1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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フェンリル編

697.当然視線を奪っちゃう

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「違和感が凄いね」
「ナニガデス?」

 ルカはフェンリルを連れて山を下りた。
 森を抜けると、もう目の前に赤斜がある。
 いよいよ町に入るのだが、違和感が凄い。
 ルカは隣から感じる、気高い魔力にそう思うしかない。

「二十メートルあった巨体が、今は……」

 フェンリルは自身の体を自由自在に変化できる。
 もちろん大きさだけではない。
 のだが、今は一般的なオオカミと大差ないサイズにまで体を縮めていた。
 それが如何にもシックリ来ない。違和感でしかない。

「シカタガアリマセンヨ。イキマショウ」
「板に付いてるね」

 もう少し砕けた敬語でもいいのだが。ルカはそう思う。
 けれど板に付いてきた、つまりは慣れてしまったのだろうか?
 シッカリとした敬語で会話を淡々と進めると、ルカは再び赤斜に戻った。

「……ん?」
「おい、なんだあれ?」
「オオカミ……か? けど首になんか巻いてるぞ」

 案の定、凄く目立っていた。
 それもその筈で、オオカミを連れ歩く人間はそう居ない。

 牛や豚、ニワトリと言った家畜は分かる。もちろん馬も往来する。
 ましてや竜だって、竜車と言う立派な乗り物が存在していた。
 けれどオオカミは無い。オオカミを連れ歩く人間は居ない。

「まぁ、こうなるよね」

 とんでもなく目立っていた。
 道行く人達の視線を一瞬にして集める。
 無事に冒険者ギルドまで辿り着けるか如何か。
 心配が募る中、早速絡まれた。

「ちょっと君、止まって」
「ん?」

 ルカは男性に止められた。
 今朝方止められた男性と全く同じ。
 丸一日中、この場所で姿を隠し、監視を続けていたのだろうか。
 中々の胆力に、ルカは感心する。

「今朝の」
「君、また止めて済まないね」
「いや、構わないけど」

 男性もこれが仕事だ。
 怪しい人間を取り締まる。それが業務内容だ。
 だからルカは理解しているが、まさか一日に二回も止められるとは、予想もしていなかった。

「手短にしようか」
「助かるよ」
「……隣に連れているのは、君の使い魔か何かかな?」

 手短に済ませてくれるのは助かる。
 そう思って話を聞くと、男性は迷った様子だ。
 それもそうだと割り切ると、フェンリルのことをルカの使い魔だと仮定した。

「ワフッ!」

 フェンリルは犬の鳴き真似をした。
 けれど何処となく迫力が違う。
 遠吠えのように、後ろが伸びると、オオカミらしくなった。

「見た所、オオカミのようだけど」
「ですね」
「ですね……君は魔術師の卵だったね。使い魔契約をしているのなら、魔術陣を介して呼び出すとかじゃないかな?」

 男性はなかなか詳しかった。
 伊達に人を見続けていない。
 その説明は大まかに当たっているが、今回の場合は無理。
 何せ、私はフェンリルと契約していないのだ。

「ただ、この個体は、魔法陣を介した呼び出しが嫌いでね。付いて来てしまったんだよ」
「ワフッ!」

 ルカの説明には専門的に見れば信憑性が高い。
 モンスター、昔で言う魔物には、当然個体差がある。
 個体の性格によっては、契約の際に展開される魔法陣を嫌う場合がある。
 それを踏まえれば、代替の魔術陣を嫌う個体が居ても、無理はない。

 とは言え、そんな事情を知る人間は少ない。
 ましてや魔術師でも無い男性だ。
 あくまで業務的なやり取りではあったが、フェンリルが一吠えしてくれたおかげで助かる。

「今朝は連れていなかったよね? もしかして、さっき契約したのかな?」
「まぁ、そんな所かな」

 当たっているようで、当たっては居ない。
 ルカは適当に誤魔化すと、納得して貰えた。

「なるほどね。それで首輪代わりのリボンか」
「よく見てるね」
「仕事柄ね。危険は無いのかい?」

 男性はなかなかに視野が広かった。
 着眼点が見事で、目立たないようにしてある蒼いリボンを指さす。
 ルカは感心するも、男性は割り切ってしまい、フェンリルの危険性を問う。

「危険が全く無いとは言えない。けれどこの子は賢いからね。お手」
「ワ……ワフッ」

 ルカはフェンリルにアドリブを要求した。
 犬の芸を試しにさせてみると、凄く嫌そう。
 けれど仕方が無いと思いやってみせると、一発で成功した。

「おお、オオカミを見事に調教しているね」
「こんな感じかな。まぁ、なにかあれば、その時は……ねっ」

 ルカは指先から試しに炎を出してみた。
 小さな炎だが、明らかに普通のものとは違う。
 ルカの凄まじい練度で込められた魔術は、それだけで目を奪う。

「わ、分かったよ。君を信じよう」
「ありがとう、それじゃあ私達は行くね」
「うん。くれぐれも、他の人を傷付けないように」
「善処するよ」

 ルカは男性のことを威圧した……つもりはなかった。
 けれど何か勘違いをしてくれたおかげもあり、速やかに事情聴取は終わる。
 ルカ達は男性から解放されると、ようやく町の中に溶ける。
 人の波がルカとフェンリルを避け、視線を釘付けにさせた。

「目立っているね」
「ハイ」
「さっきは悪かったね。緊急だったから」
「シカタガアリマセンヨ、シカタガ」

 フェンリルは凄く不服そうだ。
 ルカは悪いことをしたと思った。
 けれどあの場は最善の手を尽くして切り抜けたと思う。

「このまま冒険者ギルドまで、無事に辿り着ければいいけど」

 ルカは珍しく弱気だった。
 正直、ここまで人の目を集めると、後が面倒になる。
 辿り付けはするだろうが、それはそれで騒ぎになりそう。
 ルカはそう思うと、フェンリルと共に、足早に動いた。
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