29 / 45
29話 ラウリィ、サポートタイプなんだ
しおりを挟む
巨大な三本の爪痕。
明らかにモンスターが爪を研いだ後で、見るも無惨に樹皮が剥がされていた。
「マズいな。クーリエ」
「はい、おそらく肉食のモンスターでしょうね」
「どうするんですか、ヒジリさん! 早く逃げないとダメですよね?」
ラウリィは初っ端から怖気付く。
とは言えその気持ちも分からなくはない。
むしろ、俺だって逃げ出したい。とは言え、そうもいかない事情がある。
「そうしたいのは山々なんだけどね」
「それじゃあ!」
「ですが無理です。この森は、トゥリーフ家の領地。領主が事態の収集を図らねばならないんですよ、ラウリィ様」
「そ、そんな……」
とは言えラウリィには関係のない話だ。
落ち込んだって仕方ない。
心配なので、俺はラウリィだけでも逃げてもらうことにした。
流石に、ちょっとは男気張りたい。
「ラウリィ、なんなら逃げても……」
「ダメです、ヒジリさん! 私はヒジリさんの従者になったんですよ。誓って逃げたりしません」
「……いやいや、誓わなくてもいいのに」
命を張る契約書なんて、ドラマの中だけで充分。
俺の認識ではそうなのだが、如何やら異世界ではそんな常識は無いらしい。
頭を悩まされる種が増えると、俺はクーリエの顔を見つめた。
「従者の意思を尊重するか否か、決めるのは主人であるヒジリ様です」
「責任丸投げか。じゃあ、ラウリィ。とりあえず隠れている人、捜そうか」
「はい! ……えっ、戦うんじゃないんですか?」
俺はラウリィにも協力してもらうことした。
強い目力に打ち負かされると、流石に断れない。
とは言え妥協した範囲での話で、ラウリィは俺の言葉に驚く。如何やら、これからモンスターとの血湧き肉躍る戦争を起こそうと思っていたらしい。
「戦うわけないでしょ? そんなの怖いから」
「ヒジリさんでも怖いなんて言うんですね」
「いやいや、日本人は怖がりでしょ?」
「に、にほんじん?」
また伝わらない言葉で話してしまった。
クーリエとラウリィが「なに言ってんだ、こいつ」みたいな顔をする。
恥ずかしくなり赤面すると、俺は顔を背け、意識を切り替える。
「とにかく、まずはモンスターとの戦闘よりも、森の中に潜んでいる人を捜して救助する。それが先決」
「実際、先程私が伏せた盗賊以外にも潜んでいる可能性は高いですね。ナイフの切り口、種類が違いますから」
「凄い、そこまでは見てなかったよ」
「勿体無いお言葉にございます」
もう、褒めるとかそんな域じゃ無い。
完全に軍人の思考回路をしていた。
俺は気取られると、唖然とする。
しかし、そんな話は一旦置いておこう。
まずは、人命救助最優先だ。
「問題は、どうやって見つけるかだけど……俺の固有魔法じゃ、無理なんだよね」
「精霊を呼びましょうか?」
「それは奥の手。ぜーったい、ダメだよ」
「私は奥の手……ありがたきお言葉、ありがとうございます!」
クーリエは一言一言喜んでくれる。
何だか嬉しいけど気疲れしてしまいそうで、俺は頭を再度悩まされる。
「それじゃあどうしようか?」
「あの、私の家系魔法を使うのはどうですか?」
「「ラウリィの家系魔法?」」
そう言えば、ラウリィの家系魔法を俺は知らない。
ここまでまともに戦う素振りも見ていない。
全く戦力としてカウントできていなかったのを俺は恥じるが、どんな魔法か気になって仕方がない。
「ラウリィ、ラウリィの家系魔法って?」
「見ていてください。とりあえず、生体反応を探ってみますね」
そう言うと、ラウリィは天秤が付いた剣を地面に突き付ける。
これが条件? 俺はマジマジと見つめると、急に魔力が溢れ出す。
迸り、ラウリィと剣を中心に巨大な円が浮かび上がると、地面を貫き、空中に陣を描いた。
「ラウリィ?」
「少し静かにしていてください。集中しているんです」
「あっ、はい、すいません」
ラウリィは眉間に皺を寄せて集中力全開だった。
話し掛けるのはダメらしく、俺はグッと押し黙る。
ただ見守り続けると、ラウリィは口をパクパク動かし、独り言を呟く。
「あれが、それで……えっ、あっ、はい、……それと、これが、あれは……たしか、は、はい、はいはいはい、見つけましたよ、ヒジリさん!」
急にラウリィは声を上げた。
いったいなにを見つけたのか。
もしかすると、肝心の人を見つけたのかもしれない。
「マジで、ラウリィ、人を見つけたの!」
「はい。私の【家系魔法:陣形掌握】は、少し時間は掛かってしまうんですけど、特定とエリアに陣を描けば、その中に自由な影響を付与できるんです。そのおかげで、私は人捜しができるんです!」
「えっ、ヤバ……お手柄だよ、ラウリィ」
「ありがとうございます。えへへ」
ラウリィは嬉しそうに笑みを浮かべる。
しかし俺はこう思った。ラウリィって、完全にサポートタイプという事実。
まさかの直接的な攻撃札の無い三人が揃ってしまい、これは骨がまたまた折れそうだった。
明らかにモンスターが爪を研いだ後で、見るも無惨に樹皮が剥がされていた。
「マズいな。クーリエ」
「はい、おそらく肉食のモンスターでしょうね」
「どうするんですか、ヒジリさん! 早く逃げないとダメですよね?」
ラウリィは初っ端から怖気付く。
とは言えその気持ちも分からなくはない。
むしろ、俺だって逃げ出したい。とは言え、そうもいかない事情がある。
「そうしたいのは山々なんだけどね」
「それじゃあ!」
「ですが無理です。この森は、トゥリーフ家の領地。領主が事態の収集を図らねばならないんですよ、ラウリィ様」
「そ、そんな……」
とは言えラウリィには関係のない話だ。
落ち込んだって仕方ない。
心配なので、俺はラウリィだけでも逃げてもらうことにした。
流石に、ちょっとは男気張りたい。
「ラウリィ、なんなら逃げても……」
「ダメです、ヒジリさん! 私はヒジリさんの従者になったんですよ。誓って逃げたりしません」
「……いやいや、誓わなくてもいいのに」
命を張る契約書なんて、ドラマの中だけで充分。
俺の認識ではそうなのだが、如何やら異世界ではそんな常識は無いらしい。
頭を悩まされる種が増えると、俺はクーリエの顔を見つめた。
「従者の意思を尊重するか否か、決めるのは主人であるヒジリ様です」
「責任丸投げか。じゃあ、ラウリィ。とりあえず隠れている人、捜そうか」
「はい! ……えっ、戦うんじゃないんですか?」
俺はラウリィにも協力してもらうことした。
強い目力に打ち負かされると、流石に断れない。
とは言え妥協した範囲での話で、ラウリィは俺の言葉に驚く。如何やら、これからモンスターとの血湧き肉躍る戦争を起こそうと思っていたらしい。
「戦うわけないでしょ? そんなの怖いから」
「ヒジリさんでも怖いなんて言うんですね」
「いやいや、日本人は怖がりでしょ?」
「に、にほんじん?」
また伝わらない言葉で話してしまった。
クーリエとラウリィが「なに言ってんだ、こいつ」みたいな顔をする。
恥ずかしくなり赤面すると、俺は顔を背け、意識を切り替える。
「とにかく、まずはモンスターとの戦闘よりも、森の中に潜んでいる人を捜して救助する。それが先決」
「実際、先程私が伏せた盗賊以外にも潜んでいる可能性は高いですね。ナイフの切り口、種類が違いますから」
「凄い、そこまでは見てなかったよ」
「勿体無いお言葉にございます」
もう、褒めるとかそんな域じゃ無い。
完全に軍人の思考回路をしていた。
俺は気取られると、唖然とする。
しかし、そんな話は一旦置いておこう。
まずは、人命救助最優先だ。
「問題は、どうやって見つけるかだけど……俺の固有魔法じゃ、無理なんだよね」
「精霊を呼びましょうか?」
「それは奥の手。ぜーったい、ダメだよ」
「私は奥の手……ありがたきお言葉、ありがとうございます!」
クーリエは一言一言喜んでくれる。
何だか嬉しいけど気疲れしてしまいそうで、俺は頭を再度悩まされる。
「それじゃあどうしようか?」
「あの、私の家系魔法を使うのはどうですか?」
「「ラウリィの家系魔法?」」
そう言えば、ラウリィの家系魔法を俺は知らない。
ここまでまともに戦う素振りも見ていない。
全く戦力としてカウントできていなかったのを俺は恥じるが、どんな魔法か気になって仕方がない。
「ラウリィ、ラウリィの家系魔法って?」
「見ていてください。とりあえず、生体反応を探ってみますね」
そう言うと、ラウリィは天秤が付いた剣を地面に突き付ける。
これが条件? 俺はマジマジと見つめると、急に魔力が溢れ出す。
迸り、ラウリィと剣を中心に巨大な円が浮かび上がると、地面を貫き、空中に陣を描いた。
「ラウリィ?」
「少し静かにしていてください。集中しているんです」
「あっ、はい、すいません」
ラウリィは眉間に皺を寄せて集中力全開だった。
話し掛けるのはダメらしく、俺はグッと押し黙る。
ただ見守り続けると、ラウリィは口をパクパク動かし、独り言を呟く。
「あれが、それで……えっ、あっ、はい、……それと、これが、あれは……たしか、は、はい、はいはいはい、見つけましたよ、ヒジリさん!」
急にラウリィは声を上げた。
いったいなにを見つけたのか。
もしかすると、肝心の人を見つけたのかもしれない。
「マジで、ラウリィ、人を見つけたの!」
「はい。私の【家系魔法:陣形掌握】は、少し時間は掛かってしまうんですけど、特定とエリアに陣を描けば、その中に自由な影響を付与できるんです。そのおかげで、私は人捜しができるんです!」
「えっ、ヤバ……お手柄だよ、ラウリィ」
「ありがとうございます。えへへ」
ラウリィは嬉しそうに笑みを浮かべる。
しかし俺はこう思った。ラウリィって、完全にサポートタイプという事実。
まさかの直接的な攻撃札の無い三人が揃ってしまい、これは骨がまたまた折れそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」
その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ!
「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた!
俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。
絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。
辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。
一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」
これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる