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2章 届くはずのない手紙
幕間:もふもふたちの願い
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「真衣から、来たぜ」
キツネが、ポストから手紙を引き抜いた。ぴょんとぴょんと飛び跳ねるようにして、庭に戻ってくる。
キツネの声を聞いたタヌキがぽてぽてと歩いてきた。
「来たんだ~。キツネはずっと待ってたもんね~。郵便屋さんが来たら、そわそわしてさ~」
「うるせーよ」
キツネは配達のバイク音が聞こえると、ねぐらにしている縁側から飛び出て、ポストに手紙が入るのか確認しに行っていた。
「ウサギ頼むぜ」
キツネは咥えていた手紙を、ウサギの巣穴の横に置く。
お尻をふりふりさせながら、穴からウサギが出てくる。土が、がぼっと一緒に。
「おまえ、なんでケツから出てきたんだ」
キツネが首を傾けた。
「穴掘ってたのよ」
「チビのくせに、巣穴広げてんだ」
「別にいいでしょ。前の手紙、ちゃんと届いたのかしらね」
「新しいのが来たってことは、届いたってことじゃねえの?」
「そうだと思うけど」
ウサギは前と同じように、封筒の端をカリカリと噛んで、封を開けた。
「開いたわよ。読むわね。
『前略、お祖母ちゃん
梅雨のわりにあまり雨が降らず、暑い日が続いているけど、元気に過ごしているのかな。
私は、前に手紙を書いたときより、元気だよ。
あの日はトラブルでつらいことがあって、気落ちしてたんだ。だけど、園長先生がうまくまとめてくれて、解決したよ。
園長先生はすごいんだよ。
園児にも教職員にも優しくて、愛情たっぷりだけど、叱る必要があるときは、ごまかさずちゃんと叱ってくれるんだ。相手が親御さんでもね。
でも頭ごなしに怒鳴りつけるんじゃないんだ。
丁寧な口調なのに、ちゃんと頭と心に届くんだよね。
相手の感情が昂っていて、私の言葉なんてぜんぜん届かないのに、園長先生相手だと、落ち着いてくれたんだよ。
年齢もあるとは思うけど、園長先生の風格がなせる技って感じで、かっこよかった。
威厳とか権威を振りかざしてるんじゃないんだ。ぜんぜんえらぶってないの。
園長先生は、スーツで子供たちと遊べる人だからね。
服の汚れなんて気にしない。着替えてくるから、待っててね。じゃないの。今遊んで欲しいっていう園児のその時の気持ちを大切にする人なんだ。
そんな先生だから、就職先に選んだんだけど。
とても尊敬してるし、憧れてる。
四十年後、園長先生みたいな人になれてるかなあ。
っていうか、自分の四十年後なんて想像つかないな。
私、幼稚園の先生続けているのかな。
七日に、園で七夕のお祭りをしたんだ。
門のところに笹の葉を飾るのに、教職員全員で飾りつけをして。
七夕って、短冊に願いごと書くでしょ。
なんて書こうかなって考えたときに、箕輪幼稚園で働く願いが叶ってる今が、幸せだなって思ったんだ。
そしたら自然と園児たちのことを思い浮かべて、園児たちの願いが叶いますようにって書いたんだ。
仕事は大変だけど、やりがいがあるし、園児たちの成長を間近で見せてもらえて、ときどき感動して泣きそうになるんだよね。
昨日できなかったのに、今日はできた!って。
その時の子供たちの笑顔ときたら。あれだけでご飯三倍はいけちゃうよね。
ご飯は冗談だけど。
でも、ほんとに、あの瞬間は何にも代えられない、最高の瞬間だよ。
親御さんも、すごく喜んでくれるし。
だから続けられるんだよね。
お祖母ちゃん、私、頑張ってるよ。
これからも頑張るからね。
早々
真衣』
すっかり元気になったみたいだね」
ウサギは読み終えた手紙を丁寧に折りたたんで、封筒に戻した。
「真衣のやつ、ほんとに元気になったんだな」
「安心したね~」
キツネはにぱっと口を開けて笑い、タヌキはほへへっと微笑む。
「元気になったなら、手紙はもう来ないかもしれないわね」
ウサギのあっさりした言葉に、
「え゛……」
キツネが口を開いたまま、ウサギに顔を向けた。
「怖い顔こっちに向けないでよ」
ウサギは顔をそむけ、
「あと、口臭い」
小声でぽつりと言った。
キツネが怒る前に、ウサギが続ける。
「真衣が元気になるのはいいことじゃない。今まで手紙なんてきたことなかったし、こないのが普通なのよ」
「そんなこと言ったってよ。せっかく届いたんだから、続けたいよな」
「そうだね~」
「じゃあ、今回も返事書く?」
「書く書く」
キツネとタヌキが揃って頷いた。
次回⇒8.差出人は誰?
キツネが、ポストから手紙を引き抜いた。ぴょんとぴょんと飛び跳ねるようにして、庭に戻ってくる。
キツネの声を聞いたタヌキがぽてぽてと歩いてきた。
「来たんだ~。キツネはずっと待ってたもんね~。郵便屋さんが来たら、そわそわしてさ~」
「うるせーよ」
キツネは配達のバイク音が聞こえると、ねぐらにしている縁側から飛び出て、ポストに手紙が入るのか確認しに行っていた。
「ウサギ頼むぜ」
キツネは咥えていた手紙を、ウサギの巣穴の横に置く。
お尻をふりふりさせながら、穴からウサギが出てくる。土が、がぼっと一緒に。
「おまえ、なんでケツから出てきたんだ」
キツネが首を傾けた。
「穴掘ってたのよ」
「チビのくせに、巣穴広げてんだ」
「別にいいでしょ。前の手紙、ちゃんと届いたのかしらね」
「新しいのが来たってことは、届いたってことじゃねえの?」
「そうだと思うけど」
ウサギは前と同じように、封筒の端をカリカリと噛んで、封を開けた。
「開いたわよ。読むわね。
『前略、お祖母ちゃん
梅雨のわりにあまり雨が降らず、暑い日が続いているけど、元気に過ごしているのかな。
私は、前に手紙を書いたときより、元気だよ。
あの日はトラブルでつらいことがあって、気落ちしてたんだ。だけど、園長先生がうまくまとめてくれて、解決したよ。
園長先生はすごいんだよ。
園児にも教職員にも優しくて、愛情たっぷりだけど、叱る必要があるときは、ごまかさずちゃんと叱ってくれるんだ。相手が親御さんでもね。
でも頭ごなしに怒鳴りつけるんじゃないんだ。
丁寧な口調なのに、ちゃんと頭と心に届くんだよね。
相手の感情が昂っていて、私の言葉なんてぜんぜん届かないのに、園長先生相手だと、落ち着いてくれたんだよ。
年齢もあるとは思うけど、園長先生の風格がなせる技って感じで、かっこよかった。
威厳とか権威を振りかざしてるんじゃないんだ。ぜんぜんえらぶってないの。
園長先生は、スーツで子供たちと遊べる人だからね。
服の汚れなんて気にしない。着替えてくるから、待っててね。じゃないの。今遊んで欲しいっていう園児のその時の気持ちを大切にする人なんだ。
そんな先生だから、就職先に選んだんだけど。
とても尊敬してるし、憧れてる。
四十年後、園長先生みたいな人になれてるかなあ。
っていうか、自分の四十年後なんて想像つかないな。
私、幼稚園の先生続けているのかな。
七日に、園で七夕のお祭りをしたんだ。
門のところに笹の葉を飾るのに、教職員全員で飾りつけをして。
七夕って、短冊に願いごと書くでしょ。
なんて書こうかなって考えたときに、箕輪幼稚園で働く願いが叶ってる今が、幸せだなって思ったんだ。
そしたら自然と園児たちのことを思い浮かべて、園児たちの願いが叶いますようにって書いたんだ。
仕事は大変だけど、やりがいがあるし、園児たちの成長を間近で見せてもらえて、ときどき感動して泣きそうになるんだよね。
昨日できなかったのに、今日はできた!って。
その時の子供たちの笑顔ときたら。あれだけでご飯三倍はいけちゃうよね。
ご飯は冗談だけど。
でも、ほんとに、あの瞬間は何にも代えられない、最高の瞬間だよ。
親御さんも、すごく喜んでくれるし。
だから続けられるんだよね。
お祖母ちゃん、私、頑張ってるよ。
これからも頑張るからね。
早々
真衣』
すっかり元気になったみたいだね」
ウサギは読み終えた手紙を丁寧に折りたたんで、封筒に戻した。
「真衣のやつ、ほんとに元気になったんだな」
「安心したね~」
キツネはにぱっと口を開けて笑い、タヌキはほへへっと微笑む。
「元気になったなら、手紙はもう来ないかもしれないわね」
ウサギのあっさりした言葉に、
「え゛……」
キツネが口を開いたまま、ウサギに顔を向けた。
「怖い顔こっちに向けないでよ」
ウサギは顔をそむけ、
「あと、口臭い」
小声でぽつりと言った。
キツネが怒る前に、ウサギが続ける。
「真衣が元気になるのはいいことじゃない。今まで手紙なんてきたことなかったし、こないのが普通なのよ」
「そんなこと言ったってよ。せっかく届いたんだから、続けたいよな」
「そうだね~」
「じゃあ、今回も返事書く?」
「書く書く」
キツネとタヌキが揃って頷いた。
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