写真コンテスト

アオト★★

文字の大きさ
上 下
4 / 6

第四話「思い出の場所」

しおりを挟む
「写真コンテスト」
自作小説コラボ企画第二弾です
今回は「学園パラダイス」木下大地×「虹色の夏」羽田優里の出会いの話です

第四話「思い出の場所」

お昼を食べ終えた俺達は再び写真を撮ることにした。
俺が次は何を撮ろうかと思っていたら子供の声がした
「お母さん、痛いよ~」見ると子供が転んでいる。
「あなた大丈夫?」優里がすぐに泣いてる男の子の傍に駆け寄った。
「ひっくひっく」泣いてる男の子に「すみませ~ん」男の子の母親らしい女性の声がした。
「直哉大丈夫?ほら、もうカメラなんて持って走るから」そう言って男の子を抱き起した。
「ほら、怪我してるじゃない。絆創膏・・あっ!」女性が何かに気がついた
「・・・・カメラが・・・」そう女性は言った・・・。
「あの、大丈夫ですか?」優里が女性に声をかける・・
「あっ、ごめんなさい。この子の母親です。すみません・気が付かなくて」
「はい・・あの・・そのカメラ・・・」優里が壊れたカメラを見ている・・。
「壊れちゃったのね・・・仕方ないわ・・・。」女性が悲しそうな顔をしてカメラを
見つめている。「これじゃ、もう写真は撮れないわ・・・。」女性が涙ぐんだ・・・
「ここのイベントのルールだと、持参したカメラじゃないと写真コンテストには
出られませんからね」俺が言った。「うん・・」優里さんが頷いた。
「そうなんですよね・・・すみません。私達は大丈夫だから気にしないで。
本当にごめんなさい」女性が男の子の手をひいて立ち去ろうとしたのを優里さんが止めた。
「あの、よかったらこれ、使って下さい!!」そう優里さんが言って女性に自分の持っていたデジカメを渡した・・。
「えっ・・・でも」女性が戸惑っている。「いいんです。私は彼のカメラを共同で
使うんで。どうぞ使って下さい・・。そう優里さんが俺を指さして言った。
その言葉に女性はついに泣き出した・・・
「ごめんなさい。有難う!!本当に有難う。」女性が優里さんに頭をさげた。
「これで・・・これで家族三人の思い出の場所で成長したこの子の写真が撮れます!
本当にありがとう」女性が泣いている。優里さんがそっと女性の背中をさすった。
「何かありましたか?良ければあたしたちに話してくれませんか?」
「はい・・。夫が最近交通事故で亡くなりました。その夫はカメラで写真を撮るのが
大好きでした。夫は数年前にもこの写真コンテストに参加しているんです
私と、まだ赤ん坊だったこの子と家族三人で参加しました。

当時は誰でも自由に参加出来たんです。それで産まれたばかりのこの子と妻の私を連れて
夫はこのコンテストに参加しました。
この公園にある
大きな森の片隅にあるブランコを探しているんですけど数年前のことなので
どこにあるのかわからなくて・・
そのブランコに乗って赤ん坊だったこの子を私が抱いた写真を初めてカメラで夫が撮りました。
それがコンテストで優勝したんです。それがこの子が産まれてから初めて家族三人で
過ごした楽しい思い出になりました。
もう一度このイベントに参加して
五歳に成長した我が子と妻の私の写真を撮りたいと夫が亡くなる前に言ってました。
だから妻の私が夫の代わりにせめて、この写真コンテストにもう一度参加して
この公園にあるブランコに乗るこの子を撮りたかったんです。
この話を俺と優里さんは黙って聞いていたけど優里さんが言った。

「そういう事なら、あたしたち、協力しますよ。
奥さんと男の子の写真をあたしが撮ってもいいですか?是非撮らせてください!!」
その優里さんの提案に俺も賛成した。
「はい、俺達で良ければ是非お願いします」
俺がそう言うと女性はその場で泣き崩れた・・。
「有難う!!!本当に有難う」と女性は泣きながら言った。

つづく
しおりを挟む

処理中です...