14 / 44
魔法対抗試合編
第十四話 : 一年生春の対抗魔法試合
しおりを挟む中央の試合場を囲む円形の観客席には、日中にも関わらずジョッキを片手に談笑している者や、ローウェストのドレスを身にまとい扇子を扇ぐ貴婦人など、様々な身分の人達が席についていた。
貴族、平民、保護者、生徒、と東西南北で席が区分けされているが、どのエリアもすでに満席で始まる前から大きな盛り上がりを見せていた。
一方、中央の試合場に集まっている一年生は、全体的に重苦しいと言うか、気が重いというか。でもまぁ、無理もない。ここの生徒の大半が貴族なんだ。今回の大会、結果を残さなければ家名が傷つく⋯的な事でも考えてるんだろう。ったく、大事な家名を子供に背負わすなよ。まぁ中には、余裕そうなやつもいるけど⋯⋯
生徒エリアの後部末端に座る俺は、試合場の中央に視界の焦点を当てた。
そこには、眩い金色の髪を風になびかせ、隣にいる男と仲良く雑談する王子、カインがいた。
他の生徒と同じ服にも関わらず、なんなんだよ、あの溢れ出る王族オーラは。いや、王子なんだけど⋯⋯にしてもこれは、目立ちすぎだろ⋯
身分問わず、多くの観客がカインに視線を向けている。王子という位に加え、遠目からでも分かるその圧倒的な美。そんな眉目秀麗、そして成績優秀なカインに、心奪われる女性陣も少なくないだろう。現に俺の斜め前の女生徒達は「カイン様~」とかなんとか言って、自作のカインの名前が書かれた扇子を大きく振っていた。
そんな、学校でも世間でも人々の心を掴ませるカインだが、彼とは別にもう一人。観客の目を引く生徒がいた。それが―――
「ロイ~!!!」
俺の自慢のかわいい弟、ロイ-クレシスだ。
周りの生徒が不安や緊張の面持ちをする中、一人冷静に、落ち着いた表情をしていた。いや、あれは単に人見知りしてるだけか⋯?まぁとりあえず、いつも通りで安心したな。
ホッとため息をついた俺は、今度はロイに視線を送る人々に注目した。
入学して一ヶ月、ロイは段々と学校生活に馴染んでいた。未だに警戒心は強いようだが、最初の事件以降、ロイが誰かと揉めたという話は聞いていない。周りの貴族も、一ヶ月も経つと慣れていったのか、今ではロイの髪色を見て小言を言う人は極端に少なくなった。
この調子で、友達をじゃんじゃん作って順風満帆な学校生活を送ってほしい。そう思う反面、ロイが俺から徐々に離れていくかもしれないというのは、少し⋯いや、だいぶ寂しい。
ロイに眼差しを向ける貴族や一般人は、まだその瞳に差別的な思想を宿していた。しかし、他の生徒達に関しては、そんなのはもうどうだっていい。「黒髪だ」「平民だ」とは決して言わず、ただ純粋に、“首席”のロイに皆が期待を寄せていた。
にしても、マジで良かったぁ⋯⋯俺と違ってロイは首席だ。だからその分風当たりも強くなるかもと心配していたが、杞憂だったみたいだな。
「あっ、レイ!そこに居たのか!」
観客席を見回していた俺は、下方から聞こえてきた、掠れ気味の声に視線を落とした。そこにいた男は、俺と目が合うと同時にカメラを抱え、勢いよく階段を駆け上がってきた。
「全然見つからないと思ったら、まさかこんな端にいたとはね」
「すまん、ウィーリア。空いてたのがここしかなかったんだ」
そう言いながら俺が横に詰めて場所を空けると、ウィーリアはその場にすとんと腰を下ろし、肩を上下に動かしながら、あがった息を必死に整えていた。
「君の弟、緊張してるの?」
誰ともつるまず一人佇むロイを見つけ、尋ねてきたウィーリアに、俺は首を横に振った。
「いや、あれはどちらかと言うと早く帰りたいって顔だな」
俺の返事を聞いたウィーリアは、目を丸くし、困ったようにため息をついた。
「おいおい、これはただの大会じゃないんだぞ⋯」
その言葉に俺は首を傾げた。
「それ、どういうことだ?」
しばらく考える素振りをした後、「実は⋯」と耳元で囁かれた言葉に俺は驚き、立ち上がった。
「はぁ!?騎士団はまだしも、魔法師――」
「ちょちょちょっ!レイ、声大きい!!」
「あ、わっ、わるい!」
慌てて俺の口を塞いだウィーリアは、俺の声で向けられた視線をやり過ごすまでのしばらくの間、その手を離さなかった。
『この大会、“騎士団”と“魔法師団”の人が見に来てるんだ。有望な生徒を見つけて、その場でスカウトするらしい』
“魔法師団”―――ウィーリアの口から出たその言葉は、俺の頭を真っ白に染め上げた。
206
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
正義の味方にストーカーされてます。〜俺はただの雑魚モブです〜
ゆず
BL
俺は、敵組織ディヴァイアンに所属する、ただの雑魚モブ。
毎回出撃しては正義の戦隊ゼットレンジャーに吹き飛ばされる、ただのバイト戦闘員。
……の、はずだった。
「こんにちは。今日もお元気そうで安心しました」
「そのマスク、新しくされましたね。とてもお似合いです」
……なぜか、ヒーロー側の“グリーン”だけが、俺のことを毎回即座に識別してくる。
どんなマスクをかぶっても。
どんな戦場でも。
俺がいると、あいつは絶対に見つけ出して、にこやかに近づいてくる。
――なんでわかんの?
バイト辞めたい。え、なんで辞めさせてもらえないの?
――――――――――――――――――
執着溺愛系ヒーロー × モブ
ただのバイトでゆるーく働くつもりだったモブがヒーローに執着され敵幹部にも何故か愛されてるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる