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フェンリル編
725.氷結の獣
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「アンタ、そこでなにをしているんだ?」
突如として目の前に現れた女性。
その存在感に目を離せないゴード。
一体何故こんな所に見知らぬ女性が居るのか、本音の疑問が飛び出す。
「失礼致しました。私は、ルカの命により参りました、ヒョウガと言います」
胸元に手を当てて、丁寧に会釈をする女性。
その名はヒョウガで、まるで聞いたことがない。
完全に初対面であり、無名。おまけに何者かも真偽を測れない。
「ルカが?」
「はい。助っ人と言う形で遣わされました」
如何やらルカの言っていた助っ人はヒョウガのことだったらしい。
けれどゴードはいかんせん納得出来ない。
それさえ信じる切ることができないのは、ルカの言っていた実力者とは思えないからだ。
「コイツが、ルカの言っていた助っ人か……」
ゴードはギルドマスターとしてではなく、冒険者として観察する。
ルカが遣わしたと言うことは、よほど実力に覚えのある存在。
とは言え、魔術師のようには見えない。ましてや冒険者とも思えない。
何とも不思議な獣人で、蒼白色の毛並みが美しく、夜の中でも照らされる。
「おい、アンタ」
「はい?」
ゴードは真相を確かめるべく声を掛けた。
ここからの仕事は殺意の高まった本気の殺し合い。
それにさえ発展しかねない緊張感が高まる現場だ。
生半可な覚悟と実力では、残念だが協力は遠慮させて貰う。
「アンタ、ルカの寄こした助っ人らしいな」
「一応はそうですね」
「一応だと?」
言動が妙だった。
何故かたどたどしく、所々に違和感がある。
その正体が何かは判別できず、この際如何だっていい。
問題は、ヒョウガの実力。その一点に至る。
「悪いが、アンタのことを俺は信用できない」
「そうですか」
「嫌ってくれて構わない。俺も一応冒険者の端くれだ。だからこそ、アンタから感じられる気迫が伝わって来ないんだ」
ゴードはヒョウガのことを信用できない。
それもその筈、実力が未知数だ。
何よりも気迫が感じられない。推し量るための材料が不足していて、ゴードとしても審査できない。
「気迫ですか?」
「そうだ。ここから先は死が渦巻いている。ルカから話は聞いていると思うが、密猟者の相手は人間で冒険者だ。一般人よりも死線を潜っているし、金に飢えている分、実力もあるだろうな」
相手は一応冒険者だ。当たり前だが、一般市民よりも強い。
それだけ死線を超えている。その幅には大小があるだろうが、少なからず命を張っている。
自分の身が危ないとなれば、本気になるだろう。それこそ共闘も視野に入れる。
これだけの精鋭が集まっていても、死に物狂いな兵隊達を相手取るのは大変なことで、最悪死傷者が出る可能性さえ目の前に落ちていた。
「そんな奴らを相手にしないと行けねぇ。極力生け捕りでだ。アイツらも誑かされたんだ、回心の余地はあるだろ」
「改心の余地、ですか……」
ゴードがそう発した瞬間、空気がピリ付いた。
極寒の吹雪の中にいるような冷徹さ。
全身が凍えて壊死してしまいそうになる程、凄まじい殺気が放たれる。
「お、おい、なんだ、この殺気は!」
ゴードでさえ唇が震えていた。
それでも冷静に振舞えるのは、前例があるから。
ルカに比べれば大したことは無い。それでも、ルカが異常だからと割り切ってしまえば怖くもない。
「チッ……俺を舐めるなよ!」
ゴードは一歩も退かない。
寧ろ前に出ると、自然と拳を振りかざした。
「なっ、体が勝手に」
「《ペークスヒェリ》」
ゴードが拳を繰り出した。
それに対して、ヒョウガは素早く対応する。
目の奥に、いや、背後に巨大なオオカミのシルエットが浮かび上がると、突き出された拳が受け止められた。
「嘘だろ、俺の拳を……」
「突然なんです? なにか気に入らないことでもありましたか?」
涼しい顔をしているヒョウガを前に、言葉を失った。
圧倒的な殺気を前に、ゴードの足が竦む。
何せヒョウガの手のひらは凍り付いていたからだ。
「いや、悪かったな。突然手を出しちまった」
「いえ」
「だがな、これで分かったぜ。アンタの実力は大したものだな」
ゴードはヒョウガの実力を知った。
確かな実力があるのは、あの一瞬で伝わる。
ただし、並外れた力ではないこともまた確かにそこにある。
「悪いが、その力を貸して欲しい」
「はい、分かりました」
「……それはアンタの言葉か?」
「答える義務はありません」
明らかに普通ではないたどたどしい言葉。
まるで誰かに言わされているような、ゴードにはそう見える。
「少なくとも、今の私は助っ人に過ぎません」
「その口振り、なにかあるな」
「仮になにであれ、詮索は無用です」
原の奥底に含みを抱えている。
流石にゴードにはその理由を見通す目はない。
経験則が通用しない相手、少なくともそれだけは分かる。
「まぁ、なんであれ頼りになるな」
ゴード自身、詮索をこれ以上する気はない。
それよりも重要なのは、助っ人があまりにも強いこと。
心強い味方を手に入れたと確信したゴードは、いざ決戦の地へと向かった。
突如として目の前に現れた女性。
その存在感に目を離せないゴード。
一体何故こんな所に見知らぬ女性が居るのか、本音の疑問が飛び出す。
「失礼致しました。私は、ルカの命により参りました、ヒョウガと言います」
胸元に手を当てて、丁寧に会釈をする女性。
その名はヒョウガで、まるで聞いたことがない。
完全に初対面であり、無名。おまけに何者かも真偽を測れない。
「ルカが?」
「はい。助っ人と言う形で遣わされました」
如何やらルカの言っていた助っ人はヒョウガのことだったらしい。
けれどゴードはいかんせん納得出来ない。
それさえ信じる切ることができないのは、ルカの言っていた実力者とは思えないからだ。
「コイツが、ルカの言っていた助っ人か……」
ゴードはギルドマスターとしてではなく、冒険者として観察する。
ルカが遣わしたと言うことは、よほど実力に覚えのある存在。
とは言え、魔術師のようには見えない。ましてや冒険者とも思えない。
何とも不思議な獣人で、蒼白色の毛並みが美しく、夜の中でも照らされる。
「おい、アンタ」
「はい?」
ゴードは真相を確かめるべく声を掛けた。
ここからの仕事は殺意の高まった本気の殺し合い。
それにさえ発展しかねない緊張感が高まる現場だ。
生半可な覚悟と実力では、残念だが協力は遠慮させて貰う。
「アンタ、ルカの寄こした助っ人らしいな」
「一応はそうですね」
「一応だと?」
言動が妙だった。
何故かたどたどしく、所々に違和感がある。
その正体が何かは判別できず、この際如何だっていい。
問題は、ヒョウガの実力。その一点に至る。
「悪いが、アンタのことを俺は信用できない」
「そうですか」
「嫌ってくれて構わない。俺も一応冒険者の端くれだ。だからこそ、アンタから感じられる気迫が伝わって来ないんだ」
ゴードはヒョウガのことを信用できない。
それもその筈、実力が未知数だ。
何よりも気迫が感じられない。推し量るための材料が不足していて、ゴードとしても審査できない。
「気迫ですか?」
「そうだ。ここから先は死が渦巻いている。ルカから話は聞いていると思うが、密猟者の相手は人間で冒険者だ。一般人よりも死線を潜っているし、金に飢えている分、実力もあるだろうな」
相手は一応冒険者だ。当たり前だが、一般市民よりも強い。
それだけ死線を超えている。その幅には大小があるだろうが、少なからず命を張っている。
自分の身が危ないとなれば、本気になるだろう。それこそ共闘も視野に入れる。
これだけの精鋭が集まっていても、死に物狂いな兵隊達を相手取るのは大変なことで、最悪死傷者が出る可能性さえ目の前に落ちていた。
「そんな奴らを相手にしないと行けねぇ。極力生け捕りでだ。アイツらも誑かされたんだ、回心の余地はあるだろ」
「改心の余地、ですか……」
ゴードがそう発した瞬間、空気がピリ付いた。
極寒の吹雪の中にいるような冷徹さ。
全身が凍えて壊死してしまいそうになる程、凄まじい殺気が放たれる。
「お、おい、なんだ、この殺気は!」
ゴードでさえ唇が震えていた。
それでも冷静に振舞えるのは、前例があるから。
ルカに比べれば大したことは無い。それでも、ルカが異常だからと割り切ってしまえば怖くもない。
「チッ……俺を舐めるなよ!」
ゴードは一歩も退かない。
寧ろ前に出ると、自然と拳を振りかざした。
「なっ、体が勝手に」
「《ペークスヒェリ》」
ゴードが拳を繰り出した。
それに対して、ヒョウガは素早く対応する。
目の奥に、いや、背後に巨大なオオカミのシルエットが浮かび上がると、突き出された拳が受け止められた。
「嘘だろ、俺の拳を……」
「突然なんです? なにか気に入らないことでもありましたか?」
涼しい顔をしているヒョウガを前に、言葉を失った。
圧倒的な殺気を前に、ゴードの足が竦む。
何せヒョウガの手のひらは凍り付いていたからだ。
「いや、悪かったな。突然手を出しちまった」
「いえ」
「だがな、これで分かったぜ。アンタの実力は大したものだな」
ゴードはヒョウガの実力を知った。
確かな実力があるのは、あの一瞬で伝わる。
ただし、並外れた力ではないこともまた確かにそこにある。
「悪いが、その力を貸して欲しい」
「はい、分かりました」
「……それはアンタの言葉か?」
「答える義務はありません」
明らかに普通ではないたどたどしい言葉。
まるで誰かに言わされているような、ゴードにはそう見える。
「少なくとも、今の私は助っ人に過ぎません」
「その口振り、なにかあるな」
「仮になにであれ、詮索は無用です」
原の奥底に含みを抱えている。
流石にゴードにはその理由を見通す目はない。
経験則が通用しない相手、少なくともそれだけは分かる。
「まぁ、なんであれ頼りになるな」
ゴード自身、詮索をこれ以上する気はない。
それよりも重要なのは、助っ人があまりにも強いこと。
心強い味方を手に入れたと確信したゴードは、いざ決戦の地へと向かった。
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