1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

696.フェンリルを連れて

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「えっ、本当に行くの?」
「ハイ」

 フェンリルは引く気が全く無かった。
 突然町に付いて来ると言われても難しい。
 何せ相手はフェンリルだ。町に付いて来るにしても……だ。

「フェンリル、その姿だと町には入れないよ?」
「では、少し小さくします」
「えっ?」

 突然フェンリルの体が小さくなる。
 とは言え大きいことには変わりない。
 わざわざ魔法を使って体の大きさを変化させると、ルカは唖然とした。

「本当に付いて来たいんだね」
「ハイ。コノメデミキワメタイノデス、コノシマノニンゲンノシンリヲ」

 フェンリルの目はキマっていた。
 鋭くルカのことを見つめると、想いを飛ばす。
 この島の人間がどれ程のものなのか、深層心理を測りたい。
 だからこそここまで一歩も引く気が無かった。ルカはその想いを一応は汲む。

「分かった。それじゃあ付いて来て」
「アリガトウゴザイマス」

 フェンリルはペコリと頭を下げた。
 幻獣としての威厳が幻想に消える。
 そんな儚さを感じ取る中、ルカは忘れる前に亜空間に腕を突っ込む。

「そうだ、フェンリル。町に行くなら、コレを付けて」

 ルカが取り出したのは蒼いリボンだった。
 何処から如何見ても普通の蒼いリボン。
 髪に付ける用で、ルカが使うことは無いのだが、一応軽いので亜空間に放り込んでいたものだった。

「ナンデス、ソレハ?」

 フェンリルは突然のことに警戒する。
 後退するフェンリルは、怪しい物なのではないかと睨む。

「ただの髪飾りだよ?」
「……ナゼ、ソノヨウナモノガヒツヨウナノデス?」

 当然の疑問だった。
 幻獣であるフェンリルに、人間用の髪飾りが必要な訳がない。
 怪しむ中、ルカは真っ当に答えた。

「単にフェンリルの危険性を無くすためだよ」
「ハイ?」

 フェンリルは気が付いていないのだろうか?
 否、そんな筈が無い。今、ルカの目の前に居る個体は相当頭がいい。
 人慣れもしている筈で、だからこそ冷静に佇めている。

「野生のフェンリルが突然現れたらみんな驚いてしまうよ」

 町中にフェンリルが現れる=パニックに陥る。
 どんな余計な式を加えなくても、一瞬で導き出される答え。
 フェンリルは普通に大きい。巨大なオオカミが目の前に現れればパニックになる。

「ましてや“契約”も結んでいないんだ。下手に暴れられても困るよ」

 フェンリルは誰のものでもない。
 野生のモンスターであり、傍から見れば凶悪狂暴。
 何をしでかすか分からない、未知のオオカミが町中を徘徊しているのと同じことだった。

 契約の一つでも結んで居れば当然話は変わる。
 魔法や魔術による拘束性が強まれば、危険度も大きく下がる。
 そう伝えると、フェンリルはまさかの発言をした。

「デハ、ケイヤクヲスルノガイイノデハナイデスカ?」

 フェンリルがバカみたいなことを言った。
 確かにルカは魔法使いでもある。
 それでも、幻獣種であるフェンリルと、容易く契約なんてできる訳がない。

「それはしないよ」

 残念ながら、ルカは提案を拒否した。
 もちろんおかしな話ではない。
 単にルカはフェンリルと契約を結ぶ気はない。

「ドウシテデスカ?」
「寧ろ、魔力を介した契約なんて、拘束性が強いだけで、きっと嫌いになるよ」

 魔力を介した契約は拘束性が強い。
 強引に力で引き千切り、契約を破棄することもできるが、ルカの場合はそれが難しい。
 ルカの魔法や魔術を強引に破壊するには、“発動前”しかほぼ不可能だ。
 一度契約を結べば、フェンリルにとって、本当の自由は無くなる。

「それになにより、フェンリルが私の使い魔は嫌だよね?」

 ルカはフェンリルを使い魔にする気が無かった。
 当然、味方でいてくれれば心強い。
 けれど気高く孤高の幻獣フェンリルが、一人間であるルカに従うとは思えない。
 約束を超えた契約など、苦にしかならない。

「だから代わりにコレを付けるんだよ」
「ハイ?」

 ルカは蒼いリボンを持って、フェンリルの前にしゃがみ込む。
 それから何をするのかと思えば、別におかしな真似はしない。
 優しく丁寧に、蒼いリボンで飾った。

「よし、これでいいね」

 ルカは満足そうに笑みを浮かべた。
 フェンリルは不思議と首から垂れる蒼いリボンに違和感を覚える。

「コレハイッタイ?」
「首輪は嫌だろうからね。軽くリボンでも結んでおけば、誰かの使い魔だって分かる筈だ

 ルカはリボンをフェンリルに巻いた。
 本当は首輪が最適解だろうが、フェンリルは嫌がると思った。
 だからすぐに解けて痛くないリボンを巻き付けると、簡易的ではあるが、使い魔またはペットのようになる。

「メジルシデスカ?」
「そう、客観的なね。これでひとまず野生の個体では無いようにしたけど……うん」

 あくまでも蒼いリボンは目印だ。別にルカの使い魔では無い。
 けれどフェンリルの大きさは自体は変わっていない。こんな大きなオオカミを連れ歩いて大丈夫なのか、ルカは心配する。
 とは言え口には出さないことにした。

「ナニカ?」
「いや、別に。それじゃあ町に戻ろうか」

 ルカはフェンリルを連れて赤斜に戻った。
 気に留めないことにしたが、やはり新鮮だ。
 ルカの後ろをフェンリルはユックリ付いて来ると、警戒心もそこそこに連れ歩くのだった。
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