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フェンリル編
685.フェンリルの傷痕
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フェンリルの傍に駆け寄ったルカ。
一体何故倒れてしまったのか。
あれだけの魔法を行使すれば、その可能性も充分あるものの、ルカは別な理由な気がしてならない。
「大丈夫? なにかあった?」
フェンリルの傍らにしゃがみ込んだルカ。
一体何が起きたのか、ジッと観察する。
「ガルル……」
フェンリルは弱々しく喉を鳴らす。
瞼を閉じ、視界を完全に〇にしている。
よほど疲弊しているのか、フェンリルは体を震わせている。
「酷く弱っているね」
ルカはフェンリルの体調を見た。
ソッと指で撫でると、毛並みが異常に悪い。
ボロボロになっており、指を通るだけで簡単に千切れて抜けてしまう。
「毛並みがこんなに……」
千切れた毛からは栄養が感じられなかった。
魔力もかなり気薄で、千切れ方も雑。
何より嫌だったのは、少しぬめりがあること。
湿っているのは雨に打たれたからか、それとも別の理由があるのか、どちらせよ酷い。
「やっぱり人間の仕業、だよね?」
フェンリルのこれだけ体調が悪化しているのはおかしな話……とは言い難い。
今、赤壱島には密猟目的の冒険者も多く居る。
その性もあり、フェンリルが狙われた可能性はある。幻の魔物、幻獣。喉から手が出る程欲しいと思うのは、人間の欲求的に難しくはない。
「あー……まぁ、よくある犠牲だ」
千年前には全然起きていた話だ。
珍しくも何ともなく、ルカは頬を指で撫でた。
人間のような、大き過ぎる欲に加えて、無駄に肥大した知識。
それらを見たそうと躍起になり、自然を破壊した。
フェンリルもその犠牲の一つに過ぎない。
「仕方ないんだけどね、人間は汚い生き物なんだから」
弱り果て、今にも息絶えてしまいそうなフェンリルを目の前にして吐露するルカ。
空気を全くと言っていい程読んでいない。
フェンリルの耳に届いていれば、噛み付かれていただろうが、そんな元気も無かった。
「けれど、ここで見殺しにするのは惜しいよね。なにより、私が加害者みたいだ」
とは言え、フェンリルを放っておくことはできなかった。
それもその筈、ここで見殺しにすれば、貴重な幻獣を一匹殺したことになる。
ルカは絶対に加害者にはなりたくない。
魔法使いには珍しい人間性を見せると、早速治療することにした。
「しょうがない。治してあげよう」
ルカはフェンリルの怪我の原因を探る。
全体を治すと、色々と面倒が生じる。
幻獣は大抵そうで、直接の原因を見つけることにした。
「毛並みが悪い……後、コレは」
フェンリルの蒼白色の毛の一部が赤く変色している。
恐らくはフェンリルの体液(血液)だろう。
丁度右腹部の辺りに付いていて、毛の一部を開いて傷口を見つけた。
「うわぁ、コレはやってるね」
長い毛を掻き分けた奥。
ルカの目に留まったのは赤だった。
「凄く深い傷跡だ。よくここまで持ったよ」
見つけたのは深い深い傷跡。
言葉にも出したくないような抉れ具合で、大量の血と肉が露出している。
ここまでよく耐えて来た。ルカはフェンリルの我慢強さに圧倒されると、気になるものを見つけた。
「コレは氷? ……そうか。自分で傷口を凍結……うわぁ」
ルカは言葉を失うと、絶句してしまった。
それもその筈、ようやく見つけた傷口は深いだけでは無い。
大量の体液と魔力を失っていて、ボロボロに腐敗していた。
本当ならば、ウジ虫が湧いていてもおかしくはない。
けれどそうなっていないのは、フェンリルが傷口全体を凍らせているから。
つまりは自らが凍傷を起こし、傷口の悪化を防いでいたのだ。
何とも痛々しくて、ルカは口元を押さえた。
「面白いけど……私はごめんだね」
生きるためには仕方のない行為だ。
ルカのように完璧に程近い回復魔術・魔法は普通使えない。
世界でも類を見ない。その点だけは、ルカも納得していた。
「まっ、私がいるから治すけどね。《パーフェクトヒール》」
ルカが居る以上、治らない訳がない。
圧倒的な自身で《パーフェクトヒール》を発動。
言わずもがな、最強の完全治癒魔法だ。
両手を傷口に合わせる。
ゆっくりと魔法の息吹がフェンリルを包む。
傷口から体内に送り込まれると、まずは凍った部分を解かした。
「ガルル……」
フェンリルは喉を震わした。
神経経路を伝って、フェンリルに痛みを与えている。
悪いけれど我慢して貰う。ルカはフェンリルの反応に興味を示さない。
「これで傷口は塞がるとして、フェンリルがなんて言い出すかな?」
このまま援けてしまえば、フェンリルは再び牙を剥くことだろう。
助けたとはいえ、そんなもの、フェンリルが頼んだ訳ではない。
自分をこんな目に遭わせた人間に対して憎悪の感情を剥き出しにして、回復した所で噛み殺す算段もある。ルカは無駄なことを考えてしまうが、それでも治療を続けた。
「まぁいいや。そんなのは助けてから。私が治癒するんだよ、死んで貰ったら困るからね」
ルカは絶対に加害者になりたくない。
その一心でフェンリルの治療に専念する。
虹色の眩しい魔法が自然の揺らぎに呼応すると、フェンリルの傷を癒そうと精霊達も手を貸してくれた。
一体何故倒れてしまったのか。
あれだけの魔法を行使すれば、その可能性も充分あるものの、ルカは別な理由な気がしてならない。
「大丈夫? なにかあった?」
フェンリルの傍らにしゃがみ込んだルカ。
一体何が起きたのか、ジッと観察する。
「ガルル……」
フェンリルは弱々しく喉を鳴らす。
瞼を閉じ、視界を完全に〇にしている。
よほど疲弊しているのか、フェンリルは体を震わせている。
「酷く弱っているね」
ルカはフェンリルの体調を見た。
ソッと指で撫でると、毛並みが異常に悪い。
ボロボロになっており、指を通るだけで簡単に千切れて抜けてしまう。
「毛並みがこんなに……」
千切れた毛からは栄養が感じられなかった。
魔力もかなり気薄で、千切れ方も雑。
何より嫌だったのは、少しぬめりがあること。
湿っているのは雨に打たれたからか、それとも別の理由があるのか、どちらせよ酷い。
「やっぱり人間の仕業、だよね?」
フェンリルのこれだけ体調が悪化しているのはおかしな話……とは言い難い。
今、赤壱島には密猟目的の冒険者も多く居る。
その性もあり、フェンリルが狙われた可能性はある。幻の魔物、幻獣。喉から手が出る程欲しいと思うのは、人間の欲求的に難しくはない。
「あー……まぁ、よくある犠牲だ」
千年前には全然起きていた話だ。
珍しくも何ともなく、ルカは頬を指で撫でた。
人間のような、大き過ぎる欲に加えて、無駄に肥大した知識。
それらを見たそうと躍起になり、自然を破壊した。
フェンリルもその犠牲の一つに過ぎない。
「仕方ないんだけどね、人間は汚い生き物なんだから」
弱り果て、今にも息絶えてしまいそうなフェンリルを目の前にして吐露するルカ。
空気を全くと言っていい程読んでいない。
フェンリルの耳に届いていれば、噛み付かれていただろうが、そんな元気も無かった。
「けれど、ここで見殺しにするのは惜しいよね。なにより、私が加害者みたいだ」
とは言え、フェンリルを放っておくことはできなかった。
それもその筈、ここで見殺しにすれば、貴重な幻獣を一匹殺したことになる。
ルカは絶対に加害者にはなりたくない。
魔法使いには珍しい人間性を見せると、早速治療することにした。
「しょうがない。治してあげよう」
ルカはフェンリルの怪我の原因を探る。
全体を治すと、色々と面倒が生じる。
幻獣は大抵そうで、直接の原因を見つけることにした。
「毛並みが悪い……後、コレは」
フェンリルの蒼白色の毛の一部が赤く変色している。
恐らくはフェンリルの体液(血液)だろう。
丁度右腹部の辺りに付いていて、毛の一部を開いて傷口を見つけた。
「うわぁ、コレはやってるね」
長い毛を掻き分けた奥。
ルカの目に留まったのは赤だった。
「凄く深い傷跡だ。よくここまで持ったよ」
見つけたのは深い深い傷跡。
言葉にも出したくないような抉れ具合で、大量の血と肉が露出している。
ここまでよく耐えて来た。ルカはフェンリルの我慢強さに圧倒されると、気になるものを見つけた。
「コレは氷? ……そうか。自分で傷口を凍結……うわぁ」
ルカは言葉を失うと、絶句してしまった。
それもその筈、ようやく見つけた傷口は深いだけでは無い。
大量の体液と魔力を失っていて、ボロボロに腐敗していた。
本当ならば、ウジ虫が湧いていてもおかしくはない。
けれどそうなっていないのは、フェンリルが傷口全体を凍らせているから。
つまりは自らが凍傷を起こし、傷口の悪化を防いでいたのだ。
何とも痛々しくて、ルカは口元を押さえた。
「面白いけど……私はごめんだね」
生きるためには仕方のない行為だ。
ルカのように完璧に程近い回復魔術・魔法は普通使えない。
世界でも類を見ない。その点だけは、ルカも納得していた。
「まっ、私がいるから治すけどね。《パーフェクトヒール》」
ルカが居る以上、治らない訳がない。
圧倒的な自身で《パーフェクトヒール》を発動。
言わずもがな、最強の完全治癒魔法だ。
両手を傷口に合わせる。
ゆっくりと魔法の息吹がフェンリルを包む。
傷口から体内に送り込まれると、まずは凍った部分を解かした。
「ガルル……」
フェンリルは喉を震わした。
神経経路を伝って、フェンリルに痛みを与えている。
悪いけれど我慢して貰う。ルカはフェンリルの反応に興味を示さない。
「これで傷口は塞がるとして、フェンリルがなんて言い出すかな?」
このまま援けてしまえば、フェンリルは再び牙を剥くことだろう。
助けたとはいえ、そんなもの、フェンリルが頼んだ訳ではない。
自分をこんな目に遭わせた人間に対して憎悪の感情を剥き出しにして、回復した所で噛み殺す算段もある。ルカは無駄なことを考えてしまうが、それでも治療を続けた。
「まぁいいや。そんなのは助けてから。私が治癒するんだよ、死んで貰ったら困るからね」
ルカは絶対に加害者になりたくない。
その一心でフェンリルの治療に専念する。
虹色の眩しい魔法が自然の揺らぎに呼応すると、フェンリルの傷を癒そうと精霊達も手を貸してくれた。
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