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2章 届くはずのない手紙
8.差出人は誰?
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七夕イベントがあった週末、私はまたお祖母ちゃんに手紙を書いた。
トラブルが解決したことと、イベントが楽しかったことを知らせておこうと思ったからだった。
返信はもうないかもしれない。だって相手はお祖母ちゃんじゃないんだから。
それでも、私は『前略、お祖母ちゃん』から書き始めた。
相手が誰かわからないからこそ、お祖母ちゃん宛てにした方がいいのかなと思って。
一週間後、来ないかもなと思っていた返信のハガキが届いた。
またも、ほんわかする絵を描いてくれていた。
天の川で会う織姫と彦星。
笹の葉に飾られている大きめの短冊に、願いごとが書いてあった。
『真衣が、幸せでいられますように』
絵は子供っぽいのに、私の幸せを願ってくれるなんて。
嬉しすぎて、涙ぐんでしまった。お祖母ちゃんに言われたみたいで。
誰かに自分の幸せを願ってもらえるなんて、それ自体が幸せだなって。
まるで出来立てのご飯を食べたみたいに、心がほかほかに温かくなる。
滲んでくる涙をティッシュで拭い、届いた絵ハガキを前回の絵ハガキの隣に飾る。
「宝物が増えたみたい」
ふふっと笑みがこぼれる。
誰の絵なのかわからないのに、私はとても気に入っている。
絵本みたいな優しさと、柔らかさ、温かさをこの絵ハガキから感じ取っている。
それにこの絵の主さんは、手紙を読んでくれている。それがわかる絵だからかな、と惹かれる理由を考えた。
子供かなと思ったけど、もしかしたら大人かもしれない。絵本作家さんとか。
仕事柄、絵本はよく読む。
この絵のタッチに見覚えはないから、私の知らない作家さんか、勉強中の人かもしれない。
誰が描いているにしても、私を癒やして温かい気持ちにさせてくれた主さんに感謝したい。
「ありがとう」
気持ちを直接伝える手段は手紙を書くことだけ。
頻繁に出すのは迷惑かなと思うから、お礼の手紙を書きたいところだけど、控えておこう。
もしかしたら私を知ってる人だったりして。と、ご近所を思い浮かべた。
幼い頃から遊びに行っていたとはいえ、住居としていたのはたった三年。
近所の方との交流は挨拶程度。近くに同年代はいなかった。
祖母はご近所さんと立ち話をしていたし、母にとっては実家だから知っている人がいるだろうけど、私自身はほとんど交流がなかった。
だから、近所に思い浮かぶ人はいない。
とはいえ、状況はいくらでも変わる。私がそうだったように。
私が離れた七年の間に、知らない人が引っ越してきていてもおかしくない。
祖母宅のポストを覗いて、私の手紙を抜き出しているとしたら問題ではあるけれど、そうと決まったわけでもないし。
そうでないといいなあと思いながら、二枚の絵ハガキを見て、頬を緩めた。
ポロンと着信音が鳴った。
スマホを見ると、友人からのメッセージ。
<高梨、もうじき夏休みだろ、時間あったら飯行こう
高校時代の同級生、竹下誠からの連絡だった。
七月二十日から夏休みで、幼稚園はお休みになる。
預かり保育はあるため、通常の勤務体系とは異なるシフトが組まれる。
保育者のための研修もこの時期に開催されているので、参加することもある。
夏休みとはいえ、フリーになるわけじゃない。
でもいつもよりは時間もできるし、お盆の時期は完全に休みになる。
竹下くんもそれを知っていて、ご飯に誘ってくれている。
<いいよ。行こう。行けそうなのは――
何日かピックアップして返信。
数分後に返信があり、お盆に彼との約束が決まった。
次回⇒9.竹下誠という人は1
トラブルが解決したことと、イベントが楽しかったことを知らせておこうと思ったからだった。
返信はもうないかもしれない。だって相手はお祖母ちゃんじゃないんだから。
それでも、私は『前略、お祖母ちゃん』から書き始めた。
相手が誰かわからないからこそ、お祖母ちゃん宛てにした方がいいのかなと思って。
一週間後、来ないかもなと思っていた返信のハガキが届いた。
またも、ほんわかする絵を描いてくれていた。
天の川で会う織姫と彦星。
笹の葉に飾られている大きめの短冊に、願いごとが書いてあった。
『真衣が、幸せでいられますように』
絵は子供っぽいのに、私の幸せを願ってくれるなんて。
嬉しすぎて、涙ぐんでしまった。お祖母ちゃんに言われたみたいで。
誰かに自分の幸せを願ってもらえるなんて、それ自体が幸せだなって。
まるで出来立てのご飯を食べたみたいに、心がほかほかに温かくなる。
滲んでくる涙をティッシュで拭い、届いた絵ハガキを前回の絵ハガキの隣に飾る。
「宝物が増えたみたい」
ふふっと笑みがこぼれる。
誰の絵なのかわからないのに、私はとても気に入っている。
絵本みたいな優しさと、柔らかさ、温かさをこの絵ハガキから感じ取っている。
それにこの絵の主さんは、手紙を読んでくれている。それがわかる絵だからかな、と惹かれる理由を考えた。
子供かなと思ったけど、もしかしたら大人かもしれない。絵本作家さんとか。
仕事柄、絵本はよく読む。
この絵のタッチに見覚えはないから、私の知らない作家さんか、勉強中の人かもしれない。
誰が描いているにしても、私を癒やして温かい気持ちにさせてくれた主さんに感謝したい。
「ありがとう」
気持ちを直接伝える手段は手紙を書くことだけ。
頻繁に出すのは迷惑かなと思うから、お礼の手紙を書きたいところだけど、控えておこう。
もしかしたら私を知ってる人だったりして。と、ご近所を思い浮かべた。
幼い頃から遊びに行っていたとはいえ、住居としていたのはたった三年。
近所の方との交流は挨拶程度。近くに同年代はいなかった。
祖母はご近所さんと立ち話をしていたし、母にとっては実家だから知っている人がいるだろうけど、私自身はほとんど交流がなかった。
だから、近所に思い浮かぶ人はいない。
とはいえ、状況はいくらでも変わる。私がそうだったように。
私が離れた七年の間に、知らない人が引っ越してきていてもおかしくない。
祖母宅のポストを覗いて、私の手紙を抜き出しているとしたら問題ではあるけれど、そうと決まったわけでもないし。
そうでないといいなあと思いながら、二枚の絵ハガキを見て、頬を緩めた。
ポロンと着信音が鳴った。
スマホを見ると、友人からのメッセージ。
<高梨、もうじき夏休みだろ、時間あったら飯行こう
高校時代の同級生、竹下誠からの連絡だった。
七月二十日から夏休みで、幼稚園はお休みになる。
預かり保育はあるため、通常の勤務体系とは異なるシフトが組まれる。
保育者のための研修もこの時期に開催されているので、参加することもある。
夏休みとはいえ、フリーになるわけじゃない。
でもいつもよりは時間もできるし、お盆の時期は完全に休みになる。
竹下くんもそれを知っていて、ご飯に誘ってくれている。
<いいよ。行こう。行けそうなのは――
何日かピックアップして返信。
数分後に返信があり、お盆に彼との約束が決まった。
次回⇒9.竹下誠という人は1
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