1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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波状編

638.決闘を観て思うこと2

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「毎度~」

 ルカ達は商店街に立ち寄った。
 パンの焼けるいい香りがしたので、つい買い食いをしてしまった。

「あむっ。うん、柔らかくて美味しい―」

 ライラックが一口頬張る。
 大きな口を開けてパンを咥えると、パクリと千切った。
 口をモゴモゴ動かし、言葉を失わせる。

「いいのでしょうか? 買ったものをすぐに食べてしまって」
「そうですよね。いいんでしょうか?」
「いいと思うよ。あむっ」

 ブルースターとダリアは真面目だった。買い食いに賛成ではないらしい。
 けれどルカが促し掛けると少しだけ寛容的になれたのか、買ったパンに口を付ける。

「そう言えばルカ、生徒会に入るか決めた?」

 シルヴィアはブルースターやダリアを尻目に関係ない話をした。
 否、直接は関係ないものの、四年生になるに当たっては重要な話題だ。

「生徒会?」
「そうよ。誘われてたでしょ?」

 確かにルカはナナミから生徒会に入るよう勧誘を受けていた。
 けれどルカだけではない。ここには学年主席のブルースターもいる。
 成績だけ見ればライラックも相当で、真面目な性格のシルヴィアやダリアも勧誘対象だ。

「私は無いかな」
「無いって、入らないってこと?」
「うん。興味が無いからね」

 正直な言葉をルカは吐き出す。生徒会にはまるで興味が無い。むしろ入る方が面倒ごとになりそうで、自分には無縁の環境だと悟る。
 実際問題、生徒会は大変だ。常に在校生の模範であるべき。そんな思想さえ感じられる。
 もちろん絶対ではない。現生徒会長、ニイジマ・ナナミからはその空気がない。
 ただし、生徒会と言う立場において、“代表”の空気が立ち込めてはいた。

「私はあんな風になれる気がしないからね」
「あんな風にって?」
「自分を抑圧してでも、誰かのためになるなんて、無理な話だよ」

 根本の部分で違っていた。
 ルカにとって、今のニイジマ・ナナミは不気味だ。
 関わり合いにはなりたくない。純粋にそう思ってしまう。

「それはさておき、シルヴィアは決めたの?」
「私は、その……」

 ルカ自身は答えを決めていた。
 けれどシルヴィアに問い掛けると、顔色が悪くなる。
 表情に陰が落ちて、目線を逸らした。

「迷ってるんだね」
「迷うわよ、私だって」

 如何やら迷っているらしい。ルカには無い発想だ。
 シルヴィアにとって生徒会が大きな一歩なのは明白。
 その勇気が出ないのも、自分自身の実力を安い天秤に掛けた結果だ。

「生徒会に入るなんて、アルカード魔術学校の生徒会なんて、相当内申点に繋がるわ。官僚にだってなれる筈。だけど、私なんかに務まる気がしないのよ」
「なんだ、そんなことか」
「そんなことじゃないわよ! こっちは真剣に悩んでるのよ」

 ルカの予想通りのことで悩んでいた。
 あまりにもバカバカしくて、ルカは狩る愚痴を叩く。
 刺激してしまったようで、シルヴィアは怒ってしまった。

「私、ナナミ生徒会長の姿を見て、自分が情けないのよ」
「情けない?」
「あんなに強い人がいるんだから、私なんか必要無いように感じて」
「はぁ……つまらない」
「なっ!?」

 シルヴィアは実力の差に悩んでいた。
 生徒会メンバーは学内でもえりすぐり。
 今はメンバーが純粋に足りていないけれど、それだけ高い素質を求められている証拠だ。

 だからこそ、シルヴィアは悩んでしまう。
 迷いの坩堝に落ちてしまうと、自分を蔑む。
 単純な強さにだけ目を向けてしまい、忘れてしまっていることがあった。

「ナナミ生徒会長とシルヴィアは違うでしょ?」
「それはそうだけど……」
「考えるだけ、無駄だよ」

 自分と他人を比べても話にならない。
 自分は自分、他人は他人。同じようなことをしても追い付ける訳も肩を並べることもできない。それが個性であって、一つとして同じは無いのだ。
 故にシルヴィアの悩みを無駄だと一蹴してしまうルカだった。

「そんなに悩まなくてもいいと思うよ?」
「悩まなくてもって……そんな単純にはなれないわよ」
「だろうね」
「ルカ、揶揄ってるわよね?」

 ルカは決して揶揄ってはいない。同じ所でグルグル迷ってしまうシルヴィアが可愛い。
 ついちょっかいを掛けたくなるだけで、ルカにそれ以上の思惑は無い。

「揶揄っているつもりはないよ」
「いや、あるでしょ?」
「無いよ。それでシルヴィ、生徒会に入る気になった?」

 ルカは再度シルヴィアに訊ねてみる。
 未だに顔色は優れてはいない。
 言葉に迷ってしまうと、中途半端な返しになる。

「まだ分からないわよ。でも決めないとダメよね?」
「焦る必要は無いよ。ナナミ生徒会長もそこまで固執してない筈でしょ?」
「うっ……」

 結局の所、ナナミはルカ達に固執していない。
 つまりは誰でもいいのだ。
 その中でルカ達の素質が高いから声を掛けただけで、鵜呑みにする必要は無い。

「確かに、それを言ったらお終いよね?」
「お終いだよ。さてと、それじゃあ私はこっちだから」

 買い食いして帰っていると、十字路にやって来た。
 ここでルカとは別れることになる。
 丁度いいタイミングでパンを食べ切ると、ソッと手を挙げた。

「じゃねー」
「ルカさん、失礼します」
「本日はお疲れ様でした。また明日も頑張りましょうね」
「うん、また明日」

 ルカは踵を返して帰ろうとする。
 軽く手を振って別れると、家が一番遠いので振り返らずに帰ろうとした。

「ルカ」
「ん?」

 ルカはシルヴィアに呼び止められた。
 クルンと捻った体を、踵を返さずに戻す。

「まだ決めてないけど、気楽に考えてみるわ」
「そっかじゃあね」
「また明日。休まないでよね!」
「もちろんだよ」

 シルヴィアの顔色は暗い。けれど蔭はない。
 何かしら割り切れる部分があったのか、少しだけ笑みを浮かべている。
 その顔色を窺えただけで充分。ルカも優しく笑みを返すと、帰り道を歩いた。
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