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第2章
マネージャーになりませんか?
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「宮脇さん。ちょっと。」
放課後。野球部の雑務をこなしていた咲良に、不破光が声を掛けた。
「????。何?」
不破はグラウンドから続く石段の上から熱心に野球部の練習風景をスマートフォンで撮影する一人の女子高生を指差して言った。
「あの子なんだけど・・・・。」
「あの子がどうかしたの?」
「さっきから熱心に野球部の練習を撮影しているんだ。」
そういえば、練習の初めから熱心に撮影している。球技大会で野球部が読書部に敗れてから、全校生徒から蔑まれる様になった事による冷やかしかと思われたが、それにしては撮影時間が長すぎる。冷やかしで2時間近くも撮影できるだろうか?
「そういえば、さっきからずっとだね。冷やかしにしては熱心過ぎる感じ。」
「彼女、野球部に興味があるんじゃないかな?」
「興味?」
「うん。」
「・・・・・。それで何?」
「野球部に誘ってみたら?」
「彼女をメンバーに入れるって事?」
察しの悪い咲良に不破は苦笑いして言った。
「違うよ。マネージャーに誘うんだ。」
「マネージャーって・・・・私が居るじゃないの。」
「そうだけど、野球部のメンバーも増えた事だし、君一人で雑務をこなすのは大変じゃないかい?」
「う~~~ん。」
咲良は考え込んだ。今までは部員4人だったのが、今年は11人に。仕事量が増え、猫の手も借りたい程などは事実だった。今後の事を考えると、マネージャーの人員を今の内に増やしておくのも悪くないかも知れない。
「悪くないかも。上を狙うのなら、人の手を増やしておくのも。」
「決まりだね。」
不破は微笑んだ。
「じゃあ、ちょっと話してくる。不破君は練習を。」
「僕も一緒に行こうか?」
「大丈夫。きっと、話し掛ける切っ掛けが無くて様子を窺っているのよ。女だけで話した方が話易いだろうから。」
咲良はそう決めつけて、一人で練習風景を撮影する愛菜の元へ向かった。
咲良は近くで愛菜を見て怖気づいた。愛菜の化粧や服装にである。遠くからは気付かなかったが、山姥の様なメイク、ルーズソックス、校則違反の制服。完全なギャルである。対して咲良は分厚い眼鏡、三つ編み、服装には無頓着、ノーメイク。これ程、対極にいる人間と上手く話せるであろうかと気後れした。だがまあ、同じ人間。野球好きの人間には悪い人間はいないだろうと思い直し、思い切って声を掛けた。
「こんにちは。」
越前の撮影に夢中の愛菜は、咲良の接近にまるで気付かなかった。「こんにちは。」と、いきなり声を掛けられ、悲鳴を上げた。
「キャッ!」
いきなり悲鳴を上げられた咲良も驚いて、大声を上げた。
「うわっ!何?何?」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
二人は驚きの表情で見つめ合った。
「な、何ですか。なんで脅かすんですか。」
「ご、ゴメンなさい。いきなり悲鳴を上げられたものだから・・・・・。」
「いきなり話し掛けられたら、普通驚くじゃないですか。」
「そ、そうだね。御免ね。」
ギャルの逆切れの剣幕に気押されて、咲良は思わず謝ってしまった。こういう子は苦手である。ムッとする愛菜に咲良は気を取り直して話し掛けた。
「野球に興味あるの?」
「なんでそんな事聞くんですか?あなたに関係ありますか?」
何故か分からないが相手は喧嘩腰である。咲良は随分ヒステリックな子だなあと困惑しながら尚も話し掛けた。
「一年生だよね。名前は?」
「なんでそんな事を聞くのか聞いてますよね。無視して話を進めないで下さい。」
「そ、そうだね。御免。私、野球部のマネジャーをしているんだけど、あなたが随分と熱心に練習を見ているものだから、興味あるのかなあと思って。」
「マネージャー?野球部の?」
「そ、そう。」
愛菜はその手があったかと心の中で快哉を叫んだ。そうなのだ。野球部のマネージャーになればずっと越前と一緒に居れるではないか。全く考えも付かなかった事である。
「・・・・・・。そうですか。マネージャーさんでしたか・・・・。」
「そうなの。今年は新入生が入って来て、人手が欲しいなあって思っていた所なの。野球に興味があるのなら、一緒にマネージャーやりませんか。」
「えっ、本当。」
愛菜には願っても無い申し出であった。野球部のマネージャーになりたいが、何と言って良いか分からない。そこへ向こうから誘ってくれたのである。これぞ聖ミカエルの思し召しである。
「どうかな?」
絶対やりたい。だが本音を知られるのは恥かしい。愛菜は自分から飛び付くのでは無く、やむなく請われてマネージャーになったという体裁を取りたかった。
「ん~~~。まあ、可哀そうだから、やってあげても良いかな。」
「可哀そう?なにが?」
咲良は愛菜の発言が引っ掛かった。
「読書部にも負ける野球部が気の毒だから、愛菜が元気付けてあげるよ。」
何だこの子。偉そうに。咲良は目の前のギャルの発言にカチンときた。確かに結果だけ見れば無様に見られるだろう。だが、手塚が統率した読書部ならその辺の高校の野球部なら普通に負けるだろう。この子、大した見識が有る訳ではないな。咲良は目の前のギャルに早々に見切りを付けた。
「うちの野球部は気の毒でも無いし、元気付けられなくても有り余るほど元気です。あなたの力は必要ありません。」
「ど、どういう事ですか?必要ではないって・・・・。」
「言葉の通り。前言を撤回します。私一人で切り盛り出来ますのでマネジャーはもう、必要ありません。悪しからず。」
咲良はそれだけ言うとプイと後ろを向いて去っていく。
「ちょ、ちょっと、待って下さい。そっちが誘って来たんじゃないですか・・・・・。」
咲良は振り返らなかった。愛菜はその場にポツンと取り残された。
放課後。野球部の雑務をこなしていた咲良に、不破光が声を掛けた。
「????。何?」
不破はグラウンドから続く石段の上から熱心に野球部の練習風景をスマートフォンで撮影する一人の女子高生を指差して言った。
「あの子なんだけど・・・・。」
「あの子がどうかしたの?」
「さっきから熱心に野球部の練習を撮影しているんだ。」
そういえば、練習の初めから熱心に撮影している。球技大会で野球部が読書部に敗れてから、全校生徒から蔑まれる様になった事による冷やかしかと思われたが、それにしては撮影時間が長すぎる。冷やかしで2時間近くも撮影できるだろうか?
「そういえば、さっきからずっとだね。冷やかしにしては熱心過ぎる感じ。」
「彼女、野球部に興味があるんじゃないかな?」
「興味?」
「うん。」
「・・・・・。それで何?」
「野球部に誘ってみたら?」
「彼女をメンバーに入れるって事?」
察しの悪い咲良に不破は苦笑いして言った。
「違うよ。マネージャーに誘うんだ。」
「マネージャーって・・・・私が居るじゃないの。」
「そうだけど、野球部のメンバーも増えた事だし、君一人で雑務をこなすのは大変じゃないかい?」
「う~~~ん。」
咲良は考え込んだ。今までは部員4人だったのが、今年は11人に。仕事量が増え、猫の手も借りたい程などは事実だった。今後の事を考えると、マネージャーの人員を今の内に増やしておくのも悪くないかも知れない。
「悪くないかも。上を狙うのなら、人の手を増やしておくのも。」
「決まりだね。」
不破は微笑んだ。
「じゃあ、ちょっと話してくる。不破君は練習を。」
「僕も一緒に行こうか?」
「大丈夫。きっと、話し掛ける切っ掛けが無くて様子を窺っているのよ。女だけで話した方が話易いだろうから。」
咲良はそう決めつけて、一人で練習風景を撮影する愛菜の元へ向かった。
咲良は近くで愛菜を見て怖気づいた。愛菜の化粧や服装にである。遠くからは気付かなかったが、山姥の様なメイク、ルーズソックス、校則違反の制服。完全なギャルである。対して咲良は分厚い眼鏡、三つ編み、服装には無頓着、ノーメイク。これ程、対極にいる人間と上手く話せるであろうかと気後れした。だがまあ、同じ人間。野球好きの人間には悪い人間はいないだろうと思い直し、思い切って声を掛けた。
「こんにちは。」
越前の撮影に夢中の愛菜は、咲良の接近にまるで気付かなかった。「こんにちは。」と、いきなり声を掛けられ、悲鳴を上げた。
「キャッ!」
いきなり悲鳴を上げられた咲良も驚いて、大声を上げた。
「うわっ!何?何?」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
二人は驚きの表情で見つめ合った。
「な、何ですか。なんで脅かすんですか。」
「ご、ゴメンなさい。いきなり悲鳴を上げられたものだから・・・・・。」
「いきなり話し掛けられたら、普通驚くじゃないですか。」
「そ、そうだね。御免ね。」
ギャルの逆切れの剣幕に気押されて、咲良は思わず謝ってしまった。こういう子は苦手である。ムッとする愛菜に咲良は気を取り直して話し掛けた。
「野球に興味あるの?」
「なんでそんな事聞くんですか?あなたに関係ありますか?」
何故か分からないが相手は喧嘩腰である。咲良は随分ヒステリックな子だなあと困惑しながら尚も話し掛けた。
「一年生だよね。名前は?」
「なんでそんな事を聞くのか聞いてますよね。無視して話を進めないで下さい。」
「そ、そうだね。御免。私、野球部のマネジャーをしているんだけど、あなたが随分と熱心に練習を見ているものだから、興味あるのかなあと思って。」
「マネージャー?野球部の?」
「そ、そう。」
愛菜はその手があったかと心の中で快哉を叫んだ。そうなのだ。野球部のマネージャーになればずっと越前と一緒に居れるではないか。全く考えも付かなかった事である。
「・・・・・・。そうですか。マネージャーさんでしたか・・・・。」
「そうなの。今年は新入生が入って来て、人手が欲しいなあって思っていた所なの。野球に興味があるのなら、一緒にマネージャーやりませんか。」
「えっ、本当。」
愛菜には願っても無い申し出であった。野球部のマネージャーになりたいが、何と言って良いか分からない。そこへ向こうから誘ってくれたのである。これぞ聖ミカエルの思し召しである。
「どうかな?」
絶対やりたい。だが本音を知られるのは恥かしい。愛菜は自分から飛び付くのでは無く、やむなく請われてマネージャーになったという体裁を取りたかった。
「ん~~~。まあ、可哀そうだから、やってあげても良いかな。」
「可哀そう?なにが?」
咲良は愛菜の発言が引っ掛かった。
「読書部にも負ける野球部が気の毒だから、愛菜が元気付けてあげるよ。」
何だこの子。偉そうに。咲良は目の前のギャルの発言にカチンときた。確かに結果だけ見れば無様に見られるだろう。だが、手塚が統率した読書部ならその辺の高校の野球部なら普通に負けるだろう。この子、大した見識が有る訳ではないな。咲良は目の前のギャルに早々に見切りを付けた。
「うちの野球部は気の毒でも無いし、元気付けられなくても有り余るほど元気です。あなたの力は必要ありません。」
「ど、どういう事ですか?必要ではないって・・・・。」
「言葉の通り。前言を撤回します。私一人で切り盛り出来ますのでマネジャーはもう、必要ありません。悪しからず。」
咲良はそれだけ言うとプイと後ろを向いて去っていく。
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