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8.往生際

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 光の文字で書いてあったのは、

『オールラウンダー』

 目をこすってもう1度しっかりと見直すも、

『オールラウンダー』

 やっぱりそう書かれているので見間違えではないのだろう。しかし、そうなると………。

 うん?うん。うぅん。う~ん?うんうんうん。

「いや。うんうん言ったって結果は変わらないしさっさと受け入れろ」か。

 うん。受け入れられるか!

 って落ち着け、僕。叫んだところで出た結果は変わらないし、このクラスがまだそうだと決まったわけじゃない。それに僕は平凡な一般人で凡人でモブなんだから、まさかそんな僕にあのクラスが出るわけがないんだから。それに僕ってまだどんなクラスがあるか全部知ってるわけじゃないんだし、神父さんとかに聞いたら案外、普通の誰でも持っている平凡なクラスです、なんて言われるかもしれないし。

 うん。そうだ。そうなんだよ。聞いてみないとわからないんだから大丈夫大丈夫。

 そう自分に言い聞かせながら、とりあえずまずは周りの反応を見てみる。

 みんな光の文字を見て驚きの表情で固まっていた。

 あ~うん。みんな。なんでそんなに驚いてるのかな?なんで固まってるのかな?そんなおかしなクラスじゃないはずでしょ?一般的な平凡で普通のクラスだよね?ねぇ?誰がそう言ってよ!

「ククク。現実逃避乙」って。

 現実逃避なんかしてない!みんなの反応がおかしんだ!

「やっぱり転生者に普通のクラスが出るわけなかったな」だと。

 まだ結果を聞いたわけじゃないんだからわからないだろ!

「じゃあ聞いてみろ」か。

 あぁ聞いてやるよ。

 僕は立ち上がると固まっている神父さんを見上げた。

「神父さま。このクラスは?」

 僕が問いかけると神父さんはハッとしてから再度光の文字を見つて少し考えたかと思うと、

「す、すいません。私は初めて見るクラスなのでわかりませんが、多分ですが、特殊系のクラスだと思います」

 見たことないのに特殊系だと思わないでよ!ちゃんと調べてから言ってほしいな!

 しかし、父さんや母さん、アル兄さんやカレン達は神父さんのその言葉に、わっ!、と盛り上がって喜んでいたが、僕の内心は落ち込み、周りの目がなければ膝をついて手を地面につけて落ち込んでいただろう。

 せめて、せめて調べてから特殊系と言ってくれ~。

 ホントに心の底からそう思うのだけど、せっかくみんな喜んでくれているのに、そこへ水をさすようなことなので流石にそう言えなかった。

「やっぱり転生者のクラスは特殊系か!」って。

 僕はそんなの望んでないんだけどな~。

 でも、わかっていた。ホントはわかっていたんだよ。この光の文字のオールラウンダーを見た時からこのクラスは特殊系だと。

 でもさ、根っからの平凡で凡人でモブな一般人の僕にはこれは受け止めきれない結果だった。だからこそ現実逃避した。それだけのことさ。

「なにカッコつけてるんだ?」って。

 別にカッコつけてるわけじゃないよ。ってか、別にカッコいいこと言ってたわけでもないし。さらにいえば、このクラスを受け入れたわけでもないと言っておこう!

「やっぱり往生際が悪い」ってか。

 そうだよ。僕は往生際が悪いんだよ。

 それに………。

 僕はもう1度光の文字、オールラウンダーのその奥を見つめた。

 どうやら父さん達には見えていないみたいだし、それについては放置でいいか。いちいち言ってこれ以上さらに混乱されても困るし。

 なんて思いながら光の文字を見つめていると、母さんに抱きしめられた。

「やったわね。ルイ」
「いいクラスを引いたな」

 父さんも頭を撫でてきた。

「おめでとう、ルイ」
『おめでとうございます、ルイ様』

 僕としては認めたくもないのでおめでとうとは言われたくなかったのだけど、アル兄さんやカレン達にまで祝福されてしまったので、ヤケになりながら笑顔を作り、みんなの祝福に答える。

「ありがとう」

 と答えつつも、やっぱり内心では落ち込む僕。

 しかし、何を言ったところでオールラウンダーというクラスが変わることなんてありえないので、1度諦めて飲み込むことにして、オールラウンダーというクラスについて考える。

 オールラウンダー。直訳すれば、万能、であり、何でも出来る職業、ということになるのだろう。

 異世界転生モノや転移モノでは最強として描かれていたり、器用貧乏として描かれていたりと評価が分かれたりするクラスだが、それも僕次第だったりする気がする。

 とりあえず、色んなクラスを見ていた神父さんが見たことないと言ったので、どんなクラスかは誰も知らないのだろう。

「神父よ。オールラウンダーとは一体どういうクラスなのだ?」
「先ほども申しましたが、私も初めて見るクラスなので、これから過去の記録を見返してみて、同じクラスを得た人が居ないかを探してみます。もし何か情報が得られれば侯爵様の屋敷に人を向かわせますので、少し時間をください」
「わかった」

 頷いた父さんは僕の頭を撫でた。

「では、クラスについては神父に任せるとして、帰るとするか」
「はい」
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