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37.どんな耳

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「はぁ」

 大きくため息を吐いたルーファさんは真剣な表情で僕達を見てきた。

「そうだよ。ルーキーイーターを警戒しているから来たってのも理由の1つだな。もちろん本命はお前達のことが気になったからだけどな」

 ニカッと笑いながらルーファさんはションゴンの頭に手をのせた。

「しかし、やっぱりルーキーを狙う組織がどこかに潜んでいる、ということでいいんだよな?」

 ションゴンから離れたルーファさんはアイスさん達に声をかけた。

「ほぼ確実でしょう」
「ダンジョンまでションゴンくん達をつけてきて、ダンジョン前で私達と合流したのを見て逃げた人物がいるからね」
「そいつが黒幕で間違いないわね」

 アイスさん達は頷きあった。

「なんか大事になってきたな」か。

 ホントだよね。

 冒険者になって初めてダンジョンに来ただけなのにこんなことになるなんて思ってもいなかったよ。

「ルーキーイーターの事件は中より外の方が多いから、奴らの拠点は外にあると考えるべきだろうね」
「しかし、外にあるとなると探すのはかなりの手間だぞ」

 めんどくさそうにため息を吐いたルーファさんにシファさんが苦笑を向けた。

「とりあえずギルドに報告するのが先でしょ」
「それもそうか。それじゃあ戻るか」

 ルーファさん達の中で結論が出たのか、僕達にそう言ってきたので僕達は頷き、街に向かって歩きだした。

「そういえば、ションゴン達はどこでルーキーイーターのことを知ったの?」

 歩き始めてすぐシファさんがションゴン達にそう問いかけた。

 それは僕も聞きたかったことなのでしっかりと答えを聞かせてもらおう。

「昨日、冒険者登録した時に周りの冒険者達が話していた会話で知ったのです」

 なるほど、と納得する反面、ちょっと待ってよ、と思うところもあった。

「どこに思うところがあるんだ?」って。

 昨日、ギルドの中にはそれなりの数の冒険者がいたから、僕達が冒険者登録したことでルーキーイーターの話題が出るのはわかるよ。
 でも、ギルド内は色んな冒険者の話し声でうるさかったし、僕が「ルーキーイーター」という言葉を聞いてないってことは僕達の近くの冒険者が話していたってわけじゃないってことだよね?

「あ~。確かにそう考えるとちょっと待ってって言いたくなるな」だろ。

 あのうるさいギルド内で「ルーキーイーター」の話題を話している冒険者の声を聞き分けるなんて、どんな耳してるんだよ!と、思いつつも、それでもションゴン達ならありえるかな?と思えている自分もいたりする。

「あのうるさいギルドでそれを聞き分けるってどんな耳してるの?」

 シファさんがあ然とした表情でションゴン達を見ている。

「シファでもムリなのか?」

 ルーファさんが少し驚きながらシファさんを見ていた。

「あいつがこういうことを話してるから盗み聞きしろっていう条件がつくなら出来ないことなないけど、不特定多数の中から自分達に関係ある内容を聞き分けろってなると流石にムリでしょうね」

 苦笑しながら肩をすくめるシファさんの言葉に、どれだけスゴいことをやってのけたのか理解したルーファさん達も驚きの目をションゴン達に向けた。

「えっと、ルーキーイーターを知った経緯はわかったけど、冒険者達の間でもそこまで正確な数字を知る人間は限られているわけで、そこらへんの情報はどうやって手に入れたの?」

 戸惑い気味にアイスさんが聞いてきた。

「それはもちろんカリスナさんとかからですよ」

 当然でしょ?とばかりに何気なしに言うカレン。

『あ~』

 カレンの言葉に僕やルーファさん達は納得した。

「そりゃあ、騎士団長に聞けば正確な情報が入ってくるよな」だね。

 それに「とか」って言ってるから多分諜報部の方からも情報をもらってると思うしね。

「それなら余計に正確な情報を持ってるだろうな」だね。

 というか、帰ってからカレンとションゴンが僕の側を離れてたのは、それを聞きに行ってたからなのか。

「だから、私達も知らなかった街中で子供が失踪している事件も知っていたのか」
「はい。僕達はどちらの事件の条件にあってますから」

「7~12歳までの子供で冒険者登録したばかりの新人冒険者。確かにどっちの事件の条件にも当てはまるな」だね。

 だからこそ今朝からションゴン達が少しピリついていたのか。

「ピリついていたのか?」か。

 ピリついていたよ。

 だから、今朝からカレンやキョウ、オリフィスにリコフィスのスキンシップがいつも以上に多かったしね。

「それってピリついているのか?」って。

 ピリついているからこその行動だからね。

 でも、初めてダンジョンに行くし、魔物と戦うからピリついていたのかと思っていたけど、まさかそんな理由だったなんてね。予想外だったよ。

「そのことをギルドで証言してくれるか?」
「もちろん」

 ションゴンの返事を聞いたルーファさんは頷いた。

「なら、早く街へ戻ろう」

 ということで、僕達は少しかけ足で街へと戻っていくのだった。
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