前略、お祖母ちゃん ~ええ?! 文通相手はもふもふたち? 私を癒す25通の絵ハガキ~

衿乃 光希

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2章 届くはずのない手紙

8.差出人は誰?

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 七夕イベントがあった週末、私はまたお祖母ちゃんに手紙を書いた。
 トラブルが解決したことと、イベントが楽しかったことを知らせておこうと思ったからだった。

 返信はもうないかもしれない。だって相手はお祖母ちゃんじゃないんだから。
 それでも、私は『前略、お祖母ちゃん』から書き始めた。
 相手が誰かわからないからこそ、お祖母ちゃん宛てにした方がいいのかなと思って。

 一週間後、来ないかもなと思っていた返信のハガキが届いた。
 またも、ほんわかする絵を描いてくれていた。

 天の川で会う織姫と彦星。
 笹の葉に飾られている大きめの短冊に、願いごとが書いてあった。

『真衣が、幸せでいられますように』

 絵は子供っぽいのに、私の幸せを願ってくれるなんて。
 嬉しすぎて、涙ぐんでしまった。お祖母ちゃんに言われたみたいで。

 誰かに自分の幸せを願ってもらえるなんて、それ自体が幸せだなって。
 まるで出来立てのご飯を食べたみたいに、心がほかほかに温かくなる。
 滲んでくる涙をティッシュで拭い、届いた絵ハガキを前回の絵ハガキの隣に飾る。

「宝物が増えたみたい」
 ふふっと笑みがこぼれる。

 誰の絵なのかわからないのに、私はとても気に入っている。
 絵本みたいな優しさと、柔らかさ、温かさをこの絵ハガキから感じ取っている。

 それにこの絵の主さんは、手紙を読んでくれている。それがわかる絵だからかな、と惹かれる理由を考えた。

 子供かなと思ったけど、もしかしたら大人かもしれない。絵本作家さんとか。
 仕事柄、絵本はよく読む。
 この絵のタッチに見覚えはないから、私の知らない作家さんか、勉強中の人かもしれない。

 誰が描いているにしても、私を癒やして温かい気持ちにさせてくれた主さんに感謝したい。
「ありがとう」

 気持ちを直接伝える手段は手紙を書くことだけ。
 頻繁に出すのは迷惑かなと思うから、お礼の手紙を書きたいところだけど、控えておこう。

 もしかしたら私を知ってる人だったりして。と、ご近所を思い浮かべた。
 幼い頃から遊びに行っていたとはいえ、住居としていたのはたった三年。
 近所の方との交流は挨拶程度。近くに同年代はいなかった。

 祖母はご近所さんと立ち話をしていたし、母にとっては実家だから知っている人がいるだろうけど、私自身はほとんど交流がなかった。
 だから、近所に思い浮かぶ人はいない。

 とはいえ、状況はいくらでも変わる。私がそうだったように。
 私が離れた七年の間に、知らない人が引っ越してきていてもおかしくない。

 祖母宅のポストを覗いて、私の手紙を抜き出しているとしたら問題ではあるけれど、そうと決まったわけでもないし。
 そうでないといいなあと思いながら、二枚の絵ハガキを見て、頬を緩めた。

 ポロンと着信音が鳴った。
 スマホを見ると、友人からのメッセージ。

 <高梨、もうじき夏休みだろ、時間あったら飯行こう

 高校時代の同級生、竹下誠からの連絡だった。
 七月二十日から夏休みで、幼稚園はお休みになる。

 預かり保育はあるため、通常の勤務体系とは異なるシフトが組まれる。
 保育者のための研修もこの時期に開催されているので、参加することもある。
 夏休みとはいえ、フリーになるわけじゃない。
 でもいつもよりは時間もできるし、お盆の時期は完全に休みになる。

 竹下くんもそれを知っていて、ご飯に誘ってくれている。

 <いいよ。行こう。行けそうなのは――

 何日かピックアップして返信。
 数分後に返信があり、お盆に彼との約束が決まった。


 次回⇒9.竹下誠という人は1
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