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49.あの人の存在

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 リスナー達に聞いても何もいい案が思い浮かばないことはわかったので、俺は1人でどうすればいいかを考える。

 そもそもだ。自然に出来る魔法石もあるとキュリアスは言っていた。つまり、自然に出来る魔法石はなんらかの理由で自然と魔力を得るわけだ。つまり、魔力を吸収しているわけだ。だったらそれと同じ要領でこのダイヤにも………。

 と、そこまで考えてなにか違うと思った。

 そもそも地中にある宝石は長い年月をかけて出来ていくもので、その出来ていく過程で魔力も一緒に吸収されているとしたら………。

 そう思い至ったので、ものは試しに再度土を取り出して錬金で炭素を取り出す。そして今度は錬金でゆっくりと熱圧縮しながら魔力を込めてみる。

〉レインがまたダイヤを作り出したぞ?
〉さっきより作るの遅くね?
〉なんかやってるっぽいな
〉なにか解決の糸口を見出したのか?
〉やっぱりすぐに壁を越えてしまうのか………
〉これだからチートは

 ゆっくりと魔力を込めながら熱圧縮して作ったダイヤはきちんと魔法石になっていた。しかし、

〉さっき作った魔法石より魔力の光が弱くね?
〉半分以下になってるな
〉ミスったのか?
〉ミスっちゃったのかwww?

 リスナー達の言う通り、付与で魔力を込めた魔法石より魔力による光の量が減っていた。

《いや。これはこれで一応成功だ》

 魔力の量が少なくとも、魔法石であることには変わりはない。

〉成功なのかよ
〉つまんね~
〉でも、一応ってことは完璧に成功したわけじゃないんだよな
〉ならぷちざまぁか?
〉ぷちざまぁってwww
〉それともざまぁ(小)とかwww
〉ざまぁ(小)って草

 何かにつけてざまぁと言いたがるリスナー達。なので、

《はいはい。ざまぁざまぁ》

〉むっちゃおざなりに言われた!
〉適当に言っていいものじゃねーんだぞ!
〉言うならもっと気持ちを込めろ!
〉こんな風に!
〉ざまぁ~!
〉ざまぁ~!!
〉ざまぁ~!!!
〉レイン!聞いてるか!?
〉おーい!

 聞くわけないので無視して考えを続けよう。

 新たに作った魔法石を見つめながら手から軽く魔力を放出してみる。

 もし、自然で出来た魔法石が魔力を吸収するならこうすれば吸収すると思ったんだけど、吸収している感じはない、か。

 やっぱり人工だからなのか、それとも魔法石の魔力が自然に回復することはないのか………。

 一人で考えていてもらちがあかないので、

「キュリアス。魔法石って自然に魔力を回復することってあるの?」

 キュリアスの方を見ると、なにかを考えていたキュリアスは慌てて反応した。

「いえ。魔法石の魔力は自然には回復しません」
「それは天然の魔法石でも?」
「そうですね。再度魔力を込め直すことは出来ても、自然に回復することはありません」

 自然に回復はしないのか~。それは困ったな~。

〉自然回復は出来ないけど充填は出来る、と
〉つまり電池と一緒か
〉込めるモノが魔力か電気かの違いだけだしな
〉そういう解釈でいいでしょうね

《そう考えると、やっぱり自然回復させることは出来ないのか?》

 リスナー達の言う通り、状況から考えて魔法石は電池のようなモノと位置づけていいだろう。

 電池は電気を込めれば溜め込むが、使っても使わなくても電気を放出していずれは使えなくなる。同じように魔法石も魔力は込めることは出来るが、使っても使わなくても魔力を放出してしまうのなら魔法石に結界などを付与したところで定期的に魔力を込めないと維持出来ない、か。

 魔力を込めることは苦ではない。付与すればいいだけの話なんだから。

 問題になるのは一度込めた魔力でどれだけ魔法が維持出来るかだ。
 一度込めることで長期間保つのなら何も問題ないのだが、すぐに魔力切れになってしまうと何度も魔力を込めに来ないといけなくなるから問題だ。

 そうなると、どれくらいの魔力を込めることが出来て、その魔力でどれくらい魔法が維持出来るか調べないといけないか。

 そう考えたが、スゴくめんどくさいことなので、やっぱりどうにか自然回復させる方法を考えたい。

 なので、魔法石を見ながらどうにかして自然回復出来ないか考える。

〉おーレインが悩んでる
〉悩め悩めwww
〉若いうちは苦労してなんぼや!
〉なんか古臭い考えのヤツ出てきたしwww
〉古臭いとはなんや!
〉古臭いやろ!
〉まぁ、多少の苦労は必要じゃね?
〉かー!これだから今どきの若者は!
〉うっせー!おっさん!
〉なんだ!?
〉やるか!

《人が考えてる時に喧嘩するなら出ていけ!》

〉すいませんでした!
〉ごめんなさい!
〉黙っています!
〉喧嘩両成敗www
〉一件落着www

 リスナー達の喧嘩は一件落着したかもしれないが、あいにくと自然回復については一件落着とはいかず、結局何も思いつかなかった。

《まぁ、魔法石の魔力の自然回復については追々考えるとして、今はこの地下室を完成させよう》

 ダイヤ数個で壁一面だから、残りの壁三面に床と天井でそれなりのダイヤが必要だから、ダイヤを次々と作り出して魔力や耐性強化などを付与して魔法石にする。
 先に壁と天井に魔法石を張り付けてその上から元通りにレンガ調の壁と天井の飾りをつけ直す。
 床はユファ婆さま達もいるということもあって全面一気にとはいかないので、まずは半面だけ魔法石を伸ばしてその上に大理石調の床板を乗せる。

「みんな。こっちに移動して」

 出来上がった床の方へみんな移動してもらってからもう半面も仕上げてしまう。

「とりあえず、仮地下室完成」

 俺の言葉にみんなが拍手をしてくれた。
 仮とはいえ地下室が完成したし、壁の耐久性チェックはまた今度でいいので、

「1度上に戻りましょう」
「もういいの?」
「はい」

 地下室を出て地上に戻ってきたのでとりあえず転移門の扉は撤去する。

「扉は撤去してしまうのですか?」

 リアナイズが少し残念そうに聞いてきた。

「今作った地下室は仮だから耐久性とかのチェックをしないと使えないし、耐久性のチェックをする前に入られると困るから撤去します」

 もちろん転移門の効果をを消して置いとくことも出来ないことはないんだけど、何らかの原因で転移門の効果が復活した場合、最悪は生き埋めなんてこともある。

 なので、転移門を撤去してしまった方がいいのだ。

「そうですか。扉の魔法について色々と調べてまたかったのですが、残念です」
「耐久性のチェックが終わったらまたつけ直すので、調べるのはその時にしてね」
「わかりました」

〉リアナイズの落ち込みようが半端ないwww
〉それだけ扉の魔法が気になってたんだろうなwww
〉見たことない魔法だから気になるのも仕方ないwww
〉だからってここまで落ち込まんでもwww
〉レインがいれば何度でも見れるんだしなwww
〉ホントそれなwww

 リスナー達のコメントにそれもそうだと思いながらリアナイズには苦笑しておく。

「シーナ。外行こ」

 俺がそう言うと、シーナはガイアスとアイコンタクトを取った。

〉おっ?
〉なんか意味深なアイコンタクト
〉なんだ?
〉もしかして二人はデキているのか?

《違うだろ》

〉違うのか?
〉じゃあなんのアイコンタクト?
〉どういう意味があるんだ?

 本気で分かってないみたいなのでヒントを出してやる。

《外に出るってことは訓練場に出るってことだ。そして、訓練場では騎士達が訓練をしている》

〉はっ!
〉つまり!
〉そういうことか!
〉どういうことだ?
〉わからないのか?

 まだわからないなんて困ったヤツ等もいるとはな。

〉騎士達の中に危険人物が混ざっているだろ?
〉!!!
〉そうだった!
〉あの人の存在を忘れてたな!

 ようやく思いついたみたいだな。

《そういうことだ》
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