VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇557 明日の作戦

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「そんなことはさておきだな」
「「「さておかないでよ」」」

 Nightはこの最悪の空気をものともしない。
 我が道を行くと、話をすり替える。
 本を仕舞い、代わりにインベントリから取り出したのは、ありとあらゆる地形が記された地図だった。

「明日のイベントのことだが」
「ああ、もう話し始めちゃったよ」

 Nightはアキラたちの気など考えない。
 もはや話をすり替え終えてしまった。
 目の前に用意した特大サイズの地図を指さすと、Nightは呟いた。

「明日の第三フェーズ。既に発表されているが、乱戦になる」

 Nightの言う通り、第三フェーズは乱戦だ。
 残った味方プレイヤー達が一同に介する。
 戦乱と騒乱を呼び寄せ、信じられるのは真の味方だけ。
 そんな状況下では、念入りな用意周到さがものを言う。

「ここまで集めて来たアイテムもフル投入する。それくらい大きな戦いだ」
「ってことは、史上最大規模のPvPってことー? 燃えて来たー!」
「フェルノは相変らずね。その中には、強敵もたくさんいるのよ?」
「だからだよー! 楽しくなーい?」

 フェルノは一人燃えていた。
 Nightは溜息を付くと、地図をより細かく見せる。

「盛り上がっている所は悪いが、今回の乱戦。最大の敵は……」
「聖レッドローズ騎士団だよね」
「その通りだ。今回、どれだけの人数が参加しているかは……まあ、見ての通りだった」

 聖レッドローズ騎士団とは既に会っている。
 幹部は三人。更に団長と副団長の揃い踏み。
 あまりにも相手が悪い。例え、相手が百人の大所帯で、そのうちの三分の一も集まっていなくてもだ。その強さは健在で、まともにやり合って、勝てるような相手じゃないのは、人数差で判り切っている。

「正直、絡まれなければ、もっと楽だった」
「そうだねー」
「ごめんね。私が首を突っ込んじゃったから」

 こうなったのはアキラのせい。
 それは大いにあったが、もはや言っていられない。
 考えても変わらないことを嘆かず、Nightはアキラに伝えた。

「どうするかはお前が決めろ」
「どうするかって?」
「戦うか、戦わないか。お前の性格なら、戦いたくないんだろうが、相手は逃がしてくれないぞ?」

 アキラは別に戦いが好きな訳じゃない。
 PvPも仕方なく受ける場合が多く、自分の意思は薄い。
 だからだろうか。Night逃げ延びる手立ても用意していた。
 最後だけ美味しい所を奪い、適当な所でドロップアウトする、超安全ルートだ。

「お前次第だ。お前が決めろ、何故ならギルマスだからな」
「ここでその要素出してくるの?」

 もはや機能もしていない要素だった。
 とはいえ、選択は迫られている。
 アキラは考え込む。何が正解で、なにが不正解か。
 答えなんてもの、存在していないのに頭を悩ませると、ドクンと胸が鼓動を上げた。

「そっか……」

 アキラは自分とは違う何かに触れる。
 励まされるような、応援されるような気持ちだ。
 背中を優しく押されると、アキラは顔を上げる。

「本当は戦いたくは無いよ。聖レッドローズ騎士団の人たち、みんな優しかったから」
「そうだったわね」
「確かに、一理あります」

 聖レッドローズ騎士団の優しさには全員触れている。
 あの統率力と実力に助けられた。
 つまり、戦いたくはない。仮に戦ったとしても互角、もしくは、単に格上だ。

「Night、戦わずに済む方法は無いのかな?」
「無いだろうな」
「そんな答えを出すのが早いよ」
「答えは出ている。ブローズの性格を考えて、完全に敵視している筈だ。もはや穏便に解決を図ることができないだろう」

 Nightは目を伏せていた。
 最初からこうなることは分かっていた。
 聖レッドローズ騎士団を倒さなければ、このイベントで勝ちを取れない。
 仮にそれを捨てて、聖レッドローズ騎士団を無視したとしても、逆にいつまでも付き纏われるのだけだった。

「だからこそ、ここで倒しておく。しかも、まともな戦い方をせずにな」
「「「どう言うこと?」」」

 Nightはニヤリと笑みを浮かべる。
 何やら考えがあるようで、Nightはアキラたちに説明する。

「なに、簡単なことだ。ブローズの思惑をへし折ってやればいい」
「へし折るってどうやって?」
「それを今から説明する。よく聞け」

 Nightは表示した地図上に、いくつものメダルを置いて行く。
 一つ一つ作戦を練っていたようで、アキラたちに分かるように説明した。
 けれどパターンが多すぎる上に、どれも裏を掻く様な戦法。
 聖レッドローズ騎士団にとっては、嫌なものばかりだった。

「どうだ? 面白くなりそうだろ」
「う~ん、それって、ブローズが許してくれるかな?」
「それに、雷斬は嫌よね?」
「あまり心地よくはありませんが、それも一つの手と言うことですね」
「そうだ。今回は連携が大事になる。数に利が無い以上、戦略で覆す」

 Nightは説明を終え、丸め込めに入った。
 アキラたちはNightが必死に考えてくれていた作戦を改めて見直す。
 とは言え、もう覚えていない。一つ分かるのは、あまり気持ちの良いものじゃないのだ。

「本当に通用するかな?」
「それを決めるのは、行動と時の運だ」
「ここで運の話をするんだ。Nightってぽく無いね」
「ふん。なんとでも言え、今私ができることは、これが全てだ」

 Nightはボヤかれて拗ねてしまう。
 そんなNightが可愛い。
 アキラは笑みを浮かべると、意識を切り替える。

「色々言っても仕方ないよね。これでやってみよう!」
「いいんだな?」
「私はいいよ。みんなは……大丈夫そうだね」

 アキラは友達の顔色を窺った。
 全員文句は無さそうで、アキラは決める。
 Nightの考えた無数の作戦を覚えるフェーズに入ると、後は暗記の時間になった。

「上手く行くといいけど」
「行くようにするんだ」
「あはは、えっと、2-A-ゆが……」
「あー、覚えられないよー!」

 フェルノの悲鳴が木霊する。
 ギルドホームのリビングで、まるで勉強会のような雰囲気になる。
 全員が黙々と各々の覚え方で作戦を唱え続けると、パンクしそうになる情報に、目を回してしまった。
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