ブルーピーシーズ

弧川ふき@ひのかみゆみ

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第4章 ケズレルモノ

45-2 予想外の事態

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 敵の宇宙船内。鉄格子の前。
 赤いテープが飛んでくる。それを俺はチョークの盾で受けた。
 散弾のように別のチョークを向かわせもした。高速で。
 すると、奴は、赤いテープを前に浮かせ環状にしながら巨大化させ、ゲートを作った。

 まずい――!

 敵の赤いゲートの中には人質の姿が。
 俺はチョークの弾丸の全てを停止させた。そしてサクラを込めるのをやめた。そのため、チョークはそのまま落下。
 その音が聞こえたのか、男が言う。「ダゲスズキツォムル!」
『攻撃してみろ!』だと?
 嫌なことを言いやがる。できる訳がない。この状況だと人質に当たる。テープはほとんど隙間なく通路そのものをゲート化させているようなもの。つまり相手に当たる攻撃もできないし――と、困った状態だ。

 ゲートの裏側には光を反射しないがゆえの黒の面が生じるから、奴の目の前は闇そのものの色をした壁ができているはず。奴も目の前が見えないし、この場合奴の行動として妥当なのは――。

 俺は後ろを振り向いた。
 やはりそうだと思った。常とう手段だ。後ろから別のゲート。そしてそこからの攻撃がもう来そうだった。
 これはスピード勝負。
 把握した俺はすぐにチョークの柱を立て、それを壁にすべく横に隙間なく増やした。そしてできる限り強度を高めた。相手の攻撃は、この白いチョークの壁に突き刺さるだけ。

 一応、人質が見えているゲートが消えていないか確認しながら、こちらも別のチョークでゲートを作った。目の前に。しかも男の背中にゲートが開くように。
 そこからチョークを叩き付ける。
 手応えはあった。実際、目の前に――ゲートの向こうに――敵の沈む姿が見えた。
 その瞬間、敵が人質を盾にしようとして作ったゲートも、その敵自体が集中を欠いたせいで消えた。

 こちらも似たことをすればいいだけだった――という単純な話ではあった。そして『別のゲートをつなげるという行為をどちらが先にするか、されてしまったなら防御して更に次を――』という速さの勝負だったということ。

 それを制した俺はチョークに念じ、今度こそこいつを無力化――と、思ったその時、俺はバランスを崩した。

 何だ! 何が。なぜ!

 思ってからハッとした。

 ――しまった。そうか、相手の操るものはテープ!

 俺の体はバランスを崩した状態で、まるで後ろに投げ飛ばされるように、引っ張られた。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 私達が進んだ先で、角から何かが飛んできた。白い何か。
 私はガラスを盾にしたが、その白い何かは、そこに刺さると同時に、こちら側に増えるように現れ、私の後ろの部隊に向かって飛んでいった。

 しまった――!

 後ろに顔を向け、更に盾を作る。二名分間に合わなかったが、四人を守れた。
 自分とその四人のあいだにいた二人は、腹を切られて倒れた。
 切なくなる。怒りも湧く。自分自身に対しても。
 その想いに突き動かされるように、私は前を見た。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 奥の盾に当たった辺りから、操るのが極端に難しくなった。距離のせいもあるか。サクラを込め辛い。

 ――新しく操作した方が楽だな。

 そう思った俺は胸に手を当て、白い型紙を再度増やし、手に持った。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 じりじり前へと進む。角の向こうに、白い型紙を操る誰かがいるはずだ、そう思いながら。
 なのに、ふと、後ろから悲鳴が!

 急いで振り向いた。その時には三人が既に……。
 その方向では、リングがゲート化していた。あの腕時計型の装置の。
 それが解除される。

 ピンがあるのであろう位置には何度かゲート化が繰り返された。敵は、通ろうとする者を、によって切断、もしくは部隊から分断しようとしている。

 ――気付いてやれれば。それができたら。

 床に小さなピンがあったのだろう、できるだけ隅々まで目を向けているつもりではあったのに……。罪悪感にさいなまれながら私は前を向いた。
 向いた時、相手の獲物は既に飛んできていた。
 その型紙は、私自身を直接攻撃する訳ではないようだった。痛みがない。やられたと思ったのに。

 なぜ。何が?

 私は無事。と実感してから自分の腰に手をやり、狙いに気付いた。
 ポーチがなかった。私が操作するために腰につけているもの。あれにはガラスが……ティノッカフラスパが入っている。それがこの場から消えてしまっている。今はもうポーチのベルトだった部分がプラプラしているだけ。

 私が偽イマギロ部長にしたことと同じ。それを逆に、やられてしまった――。
 今私が手に持っている一枚。これを死守しながら増やした数枚で戦う。そうするしかない。ただ、ことごとく最後の一枚まで壊されたらそれで終わり――。

 肝心の『相手の白い型紙によるゲート』は、私の近くにまだ浮いていた。それに向けて飛ばす――切断できる性質を付与したティノッカフラスパを。一応数枚に増やした上で瞬時に。
 ……相手の獲物はハラリと落ちた。これは、その一枚が細切れにされたことで、相手が操れる型紙という個性を失ったからで――。
 とにかく。私はまた前を向き、今度こそ相手を無力化する、その一点に集中した。私のそばにいる同部隊の者は、あと三人……。
 たとえ震えながらでも、使命感を抱いてここにいる、そんな三人。彼らとともに、私は、敵がいるであろう所へと。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 私達は左に進んでマギュート使いのいない部隊をフォローする気だった。
 このフォローは、のちのち人質救助にも影響を及ぼす。

 もし我々の全員がゲートを使えなくなれば、歩いて船を出るしかなくなり、そうなると人質までもが危険にさらされる。
 確率の問題ではある。が、今回したいのは人質の救助だ。それさえできればあとは一旦引いてもいい。まあ、この船をこっそり動けなくさせるくらいの手間は必要になりそうだが。
 だから別部隊を今フォローすることは、人質のための行為としても重要だった。

 イチェリオさんを信じるなら、私は通路の確保を。そういう意味もあった。そうだ。信じている。彼なら生きて人質を救助する、全員とまでは言わなくとも。……いや、全員救助してしまうかも。だから私は……。

 と、見にきた通路には、横たわって物言わぬ仲間達の姿が。しかも通路の大半が血に染まっている。
 視界の奥にはあの機械の姿があった。右腕の刃物と左腕の四筒の銃砲が目立つ。そいつが皆を――。

 やりどころのない想いを抱きながら、私はそいつへの対処を急いだ。さっきと同じようにベルトを――。

 と、その時だ。後ろから悲鳴が――聞こえたと思ったらすぐに途切れた。
 嫌な予感がしてそちらを振り向く。
 するといるではないか、背後にも。排除用の機械。やはり同じ造りらしい。右腕に刃物、左腕に銃砲。
 その銃がこちらを捉えた。

 け――!

 中途半端に思ってできたのは、『背後だった方の機械向きにベルトでゲートを作り銃弾を別の所に送れる状況にすること』だった。

 その状態を維持しながら、合流しようとして最初に見付けた機械の方に向かわせたベルトに集中――しようとしたのだが――できなかった。そちらは既にゲート化した幾つかのベルトで囲んでいたが、それでもまだ動ける状態なのは当然で、その機械は、私の方を向いていて、その左腕をも私の方に向けていて――。
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