1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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炎の悪魔編

554.あの二人で大丈夫?

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 ルカ他意は森の中を走った。
 火柱が立ち、炎が揺らめいている。
 少しでも油断すれば死が待ち構えている環境だ。
 走るだけでも相当で、全身から汗を流す。

「おい!」
「ん?」

 そんなルカ達にディンネルは追い付く。
 一瞬振り返ると、ディンネルが何か言いたげだ。

「来たんだね、ディンネル」
「お前に言われるまでもない」

 ディンネルはルカの態度が気に食わない。
 素っ気ない態度を見せるも、心中では心配をしていた。

「本当にあの二人に任せて大丈夫だったのか?」

 ディンネルは追い付くや否や、真っ先に訊ねる。
 シルヴィアとダリア。二人は相性の悪い炎獣を相手にしている。
 十八番も封じられ、まともな武器もないまま、強敵との戦闘に参加していた。

「大丈夫でしょー。ねー」
「そうです。あの二人でしたら、問題は無い筈です。そうですよね、ルカさん」

 ライラックとブルースターは信じていた。
 けれど確証を取るために、ルカに訊ねた。
 するとルカの口からは予想だにしない回答が返る。

「さぁね」
「「さぁね?」」

 ライラックとブルースターは繰り返す。
 想った答えと違うので、一瞬頭の中が真っ白になった。

「ルカ、どういうことー?」
「そうですよ、ルカさん。確信が無いにもかかわらず、シルヴィさんとダリアさんを、ワイバーン型にぶつけたんですか?」
「説明してよー」

 ライラックとブルースターはルカに質問を浴びせた。
 もはや非難にも聞こえる始末だ。
 それでもルカは一切姿勢を崩さず、黙々と走る。

「おい、聞いているのか! お前は人を死に追いやっているんだぞ」

 ディンネルの言葉は重い。
 森長としての性のようで、勘定が剥き出しになる。
 それを受け、ルカも少しだけ考えを述べた。

「勝てるかどうかは知らないよ。だけど、二人の行動を尊重したい」
「尊重だと? ふざけているのか!」

 ディンネルはルカの真横に並ぶ。
 睨み付けて鋭い眼光を飛ばした。
 一瞬で威圧できるレベルなのだが、ルカには通用しない。
 むしろ、堂々と目を合わせた。

「勝てない勝負に担ぎ上げたのか! お前は、何処まで非情なんだ」
「非情? なんのことかな」
「とぼけるな! 人の気も知らないで物事を口にする。その態度、お前はどれだけ傲慢なのかと問いている」

 ディンネルはルカのことを軽蔑する。
 それは感情の波を振るわエ、魔力を放出する。
 《インフェルノ》が感化されると、より強い炎を噴き出させた。

「キレないでよ」
「キレていない。私はお前が嫌いなだけだ」

 完全にキレていた。キレ散らかしていた。
 ルカは如何しようも無いなと思う反面、勘定が《インフェルノ》を触発していることに気が付く。
 このままだと、先に森の方が焼け落ちる。
 そう感じ、ディンネルを宥めた。

「少し落ち着こうか」
「落ち着いていられるか。私は森長である前に人格を持った個だ。生き死にを充分承知している」

 ディンネルは今更なことを言った。
 もちろん並べたのには理由もある。
 ルカはそれに気が付いていたが、姿勢を砕くつもりはない。
 
「だから?」
「な、なんだ、その口振りは!」

 ディンネルは苛立つ。
 ルカへの信頼を一瞬にして崩壊させるような真似だ。
 けれどルカははっきりと言い切る。

「勝ち負けが全てになるようなら、私は行かせないよ。でもね、二人が率先して前出たんだ。信じて背中を押すのが私の選択だよ」
「そんなもの、責任を投げだしているだけだ」
「……ディンネルは凄いね」
「はっ?」

 ルカの言葉にライラックとブルースターも反応する。
 ソッと目を伏せると、ディンネルだけが声を上げた。
 意味が分かっていない様子で、何処まで突き進む“正しい正義”が空気を壊す。

「ディンネルみたいな、自己犠牲の塊みたいな人が、政治を担っていたら、また変わるんだろうけど」
「なにを言っている。自己犠牲なんて真似……」
「しなよね。でも、ディンネルは無意識の内にしているんだよ。だからあの二人で大丈夫なのか、得策なのかって心配してる」
「それのなにがおかしい!」
「それじゃあ言い切ろうか」

 これ以上言っても埒が明かない。
 ルカはそう思うと、冷めた目をして言い切る。

「個性を潰さないで欲しいな」

 そう言った瞬間、森を燃やす炎でさえ、冷たいと感じてしまう冷気に襲われる。
 ディンネルは無理やり黙らされた。
 脳内に直接情報を流し込まれたような違和感に震えると、ライラックとブルースターも影響を受けて黙ってしまう。

「わ、私は……」
「それにあの二人なら大丈夫だよ。だから行こうか」

 ルカはそう言い残し、先に森の奥を目指した。
 初めからルカはシルヴィアとダリアなら何とか出来ると知っていた。否、信じていた。
 そのせいもあってか、いつものように何も伝えていない。
 完全に一人回しでことを締めると、ディンネル達を置き去りにする。

「ルカ、お前は一体……」
「考えても仕方ないよー」
「そうですね。ルカさんは、私達とは一つ、いえ、二つ次元が違いますから」

 ライラックとブルースターにもこう言わせてしまう。
 そんなルカの背中がだんだん小さくなっていく。
 炎に燃える森の中、圧倒的な存在が、全てを置き去りにする光景に震えた。
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