VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ゆう

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◇611 一年の思い出

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「それでは新年度も元気に登校できるように、しっかりと休息を摂るように。くれぐれも、怪我や事故に遭わないよう、気を付けて生活しましょうね。それでは解散」

 明輝たちは担任からのありがたーい、テンプレな挨拶を受けた。
 それからしばらく時間が経つと、空気が一変。
 春色に変わると、顔色が明るくなった。

「うーん、終わったぁー!」

 烈火は両腕を天井に着きそうな勢いで振り上げる。
 体中の凝りを取ると、抑圧されていた感情が解き放たれた。

「よかったね。烈火」
「うん。いやぁー、やっとだよー。明日から春休み―、嬉しいなー」

 明日からいよいよ春休み。浮かれてしまうのも無理は無い。
 かくいう明輝も同じ気持ちで、心が躍っている。
 何せ明日から春休み。そして今日は終了式だ。

「それじゃあ帰ろっか」
「あれ? 烈火部活は?」

 学校が終わり、早速下校する生徒もチラホラ。
 烈火も混ざろうとするが、忘れてはいけないことがある。
 烈火は部活に入っている。テニス部に出なくてもいいのかと明輝は訊ねた。

「今日は無いよーだ。それじゃあ、早く帰ってCUに集合」
「あはは、分かったよ。って、待ってよ烈火!」

 如何やら今日は休みらしい。
 烈火は明輝の腕を掴むと、リュックを持って最速で教室を後にした。
 他の仲の良いクラスメイトと特に話すこともなく、風を切って抜けていく。


「いや、色々あった一年だったねー」

 明輝と烈火はいつも通りの通学路を帰っていた。
 この時間はほとんど誰も歩いていない。
 だから互いに横並びで帰っていると、烈火は一年を振り返る。

「そうだね。色々あったよね」

 他愛のない言葉で片付けてしまうには勿体ない。
 それでも数えるだけでも様々なことを経験した。
 全部いい思い出……って訳じゃないけれど、自分の一部だ。

「全部CUのことだけどさー」
「そうだよね。たくさんイベントに参加して、色んな人に出会って、色んな強敵と戦って……」
「まあ勝てなかったけどね、イベント」

 口に出してみると、大まかにはこんな所だろうか?
 実際にはもっとたくさんの経験をした。
 その中でも烈火にとってはイベントが大きかったらしく、この間の物が特に印象に残っている。

「それはそうだけど、楽しかったでしょ?」
「それこの間も聞いたー」

 当り障りのない返しをし、明輝は上手く話しを纏めようとした。
 けれど烈火はそれが気に入らない。
 目を細め、明輝のことを鋭く見る。

「あーあ、勝ちたかったなー」
「あはは、それじゃあ次勝てばいいよ」
「次かー。よーし、もっと頑張るぞー」

 烈火は未だに勝ちたかったと嘆く。
 けれどそれは置いておくことにした。
 まだまだイベントは来る筈。次勝てばいいと励ますと、烈火は速攻で乗った。

「だけど私は色んな人に出会えたのが一番の思い出かな」
「友達たくさんできたよねー」
「うん。蒼伊に斬禍、鈴来。リアルでも会ったよね」
「そうそう。曲者ばっかりだったよねー」

 明輝たちが出会って来たのは、ほとんどが個性豊かな曲者揃い。
 そんな同級生たちと交流を重ね、この一年間を過ごしてきた。
 だからだろうか。何だか濃い一年になった気がする。

「でも、私たちみんなそうでしょ?」
「確かに!」

 烈火が納得してしまうのは無理ない。
 明輝ですら思ってしまうので、否定する部分が見つからない。
 蒼伊も同じようなことを言うのは確かで、想像に難くない。

「でもそんな日常が私は好きだな」
「明輝……私も!」

 明輝はこの関係が大好きだった。
 烈火も同じ様子で、曲者揃いだからこそ、普通では得られない達成感と魅力がある。
 そのおかげか、変に気を遣わなくて済んでいた。

「それじゃあ今日はなにする?」
「うーん、みんな今日はログインできないみたいだから、適当にダンジョンに行ってみる?」
「賛成……あ」

 蒼伊たちも事情があるらしいので、今日はログインできない。
 そのせいか、今回は目的が決まっていない。
 明輝の提案で烈火と一緒にダンジョンへ。とは言え、今から何処に行くのか決める必要があった。

「どうしたの、烈火?」
「ごめん、学校に忘れ物してきちゃったー」
「ええっ!?」

 ここまで来て忘れ物をしたらしい。
 烈火からしてみればいつものことで、別に取りに行くことは無い。
 のだが、明輝は危惧していることがある。

「でもまあいいよね。新学期になってからでも」
「ダメだよ。だって学年変ってるんだよ!」
「あっ、それじゃあ私のテストの答案用紙が新一年生の後輩たちにバレて……マズい!」
「すぐに取りに行った方がいいよ」

 新学期に取りに言っても遅い。
 新しく入学する後輩に、烈火のテスト答案が見られる。
 つまり、印象がこの時点で決まってしまうことになるので、烈火は先輩風を吹かすためにも阻止する必要があった。

「ごめん、明輝。先に帰ってて!」
「烈火!?」
「CUで合流ってことで―。ヤバいヤバい、私の成績がー!」

  烈火は走って行ってしまった。
 ここから学校まで引き返すのは時間が……まぁ、烈火ならそう時間もかからないだろ位。
 それにしても一体どんな成績だったのか。明輝は気になった。

「行っちゃった。うーん、先にログインしておくのもいいけど、なにか忘れているような」

 せっかくなので何かすることは無いだろうか?
 暇を持て余してもいいけれど、明輝は忘れていることは無いかと、頭をフル回転。
 意識を切り替え、やるべきことを見つけようとした。

「あっ、そうだ!」

 明輝はポンと手を叩いた。
 何か思いだしたのか、踵を返す。

「駅前のスーパーが特売やってたっけ。買いに行こっと」

 何だかデジャブなことをしているのは明輝は理解している。
 けれど気にせずに駅前スーパーに向かった。
 今日の特売はもちろん、卵十個入りが特売だった。
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