1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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炎の悪魔編

574.《メモリアルハート》

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(ここは……)

 そこは深い深い闇の中。
 まるで深海のようで、光は一切届かない。
 そんな冷たくて心苦しくて、今にも息の詰まってしまいそうな空間を、ルカは一人泳いで……否、沈んでいた。

(ディンネルの闇、よっぽどだったのかな?)

 そこら中を埋め尽くす、ヘドロの様な闇。
 その正体は、ディンネル自身が抱える心の闇の集合体だ。
 心が許容できなかった残りが外に弾き出され、靄としてディンネル自身を飲み込もうとしていた。まさにその権化であり、ルカは流石に予想していなかった。

(酷いな……)

 ルカは怪訝な顔色を浮かべる。
 もちろんここに来る時点で分かっているべきだ。

(まさかこれだけの闇を抱えていたなんて……)

 正直、これだけの闇を持っているのは珍しい。
 もちろん千年前であれば、グチャグチャした殺戮にポカポカとした希望。研鑽する魔法の開拓など、様々な感情で満ち溢れ、より強い光と闇に出合ったことがある。

 けれどここは例外だ。
 今の時代、別角度からの闇が、ディンネルのことを蔑んでいる。
 タコの足のように吸盤が付いているのか、絡み取ったら絶対に逃がさない。
 余裕の無くなった心は闇に支配される一方で、その引き金を引いたのも、ディンネル自身だった。

(どうしてこんなことに……もっと深くまで見てみるか)

 ルカはディンネルの心の中を更に進んだ。
 潜航していくと、闇はドンドン広がっていく。
 まだ浅瀬だった筈が、いつの間にかルカ自身を飲み込んでしまいそうな勢いで広がる。

(何処まで続くんだろう)

 ディンネルの心の闇はあまりにも深かった。
 光の部分が一切見えない。
 灯りの一つでもあれば楽になるのにと思うが、そんなものを求めても、ここで魔法は使えない。

(魔法を使えばディンネルが……仕方ない。身を任せるか)

 ルカは魔法を一切使えない。ここで下手に魔法を使えば、ディンネルの体と精神に影響が出かねない。
 仕方が無いので、ルカは目を閉じて闇に飲み込まれる。
 すると体が沈んで行き、気が付けばかなり深い所まで来ていた。

(多分この先に根本が……あった!)

 スッと目を開けると、まだ闇が広がっている。
 感覚が狂わされていく中、ディンネルは心を保つ。
 普通の人間なら、他者の闇に心が飲み込まれかねない。

 それでもルカは余裕な態度を示した。
 落ちていくディンネルの心の中で、根本となっている物を探す。
 目の前に現れた巨大な球体。バリアのように何かを守っているのは、ここが心自体だからだろう。

(あった。この先に原因になっている物がある筈だ)

 ルカは闇のヘドロを乗り越え、球体の前にやって来た。
 眩い光を放ち、全力で闇に抗おうとしている。
 けれど光の勢力は均衡を破られてしまい、現状は劣勢。
 その中心部に存在する想いは何か、ルカは正体を探った。

(開いてくれるかな?)

 球体には入口らしきものは当然ない。
 丸いボール状に形成されていて、ルカはあまり良くないことをした。
 このまま何もせずに立ち尽くしていても、時間の無駄に終わるだけだ。

(あまり干渉はしたくないけれど、仕方が無いね。《メモリアルハート—開錠アンロック》!)

 ルカは球体に手のひらを合わせた。
 ピタッとくっつけると、心地の良い温もりを感じ取れる。

 同時に額も付け、球体に魔法を掛ける。
こちらから取る行動アクションはこれだけ、後はディンネルの心がルカの魔法を受け入れるだけだった。

(応えてくれるかな? おっ)

 ルカ自身は不安で仕方が無かった。
 なにせディンネルからの信頼はほぼほぼ〇。
 一度積み上げた信頼関係も、ルカの実力が簡単に壊してしまうと、積み木崩しの要領で、粉々になってもおかしくなかった。

 けれどディンネル心は素直だった。
 ルカの魔法を受け入れると、球体の中に入れてくれる。
 水飴の海に飛び込んだような不思議な感覚が、ルカ自身に電流を浴びせると、球体の中に景色を見せる。そこに広がるものは、ルカを瞬きさせた。

(これは……ディンネルの記憶?)

 球体の中に広がる景色。
 全てディンネルの記憶に関わるもので覆い尽くされており、ルカが知る由も無いことばかり。小さい頃、それこそ赤ちゃんの頃から現在に至るまで、経験してきた思い出が敷き詰められていた。

(これがディンネルの心の中。広がる景色は、思い出達かな……あれ?)

 ほとんどの思い出はとても綺麗なものだった。
 光に包まれ、楽しい記憶を呼び起こしてくれる。
 恐らく正常なもので、ディンネルの心を留めてくれた。

 けれど中には闇に包まれた記憶もある。
 恐らくは、これが闇の原因だ。
 徐々に黒ずんで行く記憶の中、ルカは苦い顔になる。

(なるほどね。この記憶を辿って行けば、心が闇に染まった原因が分かるかもしれないな)

 ルカは手のひらを触れた。
 するとルカの体が記憶の中に取り込まれていくのが、感覚を伝わって届いた。

(一体どんな記憶が原因なのかな?)

 ルカの意識がディンネルの記憶へと溶けていく。
 まるで記憶の一部として取り込まれるような感覚。
 もはや抗うことはできず、ただ流れるままに、ルカはディンネルの記憶の中に消えた。
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