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第1部
第3章:地下と星の下ー006ー
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円眞の繰り出した短剣は、かろうじて白き戦斧を夏波の首元寸前で受け止めていた。
「ダメだ、雪南」
「どけ、円眞。この女、やっぱり油断させていたんだ」
雪南は反駁した途端に、うっと呻いた。
円眞の刃が雪南へ伸びる。
ビキっ、と張り詰めた糸を寸断する音が鳴り響いた。
雪南の白い首に、つつっと緋い一筋が伝う。
もし半瞬でも遅れていたら、と考えれば円眞の頭は真っ白になった。雪南に巻かれていた糸を斬った刃を振り降ろす。
夬斗は両手で広げた糸で受け止めた。
刃と糸の間から、激しい火花が散る。円眞と夬斗の激突する視線を体現しているかのようだ。
「やめて、お願い!」
叫ぶ夏波は、正面から雪南へ抱きついた。
自ら危険に飛び込んでくるなど予想だにしていなかった雪南だ。抱きつかれた驚きを隠せない。
不測の事態に、円眞と夬斗はつい引いた。
両者の間に立つ火花が弱まったところで、夏波は雪南に抱きついたまま叫んだ。
「ごめんなさい、雪南ちゃんを利用しようとした私が軽薄だった。もう死のうなんてしないから、争うのはヤメて!」
声の切実さに、夬斗だけでなく事情を知らない円眞も力を抜けていく。
「雪南ちゃん、ごめん、本当にごめんなさい」
夏波が泣きじゃくるように謝ってくる。
「ああ、もういい。わかった」
あれほど疑っていた雪南が受け入れている。
円眞と夬斗の両者は攻撃の矛を収めた。
争いが収まれば夏波は雪南から離れた。ごめんね、と何度も繰り返しつつ事務所に与えられた自分の居場所と言える机へ戻っていく。けれども椅子に座ることなく立ち尽くせば、また堰を切ったように泣き出した。
夬斗が傍まで行った。でも、どうしていいか分からないといった感じだ。声もかけらず、当惑したように立ち尽くす。
何も出来ない苛立たしさゆえか。黛莉! と夬斗は妹へ怒鳴った。
「なんで、のこのこ一緒に行った。親友に任せたのは俺たちでは冷静に事へ当れないからだ。もしこの件で俺たちに何かあったら、夏波さんを傷つけることとなるんだぞ」
「そうかもしれないけど、クロガネが一緒だったんだからいいじゃない」
発現させた機関銃を手にしている黛莉が反駁してくる。
「夬斗くん、じゃない社長。黛莉ちゃんを怒らないで。元はといえば、私が余計なことを言ったからなの」
目頭を押さえつつ夏波が兄妹の会話へ入ってきた。
「どうせ親友の居場所が知りたいって、黛莉から迫ってきたんでしょう。止めるため伝えたのを無視して行ったことぐらい想像がつきますよ」
夬斗の指摘はまるきり図星だったようだ。言い返せない黛莉は口を固く結んだ。
「まったく妹といい、親友ところにやってきた女といい、軽薄にも程がある」
容赦がない夬斗は話しをぶり返す勢いだ。やり手の青年実業家とする普段からは想像つかない執拗さである。
やはりというか、雪南が反応した。
「では襲ってきた連中はなんだったというのだ。円眞が普通の人間には刃を向けられないことを知ってのタイミングだったぞ」
「親友がヒトを殺せないなど、けっこう知られている事実だ。そんなことで疑ったというならお門違いもいいところだぞ。それよりオマエ……」
夬斗は叩きつけるように言った。
「その短絡さで、何人、殺した。誤解で殺された人数はかなり昇っていそうだな」
反論が起きないだけではない。碧い瞳がこれ以上にないほど大きく見開いた。
「……雪南」
円眞は名を呼んでは腕を伸ばす。初めて見せた雪南の動揺ぶりが放っておけない。
するりと手をかわした雪南は黒いワンピースの裾を翻す。何も言わず外へ駆け出していく。
追いかけようと円眞が見せた背へ、「親友!」と呼び止める声がした。
「雪南がやったことは、本当にゴメン。でも今ボクは、夬斗くんと話す気にはなれない」
円眞は振り向くことなく、雪南を追いかけるため急いで出て行った。
「ダメだ、雪南」
「どけ、円眞。この女、やっぱり油断させていたんだ」
雪南は反駁した途端に、うっと呻いた。
円眞の刃が雪南へ伸びる。
ビキっ、と張り詰めた糸を寸断する音が鳴り響いた。
雪南の白い首に、つつっと緋い一筋が伝う。
もし半瞬でも遅れていたら、と考えれば円眞の頭は真っ白になった。雪南に巻かれていた糸を斬った刃を振り降ろす。
夬斗は両手で広げた糸で受け止めた。
刃と糸の間から、激しい火花が散る。円眞と夬斗の激突する視線を体現しているかのようだ。
「やめて、お願い!」
叫ぶ夏波は、正面から雪南へ抱きついた。
自ら危険に飛び込んでくるなど予想だにしていなかった雪南だ。抱きつかれた驚きを隠せない。
不測の事態に、円眞と夬斗はつい引いた。
両者の間に立つ火花が弱まったところで、夏波は雪南に抱きついたまま叫んだ。
「ごめんなさい、雪南ちゃんを利用しようとした私が軽薄だった。もう死のうなんてしないから、争うのはヤメて!」
声の切実さに、夬斗だけでなく事情を知らない円眞も力を抜けていく。
「雪南ちゃん、ごめん、本当にごめんなさい」
夏波が泣きじゃくるように謝ってくる。
「ああ、もういい。わかった」
あれほど疑っていた雪南が受け入れている。
円眞と夬斗の両者は攻撃の矛を収めた。
争いが収まれば夏波は雪南から離れた。ごめんね、と何度も繰り返しつつ事務所に与えられた自分の居場所と言える机へ戻っていく。けれども椅子に座ることなく立ち尽くせば、また堰を切ったように泣き出した。
夬斗が傍まで行った。でも、どうしていいか分からないといった感じだ。声もかけらず、当惑したように立ち尽くす。
何も出来ない苛立たしさゆえか。黛莉! と夬斗は妹へ怒鳴った。
「なんで、のこのこ一緒に行った。親友に任せたのは俺たちでは冷静に事へ当れないからだ。もしこの件で俺たちに何かあったら、夏波さんを傷つけることとなるんだぞ」
「そうかもしれないけど、クロガネが一緒だったんだからいいじゃない」
発現させた機関銃を手にしている黛莉が反駁してくる。
「夬斗くん、じゃない社長。黛莉ちゃんを怒らないで。元はといえば、私が余計なことを言ったからなの」
目頭を押さえつつ夏波が兄妹の会話へ入ってきた。
「どうせ親友の居場所が知りたいって、黛莉から迫ってきたんでしょう。止めるため伝えたのを無視して行ったことぐらい想像がつきますよ」
夬斗の指摘はまるきり図星だったようだ。言い返せない黛莉は口を固く結んだ。
「まったく妹といい、親友ところにやってきた女といい、軽薄にも程がある」
容赦がない夬斗は話しをぶり返す勢いだ。やり手の青年実業家とする普段からは想像つかない執拗さである。
やはりというか、雪南が反応した。
「では襲ってきた連中はなんだったというのだ。円眞が普通の人間には刃を向けられないことを知ってのタイミングだったぞ」
「親友がヒトを殺せないなど、けっこう知られている事実だ。そんなことで疑ったというならお門違いもいいところだぞ。それよりオマエ……」
夬斗は叩きつけるように言った。
「その短絡さで、何人、殺した。誤解で殺された人数はかなり昇っていそうだな」
反論が起きないだけではない。碧い瞳がこれ以上にないほど大きく見開いた。
「……雪南」
円眞は名を呼んでは腕を伸ばす。初めて見せた雪南の動揺ぶりが放っておけない。
するりと手をかわした雪南は黒いワンピースの裾を翻す。何も言わず外へ駆け出していく。
追いかけようと円眞が見せた背へ、「親友!」と呼び止める声がした。
「雪南がやったことは、本当にゴメン。でも今ボクは、夬斗くんと話す気にはなれない」
円眞は振り向くことなく、雪南を追いかけるため急いで出て行った。
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