兄嫁〜あなたがくれた世界で〜

SAKU

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十六章

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夜が明けた。
カーテン越しの光が静かに部屋に落ちる。

大我は枕元の携帯を手に取りながら、
ゆっくりと深く息を吐いた。

(……落ち着け。
 昨日のは……ただの焦りだ。
 冴夢ちゃんが少し危なそうに見えただけだ。)

自分に言い聞かせるみたいに
手で顔を覆った。

(……あれは兄貴の嫁。
 兄貴が命がけで守った相手だ。
 俺は……守るだけでいい。)

胸が、まだ少し痛い。
でもそれを押しつぶすように、
大我は心に固い蓋をした。

— “俺は平気だ”
そう決めた。

だって、そうするしかないから。
そうしないといけないから。

(……大丈夫。
 いつも通りでいけば……大丈夫だ。)

──────────────────────────

同じ頃。

冴夢の部屋。

布団の中で丸くなったまま、
冴夢はまだ自分の胸に手を当てていた。

(……どうして……
 昨日の大我……あんな顔……あんな声……)

思い出すだけで、胸がきゅうっと締め付けられる。

ずっと“家族”だった。
世那が残した、大事な家族。
いつまでも、そう思っていた。

でも——
昨日の夕日の中で大我が走って来たあの瞬間。

(……もう“家族”じゃない……)

胸の奥が熱くて、苦しくて、
息の仕方が分からなくなった。

(……大我は……
 “大人の男の人”なんだ……)

触れそうになった手。
息の乱れた声。
冴夢を見たあの目。

全部が、知らない感情を連れてきた。

冴夢は布団の端をぎゅっと握る。

(わたし……子どもじゃいられないんだ……
 大我の前では……もう……)

そう気づいてしまった。

けれど、同時に胸を刺す痛みがあった。

(……でも……
 大我は世那くんの弟で……
 わたしの義弟で……)

沈んだ小さな声が布団の中に落ちる。

(大我は多分……
 わたしを“義姉”で“妹”って思ってる……
 この気持ちは……きっと「迷惑」なんだ……)

胸がしくしく痛む。
涙が出るほどじゃないのに、
泣きたいみたいに苦しい。

(……どうしよ……
 会うの……こわい……
 でも……会いたい……)

そんな矛盾のなかで、
冴夢はゆっくり起き上がった。

今日も“大我がいる朝”。
でももう、昨日とは違う朝。

──────────────────────────
 ーキッチン
2人が選んだのは“いつも通り”
いつもと同じ香り。
コーヒーの湯気。
トースターの小さな音。
静かな朝の空気。

なのに——
その“いつも”の中でもう2人ともが息がしづらかった。

──────────────────────────

 ー夜の居酒屋

久しぶりの再会でも、笹本聖ささもとひじりは昔のままだった。

「おい大我!!
 顔つき固すぎるだろ。
 もっとリラックスしろって~」

と、肩を叩いて笑う。

大我は苦笑しながら席についた。

「……久しぶり。」

聖は店員に注文を済ませると、
すぐににやっと笑った。

「で、最近どうだ?
 仕事、上手くいってんのか?」

「仕事は順調。
 大っきい仕事、任せてもらえてる。」

「おお、さすが“KURURUGIくるるぎのホープ”」

聖はビールをあおりながら言う。

「枢木の“大型案件”かぁ。
 あの規模は化け物だぞ。
 プレッシャーえぐそう。」

大我はグラスを軽く揺らした。

「……プレッシャーもあるけど、やりがいはあるね。」

「だよなぁ~。
 おまえのそういうとこ、昔からすげぇと思うわ。」

そこまでは、ただの昔話。

でも——
聖ひじりは続けた。

「で。仕事の話はこのへんでいいとして。」

「……は?」

「本題はそこじゃねぇよ。」

聖は大我の顔を真正面から見た。

「——冴夢ちゃん、どうした?」

グラスを置く音が、小さく響いた。

大我の指が止まる。

聖は笑っていない。
大学時代からの“鋭い目”になっていた。

「おまえの顔見りゃ分かる。
 ……何かあったな。」

大我は言葉を探した。
でも喉がつまって出てこない。

聖はゆっくり息を吐いた。

「大我。
 おまえ、我慢してんだろ。」

「……我慢って……何を……」

「嘘つくな。」

沈黙が落ちる。

店のざわめきの中で、
ふたりの席だけが切り離されたみたいに静かだった。

聖は低く、静かに言った。

「冴夢ちゃんのこと——
 “何にも思わない”って顔じゃねぇよな?お前。」

大我の肩がわずかに震えた。

聖は続ける。

「ずっと守ってきたんだろ。
 兄貴の嫁で、兄貴が愛してた子で、
 ……自分の“守るべき家族”だって。」

大我は唇を噛む。

(……分かってる……分かってるよ……)

聖はグラスを置いて、軽く笑った。

「でもな、大我。」

「人ひとり“女”として見るようになる瞬間って、
 俺も経験あるけど——
 一回気づいたら、もう戻れねぇぞ。」

大我の心が揺れた。

聖は、トドメをゆっくり刺す。

「で――
 おまえ、もう戻れてねぇ顔してる。」

──────────────────────────

グラスを握る手が強くなる。

胸が痛い。
息が苦しい。
だけど、逃げたくない。

聖は、少しだけ優しい声に戻して言った。

「なぁ大我。
 自分責めんなよ。」

「兄貴だって……
 お前が幸せにしようとしてるなら、
 絶対笑って見守るだろ。」

その言葉が、大我の胸の奥に直接落ちた。

大我は視線を落としたまま、
震える声で一言だけ漏らした。

「……俺なんか……
 好きになっちゃ、いけないんだよ……」

聖は、静かに首を振った。

「“好きになった”んだよ、大我。
 もう、なっちまってるんだよ。」

「自分で“いけない”って言っても——
 心臓の方が勝手に決めてんだよ。」

大我は息を飲んだ。

ほんの少しだけ、
胸の苦しさがほどけた気がした。

──────────────────────────
大我からのメッセージが届いたのは、
シャワーを終えて髪を乾かしていたときだった。

『帰り遅くなる。先寝てて』

(……そっか……)

文面は短いのに、
胸の奥が小さく沈む。

昨日から、
“大我の声”と“大我の目”が頭から離れない。

(……どうしたらいいの……
 わたし……大我を見れなくなる……)

スマホを伏せた瞬間。

震える。

ーー着信:美琴

「……美琴?」

『冴夢、絶対なんかあったでしょ!今日さぁ、授業中ずっと世界が終わるみたいな顔してたよ!』

冴夢はぎゅっとスマホを握った。

「……美琴……あのね……」

『うん、話しな?全部聞くよ』

美琴の声が、
胸の奥の絡まった糸をゆっくり解かしてくれる。

冴夢は深呼吸した。

「……あのね……ちょっと重い…かもしれないけど…
 わたし、小さいころ……」

──────
そこから、冴夢はゆっくり語り始めた。

・母のこと
・家に居場所がなかったこと
・世那がくれた“家族”の温度
・冴夢が守られた時間
・その先の喪失
・そして“大我”という存在

言葉にするたび、胸が痛む。
でも、美琴は一言も遮らずに聞いてくれた。

『……そっか……冴夢、そんな……』

震えた声。
彼女の優しさがそのまま響いてくる。

冴夢は涙をこらえながら続けた。

「昨日ね……
 大我が走ってきて……
 “冴夢ちゃん大丈夫か”って……
 すごい顔してて……
 なんか……知らない……って思って……」

『知らない?』

「うん……
 あれは……“家族の顔”じゃなかった……
 “大人の男の人”だった……」

胸に手を当てる。

「それに気づいたら……
 なんか……苦しくて……
 怖くて……」

美琴はゆっくり息を吸い込んだ。

『冴夢。その苦しさはね……
 “気づいちゃった瞬間の苦しさ”だよ。』

「気づいた……?」

『うん。
 “彼が男に見えてしまった”ってこと。』

冴夢の喉が震えた。

(……そうなんだ……
 わたし……
 わたし、大我を……)

でも胸には、もう一つの重さがある。

「……でも……
 大我は世那くんの弟で……
 わたしの義弟で……
 だから……この気持ちは迷惑だと思う……」

その瞬間、美琴の声が優しくも鋭くなる。

『冴夢。
 ひとつだけ言わせて。』

『——恋は迷惑じゃない。
 “相手にとって迷惑な相手”には、
 胸は絶対に反応しない。』

冴夢の呼吸が止まった。

美琴は続ける。

『今日の話聞いて確信した。
 バイトの迎えの時も思ったけど。
 枢木さん、言えないだけで
 冴夢のこと“女として”見てるよ。』

「っ……!」

耳が熱い。
胸が暴れる。
涙がにじむ。

(……そんな……はず……)

否定しようとした瞬間。

『昨日の反応だよ。
 大我くん、冴夢に男が声かけたら
 あんな全速力で来る?
 あんな声出す?
 顔……真剣すぎたって言ってたよね?』

冴夢の指が震えた。

『それたぶんね。
 “守る”じゃなくて——
 “取られそうで怖い”って顔だよ。』

胸に落ちたその言葉は、
痛みと同じくらい温かかった。

冴夢はうつむいたまま小さくつぶやいた。

「……美琴……
 わたし……どうしたら……」

美琴は優しい声で言った。

『無理しなくていい。
 “すぐ答え出さなきゃ”なんてしなくていい。』

『ただね——
 冴夢が感じたあの胸の痛みだけは、
 ぜったい嘘じゃないよ。』

冴夢の目から、
ぽたりと涙が落ちた。

美琴は明るい声に戻して言う。

『ほら。泣いたらスッキリするでしょ。
 また明日話そ。ひとりで抱えんな。』

「……うん……ありがとう……美琴……」

通話が切れたあとも、
冴夢の胸はじんわり温かかった。

(……迷惑じゃ……ないの……?)

(……大我……)

静かな部屋の中で、
冴夢は胸を抱えて小さく泣いた。

その涙は、苦しさと、
ほんの少しの“救い”が混ざっていた。

──────────────────────────

居酒屋を出た瞬間、
冷たい夜風が火照った顔を撫でた。

(……飲みすぎた……)

足元が少し揺れる。
聖に核心を突かれた胸の熱が、酒に溶けて残っている。

(……冴夢ちゃん……)

言葉に出した瞬間、
胸の奥がじわっと痛む。

(……顔見れんのか……俺……)

でも帰らなきゃ。
帰らないわけにはいかない。
“家には冴夢がいる”から。

その一歩を踏み出した。

──────────────────────────

ガチャ…と鍵が開く音。

冴夢はソファでクッションを抱いて
本を読んでいたが——

視線を上げた瞬間、
胸が跳ねた。

「……大我?」

大我の頬は赤く、
目は少しとろんとし、
ネクタイはゆるんでいて——

いつもより“大人の男”がむき出しになっていた。

大我は靴を脱ぎながら
少し遅れた声で答える。

「……ただいま……冴夢ちゃん……」

その“ちゃん”が、いつもより甘い。

(……声が……酔ってる……?お酒飲むけど、酔って帰って来たのなんて今までなかったのに)

距離を取らなきゃと思うのに、
体が逆に固まった。

大我はふらりと近づきながら、
ソファの背に手をついた。

(近い……いつもより……近い……!)

「……あ、あの、大我……だいじょうぶ……?」

大我は少し笑った。

「大丈夫……に見える?冴夢ちゃん……」

声が低い。
酔いのせいで抑制が少し抜けてる。

冴夢は思わずクッションをぎゅっと抱きしめた。

(……なに……この感じ……)

──────────────────────────
大我は冴夢の顔をじっと見る。

普段なら逸らす距離。
普段なら“守るための義弟の顔”に戻る距離。

でも今日は——
視線が止められなかった。

(……きれいだな……)

言いかけて、
唇を噛んだ。

心の中の言葉が漏れそうで怖い。

だけど酔いが邪魔して、
本音が出そうになる。

「……冴夢ちゃん……今日……」

(——言うな。言うな。言うな。言ったら終わりだ。)

喉で言葉を噛み殺す。

(……今日? なに……?)

胸が跳ねる。
怖いのに……聞きたい。

大我はふっと視線を落とし、
自分で自分を止めるように笑った。

「……いや。なんでもない。」

いつもの抑制が、
酔いでギリギリのバランス。

(……なんか……言おうとした……)

胸がきゅっと痛い。

──────────────────────────

大我はふらっと座り込む。

「み、水……取ってくるね!」

慌てて立ち上がり、キッチンへ走る。
心臓がうるさくて仕方がない。

コップを持つ手が微かに震えている。

(……酔ってる大我……なんで……こんな……)

戻ると、大我は目を閉じて
ソファにもたれていた。

目尻が少し下がっていて、
いつものキリッとした表情じゃない。

弱ってる。
無防備で。
めちゃくちゃ……優しい顔。

(……ずるい……こんなの……)

そっと水を渡すと、
大我はゆっくり目を開けて冴夢を見る。

「……ありがと……冴夢ちゃん。」

声が柔らかすぎて、
聞いた瞬間に胸の奥がじんわり熱くなる。

「……ううん……」

(……酔ってるだけ……酔ってるだけ……)

そう思い込もうとするのに、
心臓だけが言うことを聞かない。

──────────────────────────

大我は水を飲み終えて
グラスを置いた。

ふっと冴夢の方を見て、

(……あぁ……だめだ……)

内心で頭を抱える。

“守らなきゃいけない”
“好きになっちゃいけない”
“兄貴の嫁だったんだぞ”

全部わかってるのに。

酔いで防波堤が崩れていく。

そのまま言いそうになる。

「……昨日……本気で……怖かった……」

でもギリギリで飲み込んだ。

喉が上下する。

(……言えない……言ったら終わる……)

冴夢はその変化に気づいてしまう。

(……なにか……隠してる……?)

胸の奥がまた痛む。

──────────────────────────

(……気づくな……俺の気持ちに気づくな……頼む……)

(……気づかれたくない……大我にバレたら終わっちゃう……)

ふたりとも苦しいのに、
ふたりとも隠し合って、
ふたりとも本心に触れそうで逃げてる。

でも。

酔った大我の“漏れた視線”だけは嘘じゃない。

冴夢は気づいていた。

(……今日の大我……
 “家族”を見る目じゃない……)

胸が熱くなる。
苦しいのに、
ほんの少し……あったかい。

──────────────────────────

眠気で意識が落ちかけたとき。

大我は冴夢の名を呼んだ。

「……さゆ……」

「——っ!」

息が止まる。

最後の大我の声は
“義弟”じゃなくて、
“男”の声だった。

冴夢の心臓は一気に跳ねた。

だけど次の瞬間——

大我は眠りに落ちていて、
続きの言葉は聞こえなかった。

(……わたし……どうしたら……)

涙でも笑みでもない感情が、
胸の奥できらりと揺れた。

ふたりの距離は、今日で戻れなくなった。



眠りかけた大我を見つめながら、冴夢は小さく息を吸った。

(……このままソファじゃ、風邪ひいちゃう……)

ゆっくり肩に手を添えて揺らすと、大我は少し眉を寄せて、う~~んと呻く。

「……だいじょ……ぶ……」

(……大丈夫じゃないよ……)

冴夢は決意して、大我の腕を肩にかけた。

思った以上に重かった。
でも、一歩一歩ゆっくりと寝室へ向かう。

大我の額が冴夢の肩に触れ、
熱が伝わってくる。

(……近い……)

胸がまた苦しくなった。

でも“運ばなきゃ”という気持ちだけで歩く。

寝室のベッドにそっと大我を座らせたあと、
冴夢は乱れたネクタイを見て、
少しだけ手を伸ばした。

「……苦しいよね……」

指が震えながらも緩めてやったそのとき。

大我の指がふいに冴夢の手首を掴んだ。

「っ……!?」

「たい……が?」

大我の目は閉じたまま。
でも、掴む手だけは強い。

そして——

その唇が、ごく小さく動いた。

冴夢は息を飲む。

(……寝言……?)

聞こえたのは、
聞いてはいけない本音だった。

──────────────────────────

「…手はなすな……どこもいかないで」

「え……?」

「……行くな……
 ……冴夢ちゃん……」

冴夢の胸が一気に跳ねた。

(……わたし……の名前……)

寝言は続く。

「……おまえ……
 どっか……行かれたら……
 ……俺……死ぬ……」

「っ——!」

耳が熱い。
涙が出そう。

(……そんな……)

大我の声は、普段よりずっと幼くて、
必死で、
切なかった。

「……守るだけなんて……
 ……できねぇんだ……」

「——っ……!」

胸の奥が燃えるように熱くなる。

大我の寝言は止まらなかった。

「……好きだなんて……
 ……言えない……
 兄貴の……大事な……
 ……大事な……子なのに……」

冴夢の指が震えた。

(……好き……?
 いま……なんて……)

大我の眉が痛そうに寄る。

まるで、ずっと苦しんできたことが
ようやく声になったみたいだった。

「……でも……もう…くるし…冴夢ちゃん……
 ……すき……」


冴夢の時間が止まった。

胸の音だけが響いていた。

涙が一滴、頬を伝う。

(……こんな……
 こんな風に……
 言ってくれるなんて……)

冴夢はそっと大我の手を
優しく外して布団をかける。

「……ありがとう……」

囁いた言葉は、
寝ている大我には届かない。

でも冴夢の胸には、はっきり届いた。

“迷惑じゃなかった”

“勘違いじゃなかった”

“あの痛みは恋だった”

“大我の目が変わったのも……
 理由があったんだ……”

そして——

(……わたしも……
 もう……気づいちゃった……)

涙が一滴だけ落ちる。

(……大我のそばにいたい……って……思ってる……)

大我は眠っている。
でもその寝息に安心してしまう。

冴夢はそっと布団の端を握りしめた。

「……わたし……
 もう……戻れないや……」

怖いのに。
でも、それ以上に。

(……大我に、触れられた手……
 あったかかった……)

それは冴夢が、生まれて初めて
“自分の意思で”踏み出した
勇気の一歩だった。
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