「湿地帯にしては綺麗な川だな」
「そうですね。透明度も高く、小魚たちがたくさん泳いでいます」
雷斬がそう答えると、フェルノは土手に近づいた。
指先を川の水に浸してみると、かなり冷たかった。
この世界の季節も現実とかなり沿っているので、その影響か水嵩や水温も適度に調節されていた。
「水もかなり冷たいよ。コレって煮沸したら飲めるかなー?」
「濾過した上で煮沸すれば大抵の場合は飲める。有害物質が含まれている場合は別だが……」
流石に飲まないとは思っている。けれど透明度が高いから飲んでもきっと美味しいとアキラは思った。
「でもさ、私たちが向かっている池って……」
「この先にある湿地帯の中だ。しかもそこを水源として、多方向に川が流れている」
つまりここに流れている川はそのうちの一つということ。
それなのに水嵩は高く、川の流れも緩やか。
どれだけ大きな水源なのか、池と呼ばれるからにはそこまで大きくないとこの時は全員思っていた。
「うわぁ、たくさんの木が生えてるね」
「当たり前だ。ここは湿地帯だからな」
「当たり前って……そう言えばあの時もそうだったっけ?」
アキラはガスマスクを付けた時のことを思い出した。
あの時に比べたらこの湿地帯はそこまで蒸し暑くもないし、地面もぬかるんではいなかった。
軽快に歩くことができて、アキラたちはとにかく池を目指した。幸いなことに川が流れているので沿って歩けばそのうち見えてくるはずだ。
「とは言え、一つ気がかりがある」
「如何したのNight?」
Nightは周囲を見回していた。高い木の枝々の間やぬかるんでもいない地面へと視線を配る。
何を見ているのかと思ったが、顔色を窺わなくてもアキラに伝わった。
「モンスターいないね」
「そうだな。これだけデカい湿地帯だ。モンスターが私たちを見つけていないはずはない。だが視線も殺気も気配さえ感じないのは些か不気味だ」
「おまけにちょっと冷たいよね。空気が重いとかじゃなくてフワフワしているっていうかー、神聖な感じがヒシヒシ感じるよねー。私の気のせいかもだけどー」
フェルノも湿地帯絶対の空気を不思議に感じ取る。
それはアキラを始め、この手のことに関して関心の強い雷斬も同感な様子だ。
「私も同じことを考えていました。もしかすると、この湿地帯は強力なモンスターが守っているのかもしれませんね」
「如何いうこと?」
「そのままの意味よ。この湿地帯全体を強力で純真な心を持ったモンスターが守っている可能性があるのよ。下手な真似をして怒らせない方が良いわ」
それはそうだ。別にモンスターと戦わないのならそれでいい。
アキラは胸に手を当てた。特に意味はないものの、何故か熱いものを感じてしまった。
「とは言えだ。私たちは……アレは?」
「もしかして池が見えたのかな?」
Nightは何か言おうとしたけれど、途中で口が閉じた。
アキラたちは視線の先を追ってみると、光ってはいなかったけれど、何かが張っているような気がした。
「アレって池だよ! 近づいてみよ」
「そうだな」
アキラたちは少し足早になった。
細い川を傍に控え、水源になっている池へと向かうと、確かに大きな池があった。
しかしアキラたちは固まってしまった。想像以上の規模感だと思った。
「な、何これ!?」
「沼のようにも見えますが、池のようで間違いありませんね……反対側は少し遠いみたいですよ」
アキラたちがいま立っているところから反対側の岸までは距離があった。
予想の斜め上を言っていたので言葉を失ってしまう。
「これが水神池か」
「うん……本当に神様が住んでそうだよね」
これで太陽光が差し込んでいたらもっと凄かった。
ちょっとだけ惜しいなと思いつつ、薄っすらと霧の張った池を目の当たりにし、アキラたちはしばしの間思考がフリーズした。
目の前に広がるのは神様が住んでいるんじゃないかと噂もある巨大な池。
その言葉に神聖さを感じてはいなかったけれど、実際にやって来たら本当に不思議な感じがして何とかしみじみと感じてしまった。
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