1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

666.割り込みは許さないよ?

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 風刃麗姫は去ってしまった。
 結局情報の片鱗も掴めなかった。
 残念な結果にルカは頭を掻くと、「仕方が無いか」と唱えた。

「さてと、受付にでも聞いてみようかな」

 仕方が無いので、ルカは受付カウンターに並ぶ。
 正直、冒険者ギルドの受付嬢が、一介の学生に情報を提供してくれるとは思えない。
 
 ましてや込み入った情報を、冒険者相手にも教えることは無い。
 普通に考えれば、同業者同士でしかできないことだ。
 もし、冒険者ギルドの職員が情報を流せばたちまち噂になり、職権乱用で暴動が起きかねなかった。

「実際、教えては貰えないんだろうけどさ」

 けれどルカは楽しみにしていた。
 冒険者ギルドにこうして足を運ぶ機会なんて無かった。
 千年と言う月日の中で、魔法使いは衰退。代わりに魔術師が台頭し、それと引き合いになるように、自警団的な意味合いで冒険者が現れた。
 千年前の冒険者とは、意味が異なるのかもしれないが、それでもルカにとっては懐かしく思える。

「まあ、私は冒険をする魔法使いだったけど……おっ」

 そうこうしているうちに、ルカの番になった。
 受付嬢達がせっせと書類をまとめる。
 忙しそうで、空いたカウンターから順に、利用者が対面する。

「次の方、どうぞー」
「はい。……はっ!?」

 ルカは呼ばれたので並ぼうとした。
 けれどそんなルカを押し出して、受付に並ぼうとする人が居た。
 横から割って入って来た冒険者のようで、ギラギラした顔をしている。
 一般的には美形なんだろうが、顔色からして、私利私欲が目的だった。

「レジェちゃん。どうよ、最近」
「……冒険者さん、順番守ってください」
「おいおい、釣れないこと言うなよなー。俺にはよ、ジョーグって名前があるんだぜ? いい加減、名前で呼んでくれよな。まっ、レジェちゃんにならどんな呼び方でも構わねぇけどさ」

 完全に口説くために並んでいる冒険者だった。
 ルカは肩をぶつけられ、顔色を変える。
 流石に順番を抜かされるのは許せない。

「今日、これで何度目? 絡まれるの」

 ルカは別に忍耐力が無い訳じゃない。むしろある方だ。
 けれどこうも続くと流石にイラっとする。
 今ならまだ間に合う。男性冒険者を睨み付けると、ジョーグと言う名前を覚えた。

「でさ、この後時間ある? 奢るからさ、俺とデートしない?」
「いえ、デートはしません。それより、他の利用者の方が待っているので、最後尾に並び直していただけますか?」
「いやいや、他に誰が並んでるんだよ?」

 ジョーグのアプローチを的確に捌く受付嬢。
 普段から付きまとわれている証拠で、かなり慣れている。
 最小限の言葉と仕草だけでやり取りを続ける中、ジョーグは振り返る。
 そこにはルカだけが立っていて、他には誰も居ない。それが腑に落ちないのか、ジョーグはルカを睨んだ。

「……先程から並ばれてましたよね?」
「うん、私はね」

 受付嬢の女性に声を掛けられたルカは、コクリと頷き返した。
 先程までは、ルカの他にも並んでいた利用者は居た。
 けれどジョーグが割り込んだ瞬間、みんな関わり合いになりたくないのか、その場から離れた。
 そのせいか、受付カウンターに並んでいるのはルカだけで、目の敵にされてしまう。

「はぁー……ガキがよ、空気読めよな」
「ん?」
「いやいや、ごめんね。俺、順番を守らなかったみたいだね。気が付かなかったんだ、許してくれるかい?」

 ジョーグは本音を吐露した。小さな声で周囲には聞こえない。
 ルカにはバッチリ聞こえてしまうが、まるで響きはしない。
 不満の一つくらいは聞き流すも、その後がウザかった。
 突然好青年の素振りを見せると、周囲を騙し、好感度を高めようと画策する。

「許してもいいけど、順番は守って貰うよ」
「……そうか、許してくれるんだね。それじゃあ子供がこんな物騒な場所にいたらいけないから、早く帰るんだ。いいね」

 許す・許さないなら、正直許してもいい。
 代わりに並び直して貰うことにした。
 けれどジョーグは顔色を変え、眉間に皺を寄せると、ギラギラした表情を崩す。

 周囲には真面目な青年を演じているようだが、滲み出る思惑がルカには伝わる。
 ルカのことを面倒な子供……否、それ以下に捉えている。
 完全に見下した姿勢を取ると、ルカを冒険者ギルドから追い出そうとした。

「いや、帰らないよ? 私にも用があるんだ」
「しつこいね、君。子供はさっさと帰れよ」
「帰らないよ。あの、私の番でいいよね?」

 如何して帰らないといけないのか。
 もちろんルカはそんな提案を飲む気はない。
 ジョーグを無視し、受付嬢の女性に声を掛けた。

「はい! どうぞ、こちらで対応させていただきます」
「こちらって、カウンターの奥?」
「はい。どうぞ、こちらに」

 レジェと呼ばれた受付嬢は、ルカと顔色を合わせた。
 何となく対処法を見つけると、ルカのことを誘導する。
 優先的に対応してくれるようで、他の受付嬢の配慮もあってか、カウンターの奥に通してくれるらしい。

「お、おい、ちょっと待てよ!」
「はっ?」

 ジョーグはルカの腕を掴んだ。
 カウンターの奥に招かれたルカを引き止めたのだ。
 面倒な相手に目を付けられたな。ルカは直感的に悟り、大きな溜息を吐いた。

「今は俺がレジェさんと話してたんだぞ。それを邪魔しやがって」
「……はぁ」
「な、なんだ、溜息とか、この俺を前にしてよくできたな。言っておくが、俺はB級冒険者。それにこの町で権威のある商人の息子なんだぞ。逆らってみろ、お前なんか即刻この島から退去……えっ?」

 明らかに横暴な発言だった。親の権力を蓑にしている。
 きっと今までだってそうだったに違いない。
 都合の悪い相手は親の権力や権威を使い、脅してきたに決まっている。

 そのせいかいつしか周りはジョーグを嫌うようになった。
 関わり合いにならないように離れるようになった。
 余計に心の枷を外し、傍若無人に振舞って来た。

 そんなしょうもない魂胆は、ルカには通用しない。
 むしろルカの怒りを買ってしまうだけ。
 そんなこと、初対面のジョーグが知る由も無い。

「さっきからうるさいよ。できるものならやってみればいい」
「えっ、いや、その……」

 ルカは少しだけ邪悪な殺気を放った。
 するとジョーグは震えが止まらなくなり、足がガクガクなっている。
 顔から血の気が引くと、今にも息が詰まりそうで、怯え慄いていた。

「今日一日で三回も絡まれたんだ。流石に納得が行かないよ」
「な、なんだ、なに言ってんだ、お前……」

 ジョーグは一歩ずつ後退りをする。
 汗がポタポタと床を這っていた。
 ルカの顔を直視することはできないらしく、目のやり場を探していた。

「文句があるならハッキリ言って欲しいな。それとも私に殺されたいの?」

 ルカはもちろん手を抜いてはいる。上手く制御している。
 その上で感情をわざとのように荒ぶらせると、ジョーグに詰め寄る。
 自分よりも背の低いルカに距離を詰められると、その拍子に膝が折れた。

「……うっ」

 ジョーグは腰を抜かしてしまう。
 今にも漏らしてしまいそうな恐怖に苛まれる。
 舌唇を噛むと、泣きべそを掻いて、ルカの殺意をその身に受けた。
 鳥肌が止まらなくなると、心臓の鼓動が悲鳴を上げ、吐瀉物を吐きそうになっていた。
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