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3章 絵ハガキの交流
幕間:紙ヒコーキ
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「タヌキ、キツネ。あれ? どこ?」
ポストから封筒を取り出したウサギが、きょろきょろ庭を見渡す。
郵便局員が現れるとすぐにやってくるたぬきとキツネが出てこない。
「真衣からの手紙、来たわよー」
声を張り上げると、目の前に積みあがっていた枯れ葉がばさっと舞い上がった。
「来たのか」
黄色に枯れ葉の山から黄色の毛のキツネが顔を出した。
「そこにいたのね。保護色みたいになっててわからなかったわ」
「枯れ葉ん中はあったかいからさ、つい深く寝ちまってた」
わさわさと枯れ葉をかき分け出てきたキツネは、中に向かって、
「おーい、タヌキ。起きろー」
声をかけた。
「え? タヌキと一緒に寝てたの? あたしも呼んでよ」
仲間外れにされる形になってしまったウサギは、すねるように口調で言った。
「とっても暖かいからさ~ウサギもおいでよ~」
タヌキの寝ぼけた声が中から聞こえる。
「寝るのは真衣のお手紙読んで、返信を描いてからにしましょう」
「わかった~そっち行くから待ってて~」
がさりがさり、落ち葉をかき分ける音がする。
ウサギはその間に封筒を開けた。
「ぷは~」
タヌキが顔を出し、ぷるぷると体を震わせる。
「おまたせ~」
「読むわよ」
『前略、お祖母ちゃん
毎年暖冬だけど、紅葉が始まって、やっと季節が進んだって気がしてる。
十一月はね、作品展があったの。
入園した園児たちが八カ月でたくさん成長したんだよ、って保護者さんたちに見てもらうお披露目会。
今年は落ち葉アートを作ってもらったんだ。
子供の想像力ってすごいんだよ。葉っぱの特性を生かしたり、工夫したり、個性豊かな作品を作ってて、びっくりさせられることばかり。
どの子も成長が感じられて、見ていて楽しくなる。力をもらってばかりだよ。
私も頑張らないとねって思わせてもらった。
大人になっても幼稚園でやったこと覚えてる子って、どれくらいいるんだろうね。
私、あまり覚えてないんだよね。
子供の頃、何を作ったんだろう。
もしかして、お祖母ちゃん家に残ってたりするのかなあ。
片付けたときなかった気もする。
その家で暮らしたの、高校生からだからあるわけなかった。
子供の頃の記憶って、ないのが普通なのかな。何かのきっかけで思い出せればいいんだけど。
来月は、クリスマス会があって、今大変なんだ。
体育館のステージで、お歌とダンスの披露があるから、たくさん練習しないとだし、飾りつけもするから作らないとだし。
でもみんな楽しみにしてるから、私たちも頑張っていいステージを作らないとね。
じゃあ、またね。
早々
真衣』
「真衣は小さい頃のこと、覚えてないんだな」
キツネがしょぼんと肩を落とす。
「大人になったら、忘れちゃうのよ。人間はいろいろ大変だから」
ウサギがわかったようなことを言った。
「ボクは覚えてるよ~。真衣は、じいちゃんに、紙ヒコーキ教えてもらってた~」
タヌキが弾んだ声で言った。
「おお! 作ってたな」
キツネが体を起こした。
「遊びに来てた子たちと、どこまで飛ばせるか、やってたわね。ってことで、今回は紙ヒコーキに決定ね」
ウサギもふむふむと頷く。
「どんなのにする~?」
「青い空に、たくさんの紙ヒコーキ飛ばそうぜ」
キツネが提案した。
「いいわね」
「決まり~」
三匹はわいわいしながら、家の中に消えた。
次回⇒4.クリスマス会
ポストから封筒を取り出したウサギが、きょろきょろ庭を見渡す。
郵便局員が現れるとすぐにやってくるたぬきとキツネが出てこない。
「真衣からの手紙、来たわよー」
声を張り上げると、目の前に積みあがっていた枯れ葉がばさっと舞い上がった。
「来たのか」
黄色に枯れ葉の山から黄色の毛のキツネが顔を出した。
「そこにいたのね。保護色みたいになっててわからなかったわ」
「枯れ葉ん中はあったかいからさ、つい深く寝ちまってた」
わさわさと枯れ葉をかき分け出てきたキツネは、中に向かって、
「おーい、タヌキ。起きろー」
声をかけた。
「え? タヌキと一緒に寝てたの? あたしも呼んでよ」
仲間外れにされる形になってしまったウサギは、すねるように口調で言った。
「とっても暖かいからさ~ウサギもおいでよ~」
タヌキの寝ぼけた声が中から聞こえる。
「寝るのは真衣のお手紙読んで、返信を描いてからにしましょう」
「わかった~そっち行くから待ってて~」
がさりがさり、落ち葉をかき分ける音がする。
ウサギはその間に封筒を開けた。
「ぷは~」
タヌキが顔を出し、ぷるぷると体を震わせる。
「おまたせ~」
「読むわよ」
『前略、お祖母ちゃん
毎年暖冬だけど、紅葉が始まって、やっと季節が進んだって気がしてる。
十一月はね、作品展があったの。
入園した園児たちが八カ月でたくさん成長したんだよ、って保護者さんたちに見てもらうお披露目会。
今年は落ち葉アートを作ってもらったんだ。
子供の想像力ってすごいんだよ。葉っぱの特性を生かしたり、工夫したり、個性豊かな作品を作ってて、びっくりさせられることばかり。
どの子も成長が感じられて、見ていて楽しくなる。力をもらってばかりだよ。
私も頑張らないとねって思わせてもらった。
大人になっても幼稚園でやったこと覚えてる子って、どれくらいいるんだろうね。
私、あまり覚えてないんだよね。
子供の頃、何を作ったんだろう。
もしかして、お祖母ちゃん家に残ってたりするのかなあ。
片付けたときなかった気もする。
その家で暮らしたの、高校生からだからあるわけなかった。
子供の頃の記憶って、ないのが普通なのかな。何かのきっかけで思い出せればいいんだけど。
来月は、クリスマス会があって、今大変なんだ。
体育館のステージで、お歌とダンスの披露があるから、たくさん練習しないとだし、飾りつけもするから作らないとだし。
でもみんな楽しみにしてるから、私たちも頑張っていいステージを作らないとね。
じゃあ、またね。
早々
真衣』
「真衣は小さい頃のこと、覚えてないんだな」
キツネがしょぼんと肩を落とす。
「大人になったら、忘れちゃうのよ。人間はいろいろ大変だから」
ウサギがわかったようなことを言った。
「ボクは覚えてるよ~。真衣は、じいちゃんに、紙ヒコーキ教えてもらってた~」
タヌキが弾んだ声で言った。
「おお! 作ってたな」
キツネが体を起こした。
「遊びに来てた子たちと、どこまで飛ばせるか、やってたわね。ってことで、今回は紙ヒコーキに決定ね」
ウサギもふむふむと頷く。
「どんなのにする~?」
「青い空に、たくさんの紙ヒコーキ飛ばそうぜ」
キツネが提案した。
「いいわね」
「決まり~」
三匹はわいわいしながら、家の中に消えた。
次回⇒4.クリスマス会
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