1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

文字の大きさ
662 / 733
フェンリル編

658.赤壱島へ行こう1

しおりを挟む
「それじゃあ行って来るよ」

 ルカは朝食を食べると早々に出発する。
 もちろん一人で行くので、バルトラには留守番をして貰う。

「ノンキナヤツダナ」
「どうして?
「フン、コノスキニワレガコノシマヲシハイシテクレル」
「あはは、いいんじゃない? 島を管理してくれるなら万々歳だよ」

 ルカはバルトラの本気を冗談だと軽く受け流す。
 圧倒的な力の前では、バルトラとて弱く見えてしまうもの。
 それが悔しく映るも、もはやバルトラにルカへの対抗心は欠片も無かった。

「イッテオケ」
「はいはい。それじゃあしばらく帰らないけど、よろしくね」

 とは言えルカはバルトラを信用していた。
 一種の契約のようなものを結んだ間柄。
 おかげもあってか、バルトラは非常に大人しい。
 釘を刺しておけば、自然と力を行使して、島を守護してくれると信じていた。

「さてと、そろそろ行こうかな。《フライ》」

 ルカは地面から離れると、体が宙に浮き上がる。
 フワリと空へ舞い上がると、ルカの体は軽やかに空を泳ぐ。
 圧倒的な速度はマッハになる。
 必要もない速度を可能にすると、ルカは早速七輪島に向かった。

「イッタイワレヲナンダトオモッテイルンダ」

 そんな姿をバルトラは見届けた。
 つい揶揄してしまうのは、ルカが異常だからだ。
 けれど誰も否定はしない。縛られた魂はルカの命を受けると、応えるしかなかった。


「七輪島はこの辺りの筈……」

 ルカは幻島の結界を突き抜けた。
 無駄なあの速度、別に結界を超えるのに必要ではない。
 ただ少しだけ、次元を超える感覚を味わっておきたかった。
 千年前も過去や未来、別の世界に訪れたことがあった。
 その時のなんとも言えないザラついた感触を思い起こす。

「とりあえず、赤壱島に行こうかな」

 しかしそんな感性はもう要らない。
 代わりにルカは目的の場所に向かう。
 まずは七輪島の中でも二番目に大きな敷地面積を誇り、最も栄えた集落のあった、赤壱島に向かう。

「千年前から栄えてはいたけれど、あの時は小さな集落だった。貿易都市とまでは呼べなかったけど、千年も月日が経ったんだ。私だったら、あの集落を母体に、貿易の拠点を築き上げるけど……まあ、そんな単純な話で解決する訳ないか」

 ルカは千年前の集落を知っている。
 あの時から貿易は行っていたが、今で聞く程の地位はない。
 けれど千年もの月日を費やしたんだ。必ず変わっている筈と期待する。

「さてとどうなって……おっ、赤斜山が見えて来た」

 視界の先に大きな山が見えた。
 真っ赤な斜面をした山で、今でも活動する活火山。
 七輪島の一つ、赤壱島の由来であり、神域とされる山。
 それこそが赤斜山であり、あの山があると言うことは、赤壱島に辿り着いた証だった。

「ってことは……やっぱり広いな」

 真下に広がる広大な地面。
 所々が赤茶けていて、深緑色の森が見える。
 全体的に“赤”が印象的な土地。まさしく赤壱島だ。

「さてと、赤斜山から東に向かって行けば……よし!」

 ルカは赤斜山から東に向かう。
 千年前の記憶を辿れば、集落が有ったのは東側。
 山の麓と言うよりも、海に面している。
 それは最もな話で、交易には海を使うのが一番手っ取り早い。

「集落に立ち寄るにしても、人の行き来が激しくないと、情報収集も大変なんだけどな。まあ、その心配はないよね?」

 ルカは要らぬ心配をしていた。
 それもその筈、赤壱島は七輪島の中でも、最大の交易が行われている。
 ナタリーが嘘を付く訳が無い。流石に人の行き来が激しいと想像すると、視界の先に建物の姿が映り込んだ。

「おっ、見えて来た!」

 私は少しだけ興奮する。如何やら集落は残っていると確信した。
 その瞬間、《フライ》意外にもう一つ魔法を掛ける。
 今回使うのは《インビジブル》。姿を隠すと、私は建物の頭上に立つ。

「おお、アレがあの頃の小さな集落?」

 眼下に浮かんだのは町並み。
 記憶が正しければ、否、間違ってはいないが、明らかにあの頃の集落の有った場所。
 やはりと言うべきか、母体にして成長を続けていたらしい。
 それにしては、ルカは圧倒される。

「まさか、こんなに……」

 想っていた以上に栄えていた。
 千年の月日は伊達ではない。
 痛感した時間の流れに打ちのめされる所か、むしろ愉悦を浮かべる。

「早速行ってみよう」

 ルカは町を見つけたので早速向かう。
 そのためにも、空から舞い降りたんじゃ問題だ。
 適当に下りられる場所を探すと、ルカはいい森を見つける。

「よし、あの森に下りよう」

 ルカは町を見つけたので、近くの森に下りる。
 空を優雅にステップを踏んで飛行していたが、それももうお終い。
 透明化の魔法、《インビジブル》も解除すると、ルカは姿を露わにする。

「ふぅ。これでよし」

 後はここから町に向かうだけだ。
 さてはて、一体赤壱島はどんな変化を迎えているのだろうか?
 ルカは楽しみにしつつ、下り立った森の中を見回す。

「それにしても、魔素が緩いね」

 第一印象は、魔素の質が落ちていることだった。
 実際問題、幻島が特殊なだけなのは確か。
 世界の影響を等しく受けて来た七輪島も、今となっては魔法には適していない。
 けれど元々持っている素質が高いおかげで、ルカの魔法も多少なりとも受け入れてくれた。

「とはいえ……(グニャリ)」

 ルカは確認も兼ねて、近くの木の幹に手をかざす。
 すると木の幹はグニャリとあり得ない形に曲がってしまう。
 まるで熱を加えたスプーンのようで、自然界では生まれない独創的な芸術作品に早変わりする。

「流石に私も力を全部受け止めてくれる訳じゃないと」

 とりあえず方針は変えないで行く。
 ルカは身の程を弁えると、魔法の威力を抑えることにした。
 心の中で調整を加えると、早速町に向かう。

「さてと、町はどんな賑わいを見せているのかな。楽しみだよ」

 千年ぶりの赤壱島だ。
 ルカのことなんて誰も知らない、露知らない。
 そんなことは分かり切っているのだが、変化がどんな形で進んだのか、純粋な興味でルカは笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...