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フェンリル編
656.朝焼けの異変
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温かな陽射しが部屋の中に差し込む。
カーテン越しではあるものの、多少は貫光する。
気持ち良く起きられるように、時間の感覚を忘れないようにと、ルカなりに配慮して選んだものだ。
「ううっ……」
ルカはベッドを転がる。
掛けた毛布を体に抱き寄せる。
しかし陽射しがルカの頬を温めると、自然と瞼が上がった。
「ふはぁー」
ルカは体を起こした。
結局いつもと大差ない時間に起きてしまった。
それこそ現時刻だと、朝も五時。
本当ならばもう少し寝てもよかったが、体内時計は正確だ。
「さてと、ちょっとだけ走ってこようかな」
ルカは起きるや否や、早速服を着替えた。
もちろんラフな格好だ。
運動に適した格好になると、階段を降り、一階へと向かう。
「ン? ドコヘイクキダ、ルカ」
「何処に行って、いつも通り運動だよ」
ルカはバルトラに問われた。
もちろんやることと言えばいつ通りだ。
バルトラの魂が入ったぬいぐるみの前を素通りすると、ルカは玄関から外へと出る。
「うわぁ、寒い」
幻島は色々とおかしい。
もちろん四季はあるのだが、それすら島の中で完結している。
そのせいか、本当ならばこの時期、こんな時間には陽が昇らない。
それすら超越しており、ルカは全身に光を浴びた。
「こんなに太陽光を浴びているのに体が寒いなんて。まあいっか」
ルカは昔から慣れ親しんだコースを走ることにした。
軽くストレッチをしつつ、ルカは走り出す。
タッタッタッと地面を蹴り上げ、森の中へと向かった。
「それにしても、この森は……」
ルカは島の悪口を言う気はない。
けれど今走る森の悪態はついてしまう。
なにしろ目の前に巨大な木の根っこが現れた。
「よっと」
ルカは地面から露出した木の根っこを軽々と跳び越えた。
全身を使い、最小限な軽快な動き。
そのまま地面に着地すると、靴裏に触れた地面のぬかるみさえ、ルカは嵌らない。
「面白いんだけどね。面白いんだけど……」
幻島は面白かった。
一体何処に落とし穴があるのか分からない。
そのせいか常に気を張っている。だからだろうか、ルカの動きはいつにも比べて速い。
「おっと!?」
気を抜こうとした瞬間、蔦がもの凄い勢いで空気をはたく。
まるで鞭のような動きで、ルカの頭を狙っていた。
幸い体を倒して上手く避けると、蔦を振り抜いたのはモンスターだった。
「キキィ」
「ウィップモンキー。へぇ、やるね」
ルカはちょっとだけ戦ってみようとする。
せっかくなのでと三角跳びを披露。
木の幹を蹴り上げ木の枝に駆け上がると、目の前には中指だけが異常に発達したサルが現れる。
「キキィ!?」
「そんなに意外だった? そっか。それじゃあこれはどうかな?」
ルカは魔法を使う気はない。
呼吸法で身体能力を高める。
木の枝から飛び上がると、ウィップモンキーの視界から消えた。
「キキッ、キキッ!?」
「ここだよ」
「キィィィィィィィィィィィィィィィ!」
断末魔が上がった。
ウィップモンキーの背後をスッと奪う。
そのまま長い中指を首に巻き付けると、簡単に絞殺できた。
非常に呆気ないもので、ルカはつまらなく感じる。
「なんだ、このくらいか」
正直、弱すぎた。拍子抜けだった。
ルカを襲うなら、もっと狡猾だと思い込んでいた。
けれどウィップモンキー自体、奇襲に特化している。
間合いに入られた時点で逃げるべき。そうしなかったのは、ルカが弱そうなふりをしたからだ。
「昔はもっと苦戦した筈なんだけど……あれ?」
ルカは首を捻ってしまった。
それがこの一年でまたバランスが変わってしまった。
何処が分水嶺だったのかは分からない。
けれどルカが強くなっていることは、本人を除けば明らかだ。
「私、そんなに強く無い筈なんだけどな」
ルカは自分のことを卑下した。
けれど誰もツッコんではくれない。
ルカ自身の戯言が森の中に溶けてしまうと、ルカは頬を掻いた。
「って、私が気にしても仕方ないよね?」
ルカは我に返った。
木の枝から降り、倒したウィップモンキーの死体を捨てる。
幻島の養分になるのが自然の摂理だ。
下手な真似はしないで再び森の中を走る。
軽いランニングのつもりだが、まるで汗を掻かない。
これはいつも以上にアクティブになる方がいいだろうと決めた。
「にしても変だな」
ルカは走りながら違和感を覚えた。
空気になってルカの頭の中をグルグルと駆け回る。
それはこの島のことじゃない。もっと別の、直接的ではない違和感だ。
「この島が乱れてる訳じゃないんだけど……もしかして、他の島になにかあるのかな?」
幻島は、七輪島の中心に位置する。
つまり他の島の影響を受けやすい。
そのせいか、空気としてルカは感知してしまった。
もちろんそれ以上ではないのだが、やはり過るものがある。
「仕方ない。ナタリーの思惑に乗せられたくはないけど、行ってみるしかないかな」
ルカはニヤリと笑みを浮かべた。
別にナタリーの期待にも思惑にも乗せられている訳ではない。
けれど気掛かりはたくさんあり、目には見えない異様な何かが、珍しい何かがルカの行動を促していた。
カーテン越しではあるものの、多少は貫光する。
気持ち良く起きられるように、時間の感覚を忘れないようにと、ルカなりに配慮して選んだものだ。
「ううっ……」
ルカはベッドを転がる。
掛けた毛布を体に抱き寄せる。
しかし陽射しがルカの頬を温めると、自然と瞼が上がった。
「ふはぁー」
ルカは体を起こした。
結局いつもと大差ない時間に起きてしまった。
それこそ現時刻だと、朝も五時。
本当ならばもう少し寝てもよかったが、体内時計は正確だ。
「さてと、ちょっとだけ走ってこようかな」
ルカは起きるや否や、早速服を着替えた。
もちろんラフな格好だ。
運動に適した格好になると、階段を降り、一階へと向かう。
「ン? ドコヘイクキダ、ルカ」
「何処に行って、いつも通り運動だよ」
ルカはバルトラに問われた。
もちろんやることと言えばいつ通りだ。
バルトラの魂が入ったぬいぐるみの前を素通りすると、ルカは玄関から外へと出る。
「うわぁ、寒い」
幻島は色々とおかしい。
もちろん四季はあるのだが、それすら島の中で完結している。
そのせいか、本当ならばこの時期、こんな時間には陽が昇らない。
それすら超越しており、ルカは全身に光を浴びた。
「こんなに太陽光を浴びているのに体が寒いなんて。まあいっか」
ルカは昔から慣れ親しんだコースを走ることにした。
軽くストレッチをしつつ、ルカは走り出す。
タッタッタッと地面を蹴り上げ、森の中へと向かった。
「それにしても、この森は……」
ルカは島の悪口を言う気はない。
けれど今走る森の悪態はついてしまう。
なにしろ目の前に巨大な木の根っこが現れた。
「よっと」
ルカは地面から露出した木の根っこを軽々と跳び越えた。
全身を使い、最小限な軽快な動き。
そのまま地面に着地すると、靴裏に触れた地面のぬかるみさえ、ルカは嵌らない。
「面白いんだけどね。面白いんだけど……」
幻島は面白かった。
一体何処に落とし穴があるのか分からない。
そのせいか常に気を張っている。だからだろうか、ルカの動きはいつにも比べて速い。
「おっと!?」
気を抜こうとした瞬間、蔦がもの凄い勢いで空気をはたく。
まるで鞭のような動きで、ルカの頭を狙っていた。
幸い体を倒して上手く避けると、蔦を振り抜いたのはモンスターだった。
「キキィ」
「ウィップモンキー。へぇ、やるね」
ルカはちょっとだけ戦ってみようとする。
せっかくなのでと三角跳びを披露。
木の幹を蹴り上げ木の枝に駆け上がると、目の前には中指だけが異常に発達したサルが現れる。
「キキィ!?」
「そんなに意外だった? そっか。それじゃあこれはどうかな?」
ルカは魔法を使う気はない。
呼吸法で身体能力を高める。
木の枝から飛び上がると、ウィップモンキーの視界から消えた。
「キキッ、キキッ!?」
「ここだよ」
「キィィィィィィィィィィィィィィィ!」
断末魔が上がった。
ウィップモンキーの背後をスッと奪う。
そのまま長い中指を首に巻き付けると、簡単に絞殺できた。
非常に呆気ないもので、ルカはつまらなく感じる。
「なんだ、このくらいか」
正直、弱すぎた。拍子抜けだった。
ルカを襲うなら、もっと狡猾だと思い込んでいた。
けれどウィップモンキー自体、奇襲に特化している。
間合いに入られた時点で逃げるべき。そうしなかったのは、ルカが弱そうなふりをしたからだ。
「昔はもっと苦戦した筈なんだけど……あれ?」
ルカは首を捻ってしまった。
それがこの一年でまたバランスが変わってしまった。
何処が分水嶺だったのかは分からない。
けれどルカが強くなっていることは、本人を除けば明らかだ。
「私、そんなに強く無い筈なんだけどな」
ルカは自分のことを卑下した。
けれど誰もツッコんではくれない。
ルカ自身の戯言が森の中に溶けてしまうと、ルカは頬を掻いた。
「って、私が気にしても仕方ないよね?」
ルカは我に返った。
木の枝から降り、倒したウィップモンキーの死体を捨てる。
幻島の養分になるのが自然の摂理だ。
下手な真似はしないで再び森の中を走る。
軽いランニングのつもりだが、まるで汗を掻かない。
これはいつも以上にアクティブになる方がいいだろうと決めた。
「にしても変だな」
ルカは走りながら違和感を覚えた。
空気になってルカの頭の中をグルグルと駆け回る。
それはこの島のことじゃない。もっと別の、直接的ではない違和感だ。
「この島が乱れてる訳じゃないんだけど……もしかして、他の島になにかあるのかな?」
幻島は、七輪島の中心に位置する。
つまり他の島の影響を受けやすい。
そのせいか、空気としてルカは感知してしまった。
もちろんそれ以上ではないのだが、やはり過るものがある。
「仕方ない。ナタリーの思惑に乗せられたくはないけど、行ってみるしかないかな」
ルカはニヤリと笑みを浮かべた。
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