かつて《剣聖》と呼ばれた社畜、異世界で付与魔法を手に再び《剣聖》へと至る。

水定ゆう

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30話 まあ、やっちゃいますか?

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 ラウリィに探知して貰った俺達。
 モンスターに襲われる前に、助け出せたらいいのに。
 そう思ったのだが、よくよく考えれば森の中に潜んでいる時点で怪しい。

「とは言っても、みすみすモンスターに食われるなんて悍ましいこと、人間として止めたいよね」
「どうなされましたか、ヒジリ様」

 クーリエが隣を警戒しながら、俺に話し掛ける。
 正直独り言の域を出ない。
 なのでここは上手く誤魔化す。

「どんなモンスターが潜んでいるかなって」
「確かに気にはなりますね。ですがご安心ください。私が付いていますので」
「それは心強いな」
「私もいますよ!」

 ラウリィも忘れられたと思ったのか、手をスッと挙げた。
 確かにここまでまともに戦力としてカウントしていなかった。その事実は認める。
 だけど今はそんな気はしない。立派な戦力だった。

「ちなみにラウリィ、その探知の正確性は?」
「えっと、私の体調によります」
「おお、なるほどね」

 と言うことはホルモンバランスが崩れると精度が下がるのか。
 女性は大変だなと、心の中で敬礼すると、ラウリィは首を捻る。
 流石に無言は怖かったようで、ラウリィは青ざめる。

「ま、まさか、私なにかしちゃいましたかー?」
「いいや、なんにも」
「その言い方が怖いです!」

 それじゃあどんな言い方をすればいいんだ。
 心の中で今度は叫ぶと、クーリエの眉根が寄る。
 俺も警戒して剣の柄に指を掛けると、ラウリィがピタリと止まる。

「この辺りですね」
「それじゃあ一応警戒を……」
「そこです!」
「見えてるよ」

 俺達は一度立ち止まる。もしかすると敵意があるかもしれない。
 そう思い警戒したのも数秒。
 近くの草むらがガサリと微かに揺れ、ギラリと鈍く光るものが見えた。

 一瞬で俺とクーリエはナイフだと判断。
 速攻で対処すべく、投げナイフを飛ばす。
 まっすぐ最短距離で草むらの中に吸い込まれると、中で悲鳴が上がった。

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「そんなに?」

 とんでもない爆音の悲鳴だった。
 しかも完全に人間。しかも男性。もっと言えば、四十代半ばくらいよドスの効いたおっさん声だった。

(懐かしい……たまにいたな、発狂してる上司)

 俺は目から涙を浮かべそうになる。
 しかしここにいるのは嫌ーな上司じゃない。
 森の中に潜伏している、敵か味方か定かではない、碌でもない奴だった。

「チッ、くそ、糞が! いきなりナイフを飛ばしてくんじゃねぇ!」
「いえ、投げますよ」
「おい、ちょっと待ちやがれぇ!」

 草むらの中からたまらず出てきたのは、案の定おじさんだった。
 無精髭を生やし、全身が日焼けしている。
 髪は縮れていて、たくさんの木の枝が突き刺さっていた。

 そんな男性はいきなりナイフを投げた俺に怒鳴った。
 いや、怒られて当然なんだけどさ。
 かと思ったのも一瞬、クーリエは第二、第三のナイフを投げ付けた。

 あまりにも展開が早い。
 もはや話し合いもなく、助けるとかもない。
 完全に殺してしまう大作戦が勝手に執り行われており、俺は呆気に取られてしまう。

「待ちません。ヒジリ様に仇をなすようであれば、速やかに排除致します」
「まだなんにもしてねぇだろ!」
「これからしようとしていたの間違いでは?」
「んなことするかよ。俺が用があるのは、そっちのガキだ!」

 男性が指を指したのは、ラウリィだった。
 ラウリィに何の用が? まさか新手の曲者か。
 そう思った俺は剣を握り締めると、男性に訊ねる。

「ラウリィになんの用?」
「ふん。そのガキをとっ捕まえて、売る。それが俺達盗賊団に寄せられた依頼だ!」
「はい、ギルティ」
「排除します」
「待ちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 如何やらこの間の盗賊達の仲間だったらしい。
 と言うことは、クーリエが倒した男性も同じく? 点と点が一本の線で繋がると、俺とクーリエは問答無用で攻撃に転じる。
 二体一の反則戦。おまけにこっちはクーリエが居る。当然負ける余地はなく、俺とクーリエは男性を取り囲む。

「とりあえず、殴るから?」
「はっ」
「腕と脚の腱、切らせて貰いますね」
「ちょ、なに物騒なこと言って」
「「問答無用!」」
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 男性の悍ましい発狂が上がった。
 ラウリィはその声に耳を痛めると、怖くなって耳を塞ぐ。
 目をギュッと瞑り、嵐が過ぎ去るのを待つ中、俺とクーリエの二人は、無抵抗の男性を先制パンチで黙らせた。
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