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第一章 チャットルーム
第五話 11月22日(土)
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杏がログインしました。
杏:『ナツキ、いる?』
杏:『ナツキ…』
杏:『忙しいのかな?』
ナツキ:『すまん、ちょっと席離れてた。どした?』
杏:『高野さん。例の彼氏かどうかわからないって人ね、彼氏かどうかはっきりさせる前に振られちゃったの(泣)』
ナツキ:『意味がわからんぞ。付き合ってとか、そういう決定打を打って断られたんではないってことか?最近音沙汰なかったから、うまく行ってたのかと思ってたが…』
杏:『今日までは私だってそう思ってたよ(泣)今週は平日にも二回晩御飯行って良い感じで別れたし、今日だって一日ショッピングモールでデートしたんだよ。でも別れ際に、もう会わないって言われたの!』
ナツキ:『なんで?理由聞いたか?』
杏:『うん、私が悪かったの…。高野さんと打ち解けてきて、ついナツキに話す感覚で中国人の愚痴言っちゃったんだ。それが不快だったみたい。』
ナツキ:『大袈裟な。ただの愚痴だろ?仕事してるやつなら、多少なりとも共感できると思うがな。』
杏:『中国人にネチネチ言われてる原因とか考えたことあるのかって。仮にも仕事の先輩に、日常的に注意を受けてるんだとしたら、それを改善しようとするべきだって。』
杏:『あの中国人はさ、何でも何時でも先回りして、石橋を叩きに叩きまくって仕事する人だからさ、私みたいに感覚的に仕事進めるタイプの人間を見てたらハラハラするんだと思う。それで横からああだこうだと口出しするんだよ。私はそれが堪らなく嫌なんだけど、確かに中国人の言葉にハッとさせられる時もあるんだ。私の段取りが悪くて、中国人に尻拭いをしてもらったことも中にはあった。』
杏:『高野さんは、私がそういうところを棚にあげて、中国人の嫌なところを愚痴ってたのが不快だったみたい。私は、中国人のことを国に帰れって言うけどさ、本当に帰ったら困るのは私のはずだって。』
杏:『それにね…外国人が他所の国に住んで、現地人と対等に働くことがどれだけ大変か考えたことあるのかって怒られた。人一倍良い仕事をしないと、ただでさえビザの手続きなんかで会社にとって面倒な存在なのに、不足があれば直ぐに現地人と替えられてしまうって。そんな思いで石橋を叩く人間を、君は嗤うのかって。』
ナツキ:『なんかもう…救いようがないくらい落とされたな。』
杏:『正論なだけに何も言い返せなかった。悔しくて悲しくて…。』
ナツキ:『正論かもしれないけどさ。確かに外国で仕事するって大変だけど。国に帰れってのは、酷い言い方かもしれないけど。でも、ちがうだろ?もしそれが好きな女の口から出た言葉だったら、そんなこと言うもんじゃないって諫めたら良いだけの話だろ?そこでもう会いたくないって話になるんならさ、杏への気持ちがそれまでだったってことなんだろ。』
杏:『そっか、そうだよね…』
ナツキ:『杏だって、何の改善努力もしなかったのか?ちがうだろ?理不尽な怒られ方をしてきたんだろ?中国人にしろ、高野とやらにしろ、正論を言えば良いってもんじゃない。言い方があるだろ。相手を傷つける言い方をしなくたって、ちゃんと伝わる言い方があるはずだ。それをしなかったところに、意地の悪さや悪感情があるんだよ。』
ナツキ:『杏だけが悪いわけじゃない。そんなことでヘコんでやるな。』
ナツキ:『俺は知ってるよ。しんどくても、好きな仕事じゃなくても、毎日クタクタになっても、必至で働いてる杏のこと知ってる。仕事を好きになりたいと願ってる杏の気持ちも知ってる。』
杏:『ありがとう。ごめんね、涙が止まらなくて文字が打てなかった。』
ナツキ:『泣くなよ。こんなことで泣くな。涙がもったいない。』
ナツキ:『泣くなって。』
杏:『ごめん。でも、もったいなくなんてないよ。高野さんのせいで泣いてるんじゃないもん。ナツキの言葉が嬉しくて泣いてるの。』
ナツキ:『ならいいけどさ。』
杏:『私、ナツキに惚れそう…』
ナツキ:『田舎妻になりたいならどうぞ(笑)もれなくトゲトゲ植物の世話もついてくるぞ』
杏:『トゲトゲ?』
ナツキ:『そう。うちの植物は、大抵尖った葉を持ってるからさ、水やりだけでも命がけだぞ(笑)葉先が刺さって顔や手から血が出るなんて日常茶飯事だし、もし目に刺さった日には大惨事だからな。』
杏:『それは恐ろしいね…(汗)田舎妻は遠慮します(笑)』
ナツキ:『だろ?俺に嫁の当てがないのは、うちの植物たちのせいだ。』
杏:『植物のことは確かに怖そうだけど、でもナツキ自身は魅力的な人だと思うよ。外見はわからないけど、中身は私が保証する!』
ナツキ:『ありがとな。じゃあそろそろ仕事に戻るな。』
杏:『長々とごめんね!本当にありがとう。今日ほどナツキの存在をありがたく思った日はないよ。』
ナツキ:『元気出せよ。じゃあおやすみ。』
杏:『うん、おやすみなさい。』
ナツキがログアウトしました。
杏:『ナツキ、いる?』
杏:『ナツキ…』
杏:『忙しいのかな?』
ナツキ:『すまん、ちょっと席離れてた。どした?』
杏:『高野さん。例の彼氏かどうかわからないって人ね、彼氏かどうかはっきりさせる前に振られちゃったの(泣)』
ナツキ:『意味がわからんぞ。付き合ってとか、そういう決定打を打って断られたんではないってことか?最近音沙汰なかったから、うまく行ってたのかと思ってたが…』
杏:『今日までは私だってそう思ってたよ(泣)今週は平日にも二回晩御飯行って良い感じで別れたし、今日だって一日ショッピングモールでデートしたんだよ。でも別れ際に、もう会わないって言われたの!』
ナツキ:『なんで?理由聞いたか?』
杏:『うん、私が悪かったの…。高野さんと打ち解けてきて、ついナツキに話す感覚で中国人の愚痴言っちゃったんだ。それが不快だったみたい。』
ナツキ:『大袈裟な。ただの愚痴だろ?仕事してるやつなら、多少なりとも共感できると思うがな。』
杏:『中国人にネチネチ言われてる原因とか考えたことあるのかって。仮にも仕事の先輩に、日常的に注意を受けてるんだとしたら、それを改善しようとするべきだって。』
杏:『あの中国人はさ、何でも何時でも先回りして、石橋を叩きに叩きまくって仕事する人だからさ、私みたいに感覚的に仕事進めるタイプの人間を見てたらハラハラするんだと思う。それで横からああだこうだと口出しするんだよ。私はそれが堪らなく嫌なんだけど、確かに中国人の言葉にハッとさせられる時もあるんだ。私の段取りが悪くて、中国人に尻拭いをしてもらったことも中にはあった。』
杏:『高野さんは、私がそういうところを棚にあげて、中国人の嫌なところを愚痴ってたのが不快だったみたい。私は、中国人のことを国に帰れって言うけどさ、本当に帰ったら困るのは私のはずだって。』
杏:『それにね…外国人が他所の国に住んで、現地人と対等に働くことがどれだけ大変か考えたことあるのかって怒られた。人一倍良い仕事をしないと、ただでさえビザの手続きなんかで会社にとって面倒な存在なのに、不足があれば直ぐに現地人と替えられてしまうって。そんな思いで石橋を叩く人間を、君は嗤うのかって。』
ナツキ:『なんかもう…救いようがないくらい落とされたな。』
杏:『正論なだけに何も言い返せなかった。悔しくて悲しくて…。』
ナツキ:『正論かもしれないけどさ。確かに外国で仕事するって大変だけど。国に帰れってのは、酷い言い方かもしれないけど。でも、ちがうだろ?もしそれが好きな女の口から出た言葉だったら、そんなこと言うもんじゃないって諫めたら良いだけの話だろ?そこでもう会いたくないって話になるんならさ、杏への気持ちがそれまでだったってことなんだろ。』
杏:『そっか、そうだよね…』
ナツキ:『杏だって、何の改善努力もしなかったのか?ちがうだろ?理不尽な怒られ方をしてきたんだろ?中国人にしろ、高野とやらにしろ、正論を言えば良いってもんじゃない。言い方があるだろ。相手を傷つける言い方をしなくたって、ちゃんと伝わる言い方があるはずだ。それをしなかったところに、意地の悪さや悪感情があるんだよ。』
ナツキ:『杏だけが悪いわけじゃない。そんなことでヘコんでやるな。』
ナツキ:『俺は知ってるよ。しんどくても、好きな仕事じゃなくても、毎日クタクタになっても、必至で働いてる杏のこと知ってる。仕事を好きになりたいと願ってる杏の気持ちも知ってる。』
杏:『ありがとう。ごめんね、涙が止まらなくて文字が打てなかった。』
ナツキ:『泣くなよ。こんなことで泣くな。涙がもったいない。』
ナツキ:『泣くなって。』
杏:『ごめん。でも、もったいなくなんてないよ。高野さんのせいで泣いてるんじゃないもん。ナツキの言葉が嬉しくて泣いてるの。』
ナツキ:『ならいいけどさ。』
杏:『私、ナツキに惚れそう…』
ナツキ:『田舎妻になりたいならどうぞ(笑)もれなくトゲトゲ植物の世話もついてくるぞ』
杏:『トゲトゲ?』
ナツキ:『そう。うちの植物は、大抵尖った葉を持ってるからさ、水やりだけでも命がけだぞ(笑)葉先が刺さって顔や手から血が出るなんて日常茶飯事だし、もし目に刺さった日には大惨事だからな。』
杏:『それは恐ろしいね…(汗)田舎妻は遠慮します(笑)』
ナツキ:『だろ?俺に嫁の当てがないのは、うちの植物たちのせいだ。』
杏:『植物のことは確かに怖そうだけど、でもナツキ自身は魅力的な人だと思うよ。外見はわからないけど、中身は私が保証する!』
ナツキ:『ありがとな。じゃあそろそろ仕事に戻るな。』
杏:『長々とごめんね!本当にありがとう。今日ほどナツキの存在をありがたく思った日はないよ。』
ナツキ:『元気出せよ。じゃあおやすみ。』
杏:『うん、おやすみなさい。』
ナツキがログアウトしました。
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