桜の涙

黒咲ゆかり

文字の大きさ
15 / 17

15.林間学校⑥

しおりを挟む
「はぁ、2日あっという間だったな…。」

「もう明日帰るのか…少し寂しいな。」

みんなにたくさん迷惑をかけたし、
うさぎにも少し悪いことをしたかもしれない。

でも、とっても楽しかった。

「…みんな…ありがとうな。」

「ん?何が?」

「俺、みんなが居たからこの林間学校にも
参加できたし、すごく楽しかった。
色々迷惑かけちゃってごめんな…。」

「ありがとうはこっちのセリフだよ。
私もとっっても楽しかった。
でも、迷惑なんて思わないで…。」

咲友美が少し寂しそうな顔で言う。

「迷惑なんて思うなって何度も言ってんだろ?
俺達の事…信じられない?」

みんな少し悲しい様な、
寂しい様な顔をしている。

そうか、俺は親友を信じてなかったのか…。

もしかしたら、俺の『迷惑』という言葉を
聞くたびにみんなは傷ついていたかもしれない。

「ごめん。信じてないわけじゃないんだ。
でも、『迷惑』って言葉を出さないと
怖かったんだ。
それでみんなの顔色をうかがって…。
本当にごめん。」

昔から人の顔色をうかがうのが
当たり前になっていた。
もしかしたら、誰も何も言わないだけで
迷惑をしていて、
本当はただ俺に心配じゃなくて、
同情という気持ちでしょうがなく
かまってやってるだけじゃないか…
怖かったんだ。

「本当に迷惑なんかじゃないよ。
逆に冬夜が居ないとこのグループも
まとまらないしね。」

桜が優しくいった。

「迷惑なんじゃなくて、
俺達は冬夜を必要としてるんだよ。」

拓也…。

必要と…ただの空気じゃなくて…必要と…。

言われて初めてやっと実感できた、
信じることができた。
俺はここに居ていいんだって。

「あ、ありがとう。」

「嬉しそう。」

「何泣きそうな顔してんだよ!」

「泣きそう…なんかじゃないし。」

嘘。
本当は嬉し涙をこらえるのに必死で
手を強く握りしめてしまっていた。

「あ、泣いてる…。」

「泣いないっていってんだろ…もう。」

ほんっとに、

「ありがとう。」



林間学校3日目。

少し寂しいけれど、また、
来た時と同じバスに乗り込んだ。

「あれ?冬夜寝ちゃった…。」

(寝顔、可愛い…。)

チュッ。


え…?

桜が俺の頬にキスをした。

実は俺は起きていた。

え?な…に…が起こった?

でも、目は開けられないし…。

「冬夜?」

!?…

気付かれた?

「起きてるね?」

どうしよう…。

「起きてるよ。」

「やっぱり…。」

(顔が赤くなったもん。)

「……お前は外国人かよ…。」

「あ、照れてる。」

「照れてねーよ。」

「知ってた?冬夜って照れると
自分の前髪を引っ張るんだよ。」

え!?バレてたのか…。

「照れて…ねーし……。」

顔が熱い。

「ヒューヒュー」

うさぎがからかいに来た。

「赤面してるなぁ~、なんかあったの?」

うさぎがいつものニヤニヤした顔で聞く。

「なんでもない…。」

…桜は俺のことをからかってるのか?

それとも俺はこと…。

いやいやいや、なっ、何考えてんだ俺!

「外国人…ありえるなっ。」

「外国人じゃないよー!」

それ以外何があるんだよ…。

やっぱり…

!?

違う違う絶対違う!

「はぁ…。」

「どうしたの?冬夜?」

「恋の悩みは辛いな…ふふふ」

「うーさーぎー?」

「ふぎゃぁー!」

俺が睨むとうさぎは逃げていった。

恋なんかしてないっつうの。

「冬夜…恋、してるんだ…。」

「してねーよ!」

バチッ!

「痛っ!」

「…」

なんでお前が元気なくなんだよ…。

「デコピンしなくてもいいじゃん!」

あ、戻った。

「好きな人…いるの?」

まただ。

「居ないよ。」

これじゃあ、まるで…。

「じゃあ私、冬夜のこと…」

「冬夜ー」

「あ、あぁ拓也。」

「ポテチ食べる?」

「ん、あぁ、ありがとう。」

「ん?桜何でそんな真っ赤な顔してんだ?」

え?

「しっ、してないよ?」

「ふーん」

拓也はにやりと意地悪な笑を浮かべた。

もしもあの時、
拓也が話しかけてこなかったら…
俺はとんでもないことを
言われていたのではないか…。
いやいやいや、そんなわけ…あれ?
あって欲しいと思うこの気持ちはいったい…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

処理中です...