659 / 733
フェンリル編
655.逃げ惑う獣
しおりを挟む
深く、それで居て静かな夜。
細かな雨が降り頻る。
そんな中、多くの男性達は森の中に居た。
「おい、そっち行ったぞ」
「分かってる。けど、アイツどれだけ逃げるんだ?」
男性達はあるモンスターを追っていた。
否、アレに対してそのような名前は相応しくない。
なのでここでは獣と表する。
そうすることにした男性達は、森の奥へと向かう。
「うおっ!」
ふと足下を取られてしまった。
盛り上がった根っこが、地面から露出している。
おかげで転びそうになってしまった。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。にしても暗いな」
森の奥の方に向かっているんだ。
それだけ光は届かなくなる。
ましてや時刻は夜。真夜中に近い。
こんな時間まで働くなんてと、自分達に野次を飛ばす。
「クソッ、それだけの価値があるのは分かってるけどよ、ここまで逃げる体力がまだ残ってたのか?」
ずいぶん遠くの方までやって来た。
細かな雨はまだ降っている。
葉の間かあ差し込むと、男性達の体を冷たく濡らす。
「えくしゅん!」
「おい、くしゃみなんかしたらバレるだろうが」
「すいません。でも、寒くないですか?」
「そんな格好してるからだろ」
男性達は、自分達で罵り合った。
けれど咳をしたりするのも無理は無い。
こんな雨の中まで捜索を続けるとは思っておらず、ベストを着てきてしまった。
このままでは風邪を引きかねない。
全員それだけはごめんだ。
そう思うと、周りを注意深く観察する。
「この辺りの筈……」
「そうだな。血の跡が残ってる」
「ってことは、やっぱりこの辺り」
地面には小さい上に、暗くて見にくいが、血の跡が遺されていた。
そのおかげですぐさまこの辺りだと場所が割れる。
もちろんそれですぐに見つかるとは思っていなかったが、いい風は吹いていた。
「おい、いたぞ!」
全員が声に釣られた。
一瞬で集まると、男性達は獣を探す。
手にしたランタンをかざすと、目と鼻の先、木の幹にもたれかかる姿を見つけた。
「本当ですね」
「ようやくか」
「か、稼ぐのは俺だ。俺なんだ」
獣は休んでいた。
相当疲れているらしい。
ここまで長い間追い詰め続け、矢も当たっている。
傷を追えばそれだけ痛みが増し、動きが鈍くなるのだ。
「とうとう見つけたぜ……おっと!」
男性の一人が近付こうとする。
けれど断念、鋭く睨まれてしまった。
今にも殺されてしまいそうで、自分の首に触れる。
「ガルル」
獣はけたたましく喉を震わした。
鋭い牙を剥き出しにする。
赤く血に染まった犬歯が、ギラリと見つめた。
「「「ひいっ!」」」
男性達の多くは慄いた。
流石に怖くなってしまったのだ。
けれど効かない者もいた。それだけ据わっている。
「ビビんな。立ち止まったんだ、これはチャンスだぞ」
屈強な男性はニヤついていた。
ここで捕まえることができれば高値になる。
それを確信しているからか、危険も承知で前に出る。
「捕まえてやるぜ。儲けるのは俺だ!」
男性は飛び出した。
背中には分厚い斧を背負っている。
けれど手入れが行き届いていないのか、刃毀れも多い。
「おんどらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
生け捕りを狙いつつも、本気で殺しに掛かった。
仮に殺してしまっても、それだけの価値がある。
深手を負っているから下手に飛び出しては来ない。
それなら問答無用で叩き込めると、斧を振り下ろした。
「ガルラァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
しかし獣も抵抗する。
威勢よく吠えると、全身の毛が逆立つ。
震えが男性の体を包むが、そんなものはもう遅い。
「ビビるかよ、そんなもんでな……ぁ?」
男性の唇に霜が下りた。それだけじゃない、全身の筋肉が固まる。
体が重く、そして冷たい。
一体何が起きているのか、男性は訳が分からないので混乱する。
「はっ、嘘だろ? まだそんな力、残して……」
獣はただ吠えただけではなかった。アレは威嚇ではないのだ。
いつの間にか魔法を唱えると、大気中の魔素に反応。
魔力となり発動を促すと、魔術が使えない男性達を襲った。
「さ、寒い!」
「体が凍っちまうよ」
「痛い、痛い痛い痛い、足が、足が!」
いつの間にか雨が雪に変わっていた。
ましてや氷に変化している。
体中の体温を奪い、地面からは氷が生える。
男性達は氷に身を奪われると、自由を失った。
「ガルラ!」
「こ、こんな所で、死んで、死んで……で」
バカみたいに突っ込んだ男性は一番被害を被った。
全身が凍り付くと、意識を失ってしまう。
重力に委ね地面に伏せると、待った雪が散らばった。
氷の礫となり、意識ある男性達の視界を奪う。
「「「うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
これが一番効いたらしい。
目も痛いし、耳も痛い、全身が避ける様に痛い。
あまりの激痛に苦しみ小さくなることしかできなくなると、氷の礫が空ける頃には、獣の姿は無かった。
「い、いねぇ?」
誰かが言った。けれど誰でも良かった。
今まで追いかけていた筈の毛物の姿がない。
銀蒼色の毛並みを纏いし四足の獣は、幻となって消えてしまった。
細かな雨が降り頻る。
そんな中、多くの男性達は森の中に居た。
「おい、そっち行ったぞ」
「分かってる。けど、アイツどれだけ逃げるんだ?」
男性達はあるモンスターを追っていた。
否、アレに対してそのような名前は相応しくない。
なのでここでは獣と表する。
そうすることにした男性達は、森の奥へと向かう。
「うおっ!」
ふと足下を取られてしまった。
盛り上がった根っこが、地面から露出している。
おかげで転びそうになってしまった。
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。にしても暗いな」
森の奥の方に向かっているんだ。
それだけ光は届かなくなる。
ましてや時刻は夜。真夜中に近い。
こんな時間まで働くなんてと、自分達に野次を飛ばす。
「クソッ、それだけの価値があるのは分かってるけどよ、ここまで逃げる体力がまだ残ってたのか?」
ずいぶん遠くの方までやって来た。
細かな雨はまだ降っている。
葉の間かあ差し込むと、男性達の体を冷たく濡らす。
「えくしゅん!」
「おい、くしゃみなんかしたらバレるだろうが」
「すいません。でも、寒くないですか?」
「そんな格好してるからだろ」
男性達は、自分達で罵り合った。
けれど咳をしたりするのも無理は無い。
こんな雨の中まで捜索を続けるとは思っておらず、ベストを着てきてしまった。
このままでは風邪を引きかねない。
全員それだけはごめんだ。
そう思うと、周りを注意深く観察する。
「この辺りの筈……」
「そうだな。血の跡が残ってる」
「ってことは、やっぱりこの辺り」
地面には小さい上に、暗くて見にくいが、血の跡が遺されていた。
そのおかげですぐさまこの辺りだと場所が割れる。
もちろんそれですぐに見つかるとは思っていなかったが、いい風は吹いていた。
「おい、いたぞ!」
全員が声に釣られた。
一瞬で集まると、男性達は獣を探す。
手にしたランタンをかざすと、目と鼻の先、木の幹にもたれかかる姿を見つけた。
「本当ですね」
「ようやくか」
「か、稼ぐのは俺だ。俺なんだ」
獣は休んでいた。
相当疲れているらしい。
ここまで長い間追い詰め続け、矢も当たっている。
傷を追えばそれだけ痛みが増し、動きが鈍くなるのだ。
「とうとう見つけたぜ……おっと!」
男性の一人が近付こうとする。
けれど断念、鋭く睨まれてしまった。
今にも殺されてしまいそうで、自分の首に触れる。
「ガルル」
獣はけたたましく喉を震わした。
鋭い牙を剥き出しにする。
赤く血に染まった犬歯が、ギラリと見つめた。
「「「ひいっ!」」」
男性達の多くは慄いた。
流石に怖くなってしまったのだ。
けれど効かない者もいた。それだけ据わっている。
「ビビんな。立ち止まったんだ、これはチャンスだぞ」
屈強な男性はニヤついていた。
ここで捕まえることができれば高値になる。
それを確信しているからか、危険も承知で前に出る。
「捕まえてやるぜ。儲けるのは俺だ!」
男性は飛び出した。
背中には分厚い斧を背負っている。
けれど手入れが行き届いていないのか、刃毀れも多い。
「おんどらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
生け捕りを狙いつつも、本気で殺しに掛かった。
仮に殺してしまっても、それだけの価値がある。
深手を負っているから下手に飛び出しては来ない。
それなら問答無用で叩き込めると、斧を振り下ろした。
「ガルラァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
しかし獣も抵抗する。
威勢よく吠えると、全身の毛が逆立つ。
震えが男性の体を包むが、そんなものはもう遅い。
「ビビるかよ、そんなもんでな……ぁ?」
男性の唇に霜が下りた。それだけじゃない、全身の筋肉が固まる。
体が重く、そして冷たい。
一体何が起きているのか、男性は訳が分からないので混乱する。
「はっ、嘘だろ? まだそんな力、残して……」
獣はただ吠えただけではなかった。アレは威嚇ではないのだ。
いつの間にか魔法を唱えると、大気中の魔素に反応。
魔力となり発動を促すと、魔術が使えない男性達を襲った。
「さ、寒い!」
「体が凍っちまうよ」
「痛い、痛い痛い痛い、足が、足が!」
いつの間にか雨が雪に変わっていた。
ましてや氷に変化している。
体中の体温を奪い、地面からは氷が生える。
男性達は氷に身を奪われると、自由を失った。
「ガルラ!」
「こ、こんな所で、死んで、死んで……で」
バカみたいに突っ込んだ男性は一番被害を被った。
全身が凍り付くと、意識を失ってしまう。
重力に委ね地面に伏せると、待った雪が散らばった。
氷の礫となり、意識ある男性達の視界を奪う。
「「「うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」
これが一番効いたらしい。
目も痛いし、耳も痛い、全身が避ける様に痛い。
あまりの激痛に苦しみ小さくなることしかできなくなると、氷の礫が空ける頃には、獣の姿は無かった。
「い、いねぇ?」
誰かが言った。けれど誰でも良かった。
今まで追いかけていた筈の毛物の姿がない。
銀蒼色の毛並みを纏いし四足の獣は、幻となって消えてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる