2 / 85
2.ミニカツ丼
しおりを挟む
「まぁまぁコウ。そんなに殺気立たないの」
母さんの言葉に、いつの間にか殺気立っていたことを自覚したので1度深呼吸をする。
「あれ?母さん。なんでそっち側に立ってるのかな?」
父さんの疑問を笑顔で受け流す母さん。
「はい、あなた。ミニカツ丼よ」
父さんの前にお茶碗に入ったミニカツ丼が置かれた。
「え?え?」
戸惑っている父さんはカツ丼と母さんの顔を何度も見た。
さっきから姿を見ないと思ったら、まさかこんなモノを作っていたなんて。
しかし、この流れには乗るべきだろう。
「それ食ってさっさと吐いちまいな」
僕はカツ丼を食べるように薦めると、父さんはこれ以上ないくらい驚いた表情を僕に向けてきた。
「いや!もうすでに色々と吐いてるし!それにさっき夕食を食べたばかりでこんなの食べたらホントに色々と余計なモノまで吐いちゃうんだけど!?」
父さんの言い分はわかる。
僕も今ミニカツ丼を出されたら食べ切れる自信はないし、例え食べ切れたとしても当分動けなくなるか最悪の場合は吐くね。
でも父さん。あいにくと僕の横に笑顔で立っている母さんが、食べないという選択を許さないだろう。
「あら、あなた。私のカツ丼が食べられないの?」
ほら。やっぱり。
「………………………」
父さんが無言の抵抗をしていると、母さんの笑顔の圧力が強くなった。
「食べれないの?」
母さんは問いかけるように聞いているが、その言葉の裏には、食べなさい、という言葉が隠れて見えた。
「………………………食べます」
母さんの笑顔の圧力に屈した父さんはしくしくと涙を流しながら頑張ってミニカツ丼を食べ始めた。
ご愁傷さま。
内心で手を合わせる。
なんだか可哀想になったので父さんを尋問するのは止めにしよう。
スポットライトを消してからしまうと部屋の明かりがついた。
「住む場所と高校については納得したけど、荷造りはどうするの?」
何もかもそのままでいつも通りのリビングを見回した。
いつも通りそのままなのはここだけではなく、僕の部屋やキッチンに洗面所、お風呂、トイレなどもいつも通りのままそのままだった。
もしかしたら、それ以外の僕が入らないような場所や押し入れの中の荷造りをすでに終わらせているとしたら少しはマシなんだけどね。
「そうね。今から朝までに家の中の全部の荷造りは大変よね」
そんなことはなかったらしい。
だが、母さんに焦りはなく、手を頬に当てながらのほほんと微笑んでいた。
なんでそんなにのほほんと出来るのかがわからずに、僕は目を見開きながら母さんを見た。
「家全部の荷造りをしないといけないんだったら、そんなにのほほんとしてる暇ないでしょ!」
早く荷造りしに行かないと、と立ち上がろうとしたが、そんな僕の肩に母さんが手をのせて押さえてきた。
「母さん!」
「大丈夫よ。こういう時は神頼みすればいいのよ」
「はい?」
「神頼み」
母さんが笑顔で繰り返した。
母さんの言葉はしっかりと聞こえているのだが、まさかの言葉に僕の思考が停止した。
………………………………………。
はっ!ダメだダメだ!思考を止めちゃダメだ!
でも、こんな時間がない時に神頼みすればいいとか言われたら普通は思考停止してしまうよね。そうなってしまってもおかしくないよね。僕は間違ってないよね。
っと、また現実逃避してしまっていた。
これじゃあダメだと気持ちを切り替えて母さんの手を振り払って見上げる。
「母さん!冗談言ってる暇なんてないんだよ!」
僕が強く言っているのにもかかわらず、母さんはやっぱりのほほんと笑っていた。
「まぁまぁ。今は騙されたと思って、このままでは物語が終わってしまいます。どうにかしてください。と神様に祈ってみなさい」
さらにおかしなことを言いだす母さん。
「どう考えてもそれは神頼みじゃないよね!?」
物語が終わってしまうからどうにかして、ってどんな祈り!?しかも、それを叶えてくれる神様ってどんな神様!?
「いいからいいから」
優しく言い聞かせてくる母さんだが、その中に無言の圧力も混ざっていたのでこれはこれ以上言い返したりせずに母さんの言うとおりにすべきだろう。
ホントにもう何もかもがどうでも良くなってきたし、神頼みしておこう。
「このままでは物語が終わってしまいます。どうにかしてください」
母さんの言うとおりそう言った次の瞬間、リビングの中の物が一瞬で消え去り、代わりに段ボールの山が2つ出来上がっていた。
「え?え?え?」
もはや思考停止とか言ってられないことが目の前で起きた。
「ほら。荷造り終わったわよ」
「え?え?え?」
「コウったらさっきから、え?しか言ってないわよ」
いや。え?としか言えないんですけど?
ホントに何が起きたの?ホントに荷造り終わったの?なんで?どうして?どうやって?
しかし、いくら考えても答えが出てくるわけもなく、頭が混乱し始めてきていると、
「考えたってムダなんだし、荷造りが終わったのだからそれでいいじゃない」
母さんのその言葉が頭にストンと入ってきた瞬間、僕はそれでいいかと考えることを止めた。
「あとは引越し業者にお願いしてあるからコウはさっさと寝なさい」
「えっ?まだ早くない?」
今はまだ夜の9時前なので、全く眠たくない時間なのに。
「コウが明日乗る新幹線が朝の7時発なのよ」
「なんでそんなに早い新幹線なの!?」
ここから小説町近くの新幹線の駅までそんなにかからないはずだからそんなに早い新幹線に乗る必要ないはずだ。
「だってお昼前には向こうに着いてチョウちゃんから高校についての説明を受けることになってるもの」
「初耳なんですけど!?」
「今初めて言ったからね」
「確かにそうだけど!」
もう呆れて何も言えないでいると、
「ご、ごちそうさま、うぷっ」
「はい。お粗末様です」
父さんがミニカツ丼をなんとか食べきって机に突っ伏した。
母さんの言葉に、いつの間にか殺気立っていたことを自覚したので1度深呼吸をする。
「あれ?母さん。なんでそっち側に立ってるのかな?」
父さんの疑問を笑顔で受け流す母さん。
「はい、あなた。ミニカツ丼よ」
父さんの前にお茶碗に入ったミニカツ丼が置かれた。
「え?え?」
戸惑っている父さんはカツ丼と母さんの顔を何度も見た。
さっきから姿を見ないと思ったら、まさかこんなモノを作っていたなんて。
しかし、この流れには乗るべきだろう。
「それ食ってさっさと吐いちまいな」
僕はカツ丼を食べるように薦めると、父さんはこれ以上ないくらい驚いた表情を僕に向けてきた。
「いや!もうすでに色々と吐いてるし!それにさっき夕食を食べたばかりでこんなの食べたらホントに色々と余計なモノまで吐いちゃうんだけど!?」
父さんの言い分はわかる。
僕も今ミニカツ丼を出されたら食べ切れる自信はないし、例え食べ切れたとしても当分動けなくなるか最悪の場合は吐くね。
でも父さん。あいにくと僕の横に笑顔で立っている母さんが、食べないという選択を許さないだろう。
「あら、あなた。私のカツ丼が食べられないの?」
ほら。やっぱり。
「………………………」
父さんが無言の抵抗をしていると、母さんの笑顔の圧力が強くなった。
「食べれないの?」
母さんは問いかけるように聞いているが、その言葉の裏には、食べなさい、という言葉が隠れて見えた。
「………………………食べます」
母さんの笑顔の圧力に屈した父さんはしくしくと涙を流しながら頑張ってミニカツ丼を食べ始めた。
ご愁傷さま。
内心で手を合わせる。
なんだか可哀想になったので父さんを尋問するのは止めにしよう。
スポットライトを消してからしまうと部屋の明かりがついた。
「住む場所と高校については納得したけど、荷造りはどうするの?」
何もかもそのままでいつも通りのリビングを見回した。
いつも通りそのままなのはここだけではなく、僕の部屋やキッチンに洗面所、お風呂、トイレなどもいつも通りのままそのままだった。
もしかしたら、それ以外の僕が入らないような場所や押し入れの中の荷造りをすでに終わらせているとしたら少しはマシなんだけどね。
「そうね。今から朝までに家の中の全部の荷造りは大変よね」
そんなことはなかったらしい。
だが、母さんに焦りはなく、手を頬に当てながらのほほんと微笑んでいた。
なんでそんなにのほほんと出来るのかがわからずに、僕は目を見開きながら母さんを見た。
「家全部の荷造りをしないといけないんだったら、そんなにのほほんとしてる暇ないでしょ!」
早く荷造りしに行かないと、と立ち上がろうとしたが、そんな僕の肩に母さんが手をのせて押さえてきた。
「母さん!」
「大丈夫よ。こういう時は神頼みすればいいのよ」
「はい?」
「神頼み」
母さんが笑顔で繰り返した。
母さんの言葉はしっかりと聞こえているのだが、まさかの言葉に僕の思考が停止した。
………………………………………。
はっ!ダメだダメだ!思考を止めちゃダメだ!
でも、こんな時間がない時に神頼みすればいいとか言われたら普通は思考停止してしまうよね。そうなってしまってもおかしくないよね。僕は間違ってないよね。
っと、また現実逃避してしまっていた。
これじゃあダメだと気持ちを切り替えて母さんの手を振り払って見上げる。
「母さん!冗談言ってる暇なんてないんだよ!」
僕が強く言っているのにもかかわらず、母さんはやっぱりのほほんと笑っていた。
「まぁまぁ。今は騙されたと思って、このままでは物語が終わってしまいます。どうにかしてください。と神様に祈ってみなさい」
さらにおかしなことを言いだす母さん。
「どう考えてもそれは神頼みじゃないよね!?」
物語が終わってしまうからどうにかして、ってどんな祈り!?しかも、それを叶えてくれる神様ってどんな神様!?
「いいからいいから」
優しく言い聞かせてくる母さんだが、その中に無言の圧力も混ざっていたのでこれはこれ以上言い返したりせずに母さんの言うとおりにすべきだろう。
ホントにもう何もかもがどうでも良くなってきたし、神頼みしておこう。
「このままでは物語が終わってしまいます。どうにかしてください」
母さんの言うとおりそう言った次の瞬間、リビングの中の物が一瞬で消え去り、代わりに段ボールの山が2つ出来上がっていた。
「え?え?え?」
もはや思考停止とか言ってられないことが目の前で起きた。
「ほら。荷造り終わったわよ」
「え?え?え?」
「コウったらさっきから、え?しか言ってないわよ」
いや。え?としか言えないんですけど?
ホントに何が起きたの?ホントに荷造り終わったの?なんで?どうして?どうやって?
しかし、いくら考えても答えが出てくるわけもなく、頭が混乱し始めてきていると、
「考えたってムダなんだし、荷造りが終わったのだからそれでいいじゃない」
母さんのその言葉が頭にストンと入ってきた瞬間、僕はそれでいいかと考えることを止めた。
「あとは引越し業者にお願いしてあるからコウはさっさと寝なさい」
「えっ?まだ早くない?」
今はまだ夜の9時前なので、全く眠たくない時間なのに。
「コウが明日乗る新幹線が朝の7時発なのよ」
「なんでそんなに早い新幹線なの!?」
ここから小説町近くの新幹線の駅までそんなにかからないはずだからそんなに早い新幹線に乗る必要ないはずだ。
「だってお昼前には向こうに着いてチョウちゃんから高校についての説明を受けることになってるもの」
「初耳なんですけど!?」
「今初めて言ったからね」
「確かにそうだけど!」
もう呆れて何も言えないでいると、
「ご、ごちそうさま、うぷっ」
「はい。お粗末様です」
父さんがミニカツ丼をなんとか食べきって机に突っ伏した。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる