VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

文字の大きさ
602 / 617

◇598 吸血鬼VS激泡1

しおりを挟む
 Nightはたった一人この場に残った。
 フェルノたちはブローズを探しに向かう。
 そうとなれば、Nightがやるべきことは時間稼ぎ。
 勝ち目は無いものの、スープラッシュを足止めすることくらいは果たそうとする。

「さてと」
「もういいかな?」

 スープラッシュの姿は見えないが、声だけは聞こえる。
 ずっと待ってくれていたらしく、かなり律義だった。

「ああ。悪かったな」
「ううん。私もフェアに戦いたいから」

 そう言うと、近くの草がガサガサと揺れた。
 明らかに何者かが潜んでいるが、Nightは攻撃を仕掛けない。
 舞って貰っていた分は果たそうと、姿を現すのを待っていると、背の高い女性が現れた。

「お前がスープラッシュだったな」
「うん。登場の仕方が奇襲だったけど、これが本来の私」

 初見殺しの奇襲を仕掛けた際は、水泡の中に潜んでいた。
 けれどいざ姿を現すと、その手にはメイスのような杖を持っている。
 先端の青白いクリスタルが眩く輝いている。中には気泡ができており、氷の結晶のようだった。

「どうせなら二人でもよかったよ?」
「二人だと? 随分と余裕だな」
「うん。残念だけど、私の方が強いから」

 スープラッシュは余裕を露わにしていた。
 手にしている杖を突き出すと、クルリと手首を使って回転させる。
 確かに強そうだ。おまけに水流弾まで撃ち出して来る。そんな相手に如何やって勝つのか。
 Nightはクアトラブルマルチタスクをフル回転して使い、思考を最大限に巡らせた。

「そうだな……行くぞ」
「おっ、仕掛けて来るんだね。いいよ、奇襲を仕掛けた分、一発目は受けて……えっ!?」

 スープラッシュが余裕を露わにしていた。
 両手を広げ、堂々と自慢の胸を貸す。
 実った胸がNightをバカにするようだが、Nightはスタイルの良いスープラッシュの体を見ることさえしない。

「に、逃げるの!?」
「逃げるに決まってるだろ。まともにやっても、お前に勝てる気がしない」
「だからって逃げるのは……いいよ、それじゃあ私から」

 Nightの選択は逃げだった。スープラッシュから距離を取ると、一気に距離を開く。
 これでメイス状の杖は当たらない。有効射程距離を外れ、武器を一つ潰した。

 スープラッシュの種族スキルは【水泡】。それから固有スキルは【水流弾】。
 このうち使い物になるのは後者のみ。
 つまりは距離さえ取って余裕は出ない。何せ、スープラッシュにとっては格好の的だからだ。

「【水流弾】!」

 スープラッシュは指を拳銃に見立てた。
 固有スキルを発動すると、指の先端に小さな水の塊が集まる。
 丸い水泡を生み出すと、細長く形が変化して、まるで弾丸のようになった。

「撃て!」

 スープラッシュが命じると、指先から水の弾丸が放たれる。
 衝撃で軽く腕と体が仰け反ると、水流弾はNightの逃げる背中を狙う。
 丁度ど真ん中の心臓を狙い、当たれば即死。スープラッシュは笑みを浮かべるが、Nightもタダでは死ぬ気が無い。

「甘いな」

 地面を蹴ると、大き目の盾が生み出された。
 戦車の装甲をイメージした盾だ。ただでは壊されず、スープラッシュの放つ水流弾も弾かれた。
 凹ませることさえ叶わないと、滴った水滴が立てに付着し、弾丸の形を留められなくなれば地面に吸収されてしまった。

「えっ、それもありなの!?」
「なんでもありだ。よっと……今度は私から行くぞ」

 盾の後ろに入り、小さくしゃがみ込んだ。
 その状態で今度はNightの反撃だ。
 ボウガンをスープラッシュに合わせると、一杯にまで引き絞っていた弦を解放。
 引き金に掛けていた指を放し、装填していた鉄製の矢がスープラッシュを襲う。

 バンッ!

 微かに鼓膜を劈いた音。スープラッシュは危険を感じ、すぐさま【水泡】を発動した。
 体を水の中に溶け込ませると、鉄の矢は吸い込まれてしまう。
 あらゆる抵抗を矢は超えていく。けれど水泡の分厚さはNightの想像を超えていて、鉄製の矢は地面に無残に落ちてしまった。

「やっぱりダメか」

 Nightは失敗を前提に考えていた。
 それでも矢を放ってみたのだが、結果は想像通り。
 スープラッシュの前ではあらゆる衝撃も殺されてしまい、まともな遠距離武器が嬉々そうにない。

「危なかった。凄い武器だね」
「そうか?」
「私、ボウガンを使うプレイヤーと戦うのは初めてだよ。だから興味があるの」
「興味だと?」
「うん。その矢が私を捉えることができるのかなってね」

 スープラッシュの口振りは、余裕の裏返しだった。
 もちろん聡明なNightにはスープラッシュの言動から簡単に理解できる。
 ボウガンの矢が届かないことも、効かないことも、水に溶けることができるスープラッシュには効果無しと言うことも。

「でもよかったよ」
「よかった?」
「ここまで余裕な表情をしていて、一撃でやられたら立つ瀬が無いから。それじゃあ、少し趣向を変えてみようかな?」

 スープラッシュはまだ二つ目の技を見せてくれるらしい。
 Nightをジッと見つめると、メイスを強く握る。
 その様子に警戒心を強めたNightだが、HPはギリギリだった。

(さて、ここまで来たが、この後だな)

 まだ手詰まりという訳ではない。それでも優位性は失われる。
 Nightは思考を巡らせ続けた。
 勝つための方程式を見出すために。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】VRMMOでスライム100万匹倒して最強になった僕は経験値で殴るゲームやってます

鳥山正人
ファンタジー
検証が大好きな主人公、三上ハヤト。 このゲームではブロンズ称号、シルバー称号、ゴールド称号が確認されている。 それ以上の称号があるかもしれないと思い、スライムを100万匹倒したらプラチナ称号を手に入れた主人公。 その称号効果はスライム種族特効効果。 そこからは定番の経験値スライムを倒して最強への道かと思ったら・・・ このゲームは経験値を分け与える事が出来て、売買出来るゲーム。 主人公は経験値でモンスターを殴ります。 ────── 自筆です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり
ファンタジー
【書籍化!】第17回ファンタジー小説大賞『癒し系ほっこり賞』受賞作です。 (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です) ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様でも公開しております。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

処理中です...