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44.あっさりと霧散
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「それじゃあ、みんなでお風呂にでも入らない?」
リンの唐突な提案に「なんで?」と一瞬思った。
しかし、今朝から色々あったせいでまだお風呂に入ってなかったし、服を脱いでヒマワリちゃんに見せないといけないということを考えるとついでにお風呂に入るのはありだと考え直し、頷こうとしたが、
『それだ!』
僕が返事をするより前にチョウちゃんとヒマワリちゃんが叫びながら立ち上がった。
いや、ヒマワリちゃんが立ち上がるのはわかるけど、なんでチョウちゃんまで立ち上がるのかな?
そんな思いとは裏腹に、2人のテンションはムダに上がっているようで、
「みんなでお風呂に入ろう!」
「おー」
チョウちゃんが拳を突き上げながら高らかに宣言すると、ヒマワリちゃんもノリノリで拳をあげた。
「ちょっと待って」
お風呂に入るのはいいのだけれど、リンとチョウちゃんの言葉の中に気になる点があったのでストップをかける。
「お風呂に入るぞ!」
「おー」
しかし、テンションが変な方向へ振り切ってしまっているチョウちゃんとヒマワリちゃんが止まる気配はないので、仕方なく強制的に手っ取り早く止めることにする。
「ちょっと待ってって言ってるでしょ」
手っ取り早く止めるにはこれが1番。ということでチョウちゃんにアイアンクローをおみまいする。
「イタい!コウくんイタいから!」
腕をタップしてくるチョウちゃんからはおかしなテンションが抜けているので離してあげてもいいのだけど、こっちの話を聞いてくれないことへの文句は言っておきたいのですぐには離さない。
「だったら待ってって言ってる僕の言葉をちゃんと聞いてくれるかな」
ちゃんと聞いてくれていればアイアンクローを受けずにすんでいたのに。
「聞く!聞くから!」
必死になって言うチョウちゃん。
だけど、そこまで強く力を入れているわけではないからそれほど痛くないはずなのに、相変わらず大げさだな。
ちなみに、チョウちゃんがアイアンクローをくらったタイミングですでにヒマワリちゃんは落ち着きを取り戻し、ちゃっかりとソファに座り直して素知らぬ顔をしている。
しかし、軽く震えながらユキさんの袖を掴んでいたりする。
話を聞いてくれるならそれでいいので、そのことには触れないでおいてあげよう。
アイアンクローをやめるとチョウちゃんは頭をおさえながらソファに座り直した。
「それで、どうしたの?」
すぐに聞けそうにないチョウちゃんの変わりにリンが聞いてきたので、疑問に思った点を聞いてみる。
「みんなでお風呂に入るとかリンやチョウちゃんは言ってるけど、この家のお風呂って1度に入れても2人ぐらいが限界の大きさだったよね?」
とはいっても、それは僕達が引っ越しする前の家でのことなので、3階建てに神の手で勝手に増築されたあとでは中の状況も変わっているかもしれない。というか確実に変わっているだろうけど、聞かずにはいられなかった。
「あ~。そのこと」
リンが落ち着いて答えているところを見ると、やっぱり家の中の構造も変わっていると思っていいだろう。
「フッフッフ!増築された際にお風呂は10人入っても大丈夫なくらいの大浴場に進化したのだ!だからここにいる全員で入っても問題なし!」
変なテンションが戻ってきたチョウちゃんは叫びながら立ち上がった。
「なるほどね」
そんな大きな大浴場に変わっているのは少し予想外だったけど、変わっていること自体は思っていた通りだったね。
「あれ?」
僕が驚かなかったことに逆に驚いたことにより、チョウちゃんの変なテンションはあっさりと霧散して僕へ驚きの表情を向けてきた。
「なんで驚かないの?」
「え?」
どうしてそんなことを聞いてくるのとばかりに聞き返す。
「いや。お風呂が大浴場に進化したと言われたのに、なんでそんなに落ち着いていられるの?」
「だってただの確認だから驚くことはなにもないよ」
「え?」
僕の言葉に驚きと戸惑いが入りまじったなんともいえない表情になっているので言ってあげる。
「いや、3階建てに増築されてる時点で中も僕達が暮らしていた時とは全くの別物になっていてもおかしくないとは思っていたからね。聞いたのはただの確認のためだよ」
「え~」
つまんなさそうにしているチョウちゃんにフッと笑いかけると、チョウちゃんは頬を膨らませた。
「で、お風呂には入るの?」
震えが止まったヒマワリちゃんが何事もなかった様子で聞いてくる。
「服を脱いだ姿を見せないことにはヒマワリちゃんに納得してもらえないのでしょ?」
「納得しない」
僕としてはここまで説明しても納得してもらえないことに納得出来ないのだけれど、とりあえず今はヒマワリちゃんに納得してもらうことを最優先するためにお風呂に入ることを了承する。
「僕もお風呂には入りたいから入るよ」
「そう。ならお風呂へ行こうね」
リンが腕を絡めてきた。
逃げる気もないし、新しくなったこの家のどこにお風呂があるかを知らないので、僕はリンに連れて行かれるまま歩きだした。
リンの唐突な提案に「なんで?」と一瞬思った。
しかし、今朝から色々あったせいでまだお風呂に入ってなかったし、服を脱いでヒマワリちゃんに見せないといけないということを考えるとついでにお風呂に入るのはありだと考え直し、頷こうとしたが、
『それだ!』
僕が返事をするより前にチョウちゃんとヒマワリちゃんが叫びながら立ち上がった。
いや、ヒマワリちゃんが立ち上がるのはわかるけど、なんでチョウちゃんまで立ち上がるのかな?
そんな思いとは裏腹に、2人のテンションはムダに上がっているようで、
「みんなでお風呂に入ろう!」
「おー」
チョウちゃんが拳を突き上げながら高らかに宣言すると、ヒマワリちゃんもノリノリで拳をあげた。
「ちょっと待って」
お風呂に入るのはいいのだけれど、リンとチョウちゃんの言葉の中に気になる点があったのでストップをかける。
「お風呂に入るぞ!」
「おー」
しかし、テンションが変な方向へ振り切ってしまっているチョウちゃんとヒマワリちゃんが止まる気配はないので、仕方なく強制的に手っ取り早く止めることにする。
「ちょっと待ってって言ってるでしょ」
手っ取り早く止めるにはこれが1番。ということでチョウちゃんにアイアンクローをおみまいする。
「イタい!コウくんイタいから!」
腕をタップしてくるチョウちゃんからはおかしなテンションが抜けているので離してあげてもいいのだけど、こっちの話を聞いてくれないことへの文句は言っておきたいのですぐには離さない。
「だったら待ってって言ってる僕の言葉をちゃんと聞いてくれるかな」
ちゃんと聞いてくれていればアイアンクローを受けずにすんでいたのに。
「聞く!聞くから!」
必死になって言うチョウちゃん。
だけど、そこまで強く力を入れているわけではないからそれほど痛くないはずなのに、相変わらず大げさだな。
ちなみに、チョウちゃんがアイアンクローをくらったタイミングですでにヒマワリちゃんは落ち着きを取り戻し、ちゃっかりとソファに座り直して素知らぬ顔をしている。
しかし、軽く震えながらユキさんの袖を掴んでいたりする。
話を聞いてくれるならそれでいいので、そのことには触れないでおいてあげよう。
アイアンクローをやめるとチョウちゃんは頭をおさえながらソファに座り直した。
「それで、どうしたの?」
すぐに聞けそうにないチョウちゃんの変わりにリンが聞いてきたので、疑問に思った点を聞いてみる。
「みんなでお風呂に入るとかリンやチョウちゃんは言ってるけど、この家のお風呂って1度に入れても2人ぐらいが限界の大きさだったよね?」
とはいっても、それは僕達が引っ越しする前の家でのことなので、3階建てに神の手で勝手に増築されたあとでは中の状況も変わっているかもしれない。というか確実に変わっているだろうけど、聞かずにはいられなかった。
「あ~。そのこと」
リンが落ち着いて答えているところを見ると、やっぱり家の中の構造も変わっていると思っていいだろう。
「フッフッフ!増築された際にお風呂は10人入っても大丈夫なくらいの大浴場に進化したのだ!だからここにいる全員で入っても問題なし!」
変なテンションが戻ってきたチョウちゃんは叫びながら立ち上がった。
「なるほどね」
そんな大きな大浴場に変わっているのは少し予想外だったけど、変わっていること自体は思っていた通りだったね。
「あれ?」
僕が驚かなかったことに逆に驚いたことにより、チョウちゃんの変なテンションはあっさりと霧散して僕へ驚きの表情を向けてきた。
「なんで驚かないの?」
「え?」
どうしてそんなことを聞いてくるのとばかりに聞き返す。
「いや。お風呂が大浴場に進化したと言われたのに、なんでそんなに落ち着いていられるの?」
「だってただの確認だから驚くことはなにもないよ」
「え?」
僕の言葉に驚きと戸惑いが入りまじったなんともいえない表情になっているので言ってあげる。
「いや、3階建てに増築されてる時点で中も僕達が暮らしていた時とは全くの別物になっていてもおかしくないとは思っていたからね。聞いたのはただの確認のためだよ」
「え~」
つまんなさそうにしているチョウちゃんにフッと笑いかけると、チョウちゃんは頬を膨らませた。
「で、お風呂には入るの?」
震えが止まったヒマワリちゃんが何事もなかった様子で聞いてくる。
「服を脱いだ姿を見せないことにはヒマワリちゃんに納得してもらえないのでしょ?」
「納得しない」
僕としてはここまで説明しても納得してもらえないことに納得出来ないのだけれど、とりあえず今はヒマワリちゃんに納得してもらうことを最優先するためにお風呂に入ることを了承する。
「僕もお風呂には入りたいから入るよ」
「そう。ならお風呂へ行こうね」
リンが腕を絡めてきた。
逃げる気もないし、新しくなったこの家のどこにお風呂があるかを知らないので、僕はリンに連れて行かれるまま歩きだした。
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