かつて《剣聖》と呼ばれた社畜、異世界で付与魔法を手に再び《剣聖》へと至る。

水定ゆう

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31話 うちの従者とメイドさんがすいません

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「糞がよ! 俺をどうするつもりだ」

 俺とクーリエにボコされた男性は縛り上げられていた。
 正直可哀想だと思う。
 なんせ、腕と足の腱を切られてしまい、動けなくなっていた。
 その上で関節を曲げられた挙句、丈夫な縄で縛られている。

(死ぬな、これ、絶対俺達逃げるからなー)

 もはや助けられる気はしない。
 何せこの状況、モンスターに出遭くわせば、俺達は放置して逃げるだろう。

 男性の命は既に俺達の手から離れている。
 その事実にも気が付かないまま、歯軋りを立てて、俺達を睨み付けていた。

「おい、聞いてんのか!」
「口を慎みなさい。貴方の命は既にこの方に握られているんですよ」
「握ってないけどね」
「はぁ!? んじゃよ、俺は一体どうなるんだよ。誰に命を握られているんだよ」
「それは……さぁ?」
「さぁ、じゃねぇ!」

 俺は首を横に捻る。
 男性の怒号だけが響き渡ると、森の中で残響になる。
 如何やら相当キレている。まあ、キレて当然なのだが、俺は頬を掻く。

「ラウリィ、どうする?」
「私に委ねるんですか!」
「当たり前だよ。だってこの人は、ラウリィの命を狙ってたんだよ。処遇を決めるのは、ラウリィだと思うけど」

 男性はラウリィを狙っていた。
 もちろんラウリィが貴族の人間で、この辺りではトゥリーフ家よりも権力がある。
 そのせいもあり、どんな使い方もできてしまう。

 この間俺が倒した盗賊達の一味とすれば、きっと変態貴族? にでも売るのだろう。
 どんな変態な貴族なのか。俺には想像もつかないが、残念なことに、俺はラウリィをみすみす奪わせはしない。

ラウリィは・・・・・俺の従者・・・・。俺の前で命を狙うなよ?」
「ひいぃ! 分かってらぁ! 俺だってバカじゃねえ」
「いやいや、狙う時点でバカでしょ?」

 俺の視線が横に向く。
 クーリエの表情が怖くて仕方ない。
 鋭く睨んだ眼が男性をゴミのように見つめると、腰に携えた剣の切っ先を、鞘に納めたまめ突き付ける。

「今、この方のことをバカにしましたね?」
「はぁ!? いや、そんな訳、無いですぜ?」
「黙ってください」
「痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 クーリエは落ちていたナイフを男性の腕に刺した。
 ダラダラと鮮血が滲んで地面に垂れると、男性は苦しそうな表情を浮かべる。
 絶対に痛い。俺は訝しむと、男性のむき出しになりそうな目が助けを求めていた。

「助けてくれぇ、俺は、なんにもしねぇからよ」
「クーリエ、辞めてあげて」
「畏まりました。命拾いしましたね」

 クーリエは一歩身を引く。
 これは怒られてはいけない系の人を怒らせたらしい。
 俺にまで恐怖が伝染すると、変に会釈をしてから、男性に語り掛ける。

「ごめん。俺のメイドが」
「俺のメイド!?」
「クーリエ、反応早すぎ。今喋ってるところだから」
「失礼致しました」

 クーリエが変に気にしてしまう。
 おれも言葉選びをミスったと感じた。
 なので一応訂正はしないが、上手く流しつつ、俺は男性に再び声を掛けた。

「残念だけど、警察に突き出すよ」
「騎士にか!? 勘弁してくれよ、俺はまだ誰も殺してないんだぜ」
「殺してなくても未遂だからさ。それじゃあ、運び出すけど、暴れないでね?」
「暴れれば、こうです」

 クーリエは俺と後ろで男性を脅す。
 もはやこれだけで効果覿面。
 俺の存在価値とは何なのかと言わんばかりに、圧倒的な差を見つけるられるも、俺は男性を運ぶため、固有魔法を発動した。

「【固有魔法:付与強化(体)】」

 全身に魔力が行き渡り、内側からみるみる内に力が湧いた。
 これなら軽く持ち上げられる。
 そう思って瞬間、男性背後の草むらがガサガサ揺れる。

「な、なにかいるんでしょうか?」
「なにかいる、ねー」

 正直強い殺気は感じない。
 一体何が潜んでいるのか。
 俺は草むらの方に近寄ると、中をガサガサ揺らしてみる。

「ヒジリさん! 危ないですよ」
「大丈夫。強化してるから」
「そう言う話しじゃないですよ!」

 ラウリィは信頼してくれている。
 しかし俺は迷わず草むらの中を覗き込む。
 きっと何かいるはずだ。とはいえ危険度は低いはず。そう思って瞬間、俺は草むらの中に居たものに驚き声を上げた。
 それに呼応してクーリエは警戒し、ラウリィは震え、男性は縛られてはいるものの逃げ出そうとする始末で、たった一声で状況が一変してしまった。
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