失踪14年 美月の帰還

軽部雄二

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第51章

ひとみの懸念

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「確かに日本語を喋れる人が周りに大勢いれば、気が紛れるけど・・・・。」
 ひとみは美月の意見の一部だけに賛同した。
「けど、何?」
「・・・・・美月ちゃん、彼らが工作員だって事を忘れてない?」
 ひとみは盗聴器に声を拾われない様に、トーンを落として問いかけた。
「彼らに日本語を教えると、それは南朝鮮に日本人として潜入するスパイに悪用される事になるわ。現に私たちも日本人になりすましたスパイに拉致されて来たのよ。」
「・・・・・・。」
 ひとみの言ってる事は事実である。拉致された日本人に日本語教育を受けた北朝鮮のスパイが日本に潜入し、美月やひとみを攫って来た事を2人は最近になって知った。
「私は心配なの。私たちがスパイに日本語を教える事で、私たちと同じ目に遭う人達がこれから沢山出るんじゃないかって・・・・。」
 ひとみの懸念は美月の懸念と同じである。北朝鮮のスパイは人を躊躇なく殺すし、まだ子供の中学生も平気で攫ってくる。海岸のアベックも攫おうとしていた様だし、ひとみの母も未だ消息不明だ。一緒に攫われてきたのは確かなので、恐らく何らかの犯罪行為に加担させられていることは確実だろうと思われた。自分たちが育てたスパイたちが南朝鮮や日本で冷酷非道な犯罪行為を働く・・・・。自分が日本語を教える事は犯罪の片棒を担ぐ事と言えるのでは・・・・・。
「ひとみさんの言う事は分かります。」
 美月がキッパリと言うので、ひとみは慌てて人差し指を唇の前に当てがった。
「美月ちゃん、シーッ。声を落として。」
 美月は首を竦めて、何処にあるか分からない盗聴器を警戒しながら声を落とした。
「でも、どうしようもないじゃないですか。日本語を教えるのを拒否したら、また、一日10時間以上、主体思想教育です。」
「・・・・・・。でも、私たちが我慢すれば、これ以上、被害者は出ないわ。」
「我慢しても同じ事です。」
「我慢しても同じって・・・・どういう事?」
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