6 / 15
6.ハナと飴作り
しおりを挟む
ハナと約束した日、ソラは前日に買っておいた果物を持って、レンタルキッチンに向かった。ハナとはレンタルキッチンの前で待ちあわせている。
美味しい飴ができるといいなあ。
ハナと一緒に美味しいものが作れることが嬉しくて、ソラの足は自然と速くなる。
「ソラちゃん。おはよう」
ハナの声がした。扉の前で、スマホを持ったハナが待っていた。
ソラは駆け寄る。
「おはよう。もう来てたん? 早くない?」
「今着いたところ。すごい楽しみにしてた」
「私も」
お互い弾んだ声であいさつを交わし、レンタルキッチンの中に入った。
手を洗ってから、果物を取り出し並べていく。さくらんぼ・ブルーベリー・ぶどう・オレンジ・りんご。
「いろんなフルーツ買ってきたんや」
「うん。夏が旬以外のも売ってたから、皮ごと食べられるもの選んできた」
「なんで皮ごと食べられるもの選んだん?」
「水分が多いと、飴が固まらへんねんて」
「そうなんや。なんでもできるんとちゃうねんね」
「そうらしい」
りんご、ブルーベリー、さくらんぼをそれぞれよく洗い、房についているぶどうを一粒ずつはずし、ボウルに入れてしっかりと洗う。
オレンジは皮を剥き、薄皮をつけたまま、ひと房ずつに分ける。
ハナがぶどうを一粒つまんでいるのを見て、ソラも食べてみる。甘味の中に少し酸味があって、美味しい。
ハナと視線を交わし、微笑み合う。ハナの顔は美味しい飴ができそう、と期待していて、ソラもワクワクしてきた。
キッチンペーパーで水分をしっかりとふき取る。
「一個ずつ串に刺していくね」
ソラがつまようじと竹串を準備した。
「ぶどう一個ずつ刺すん?」
「うん。こうやって」
ハナに見せながら、ぶどうにつまようじを刺す。
「かわいい」
つまようじが刺さった小さなぶどうが気に入ったハナが、ソラの真似をして刺していく。
ソラも続けてぶどうに刺していく。一粒だったり、竹串をつかって、四粒にしたり。
ぶどうが終わると、ブルーベリー、オレンジと順番に仕込んでいった。さくらんぼは茎が残っているから、そのまま利用する。
最後に残ったりんごには、割りばしをゆっくりと刺していく。
「硬そう」
突き抜けないように、慎重に刺していくソラの手を見ているハナが手を握っていた。
「できた」
「屋台みたいやなあ」
嬉しそうに、ハナの目がきらきらと輝いた。
「仕込みは終わったよ」
「いよいよ飴作り?」
「そうやで」
上白糖と水を計って鍋に水を入れ、馴染ませてから、火にかける。
「かき混ぜへんの?」
ソラが何もせず、鍋をじっと見ているだけなのが気になったのか、ハナがお玉を渡そうとしてくれた。
「混ぜたらあかんねん。触らずこのまま煮詰めていくから」
「そうなんや。何分ぐらい?」
「10分ぐらいかな」
「けっこうかかるんやな」
「あとで声掛けるから、遊んでていいよ」
「うん」
頷いたハナは、イスに座ってスマホを触り始めた。
ソラは鍋の中でぐつぐつと大きな泡を立てている飴の元を注視する。
淡い茶色になってきたところで、つまようじで飴をすくい、水につけてみる。
触れるとねちゃっとなり、まだだなと判断する。
それを何度か繰り返していると、ようやく固まった。
「ハナちゃん、できたよ」
急いで戻ってくるハナ。
弱火にした飴に、つまようじに刺したぶどうをくぐらせた。くるりと串を回し、全体に飴を絡ませていく。
「すごーい。フルーツ飴やあ」
ハナが歓喜の声を上げた。
「ハナちゃんもやってみる?」
「うん!」
ソラはお鍋を火から大きく離さないように気をつけながら、ハナがやりやすいように、横に移動する。
ハナもぶどうのつまようじを取り、飴に近づけていく。
「飴熱いから、触れへんように気をつけてな」
ハナがやけどをしないようにソラが注意する。
そっとぶどうにだけ飴を潜らせたハナ。くるりと回転させてから、飴から引き離した。
コーティングされたぶどうは、つやつやの光沢を放っている。
つまようじを立ててクッキングシートに置いたぶどう飴を、ハナは愛おしそうに見つめていた。
ふふっと微笑んだソラは、続きをしていった。
ぶどう、さくらんぼ、オレンジ、ブルーベリー。
足りなくなったらまた飴を作り、果物をくぐらせて、クッキングシートに並べていく。
大きなりんごをくぐらせると、ハナの目がよりいっそう楽しそうに輝き、キツネ耳がぴょんと飛び出した。
今は二人だけだから、耳ぐらいいいか、とソラは見て見ぬふりをしておいた。
「出来上がり!」
「わーい。食べよう食べよう」
「片付けてからな」
ソラは先に片付けようとした。ところがハナがしゅんと悲しそうな顔をし、耳が垂れ下がる。
感情がわかりやすいハナがかわいくて、ソラは苦笑しながら折れた。
「わかった。一個だけな」
「やった!」
二人とも最初に作ったぶどうの串を取り上げる。
「「いただきます」」
一粒を口に入れ、噛む。
パリパリザクザクと良い音がして飴が砕け、果汁が溢れる。果物の甘さと違う甘味と果汁が混ざり、
「美味しい!」
味も音も楽しい食べ物になった。
やめ時がわからなくなったのか、ハナがさくらんぼにも手を出した。
「さくらんぼは、美味しいしかわいいけど、種が邪魔やなあ」
と感想を呟いている。
その隙に、ソラは使った鍋などを手早く片付けた。
美味しい飴ができるといいなあ。
ハナと一緒に美味しいものが作れることが嬉しくて、ソラの足は自然と速くなる。
「ソラちゃん。おはよう」
ハナの声がした。扉の前で、スマホを持ったハナが待っていた。
ソラは駆け寄る。
「おはよう。もう来てたん? 早くない?」
「今着いたところ。すごい楽しみにしてた」
「私も」
お互い弾んだ声であいさつを交わし、レンタルキッチンの中に入った。
手を洗ってから、果物を取り出し並べていく。さくらんぼ・ブルーベリー・ぶどう・オレンジ・りんご。
「いろんなフルーツ買ってきたんや」
「うん。夏が旬以外のも売ってたから、皮ごと食べられるもの選んできた」
「なんで皮ごと食べられるもの選んだん?」
「水分が多いと、飴が固まらへんねんて」
「そうなんや。なんでもできるんとちゃうねんね」
「そうらしい」
りんご、ブルーベリー、さくらんぼをそれぞれよく洗い、房についているぶどうを一粒ずつはずし、ボウルに入れてしっかりと洗う。
オレンジは皮を剥き、薄皮をつけたまま、ひと房ずつに分ける。
ハナがぶどうを一粒つまんでいるのを見て、ソラも食べてみる。甘味の中に少し酸味があって、美味しい。
ハナと視線を交わし、微笑み合う。ハナの顔は美味しい飴ができそう、と期待していて、ソラもワクワクしてきた。
キッチンペーパーで水分をしっかりとふき取る。
「一個ずつ串に刺していくね」
ソラがつまようじと竹串を準備した。
「ぶどう一個ずつ刺すん?」
「うん。こうやって」
ハナに見せながら、ぶどうにつまようじを刺す。
「かわいい」
つまようじが刺さった小さなぶどうが気に入ったハナが、ソラの真似をして刺していく。
ソラも続けてぶどうに刺していく。一粒だったり、竹串をつかって、四粒にしたり。
ぶどうが終わると、ブルーベリー、オレンジと順番に仕込んでいった。さくらんぼは茎が残っているから、そのまま利用する。
最後に残ったりんごには、割りばしをゆっくりと刺していく。
「硬そう」
突き抜けないように、慎重に刺していくソラの手を見ているハナが手を握っていた。
「できた」
「屋台みたいやなあ」
嬉しそうに、ハナの目がきらきらと輝いた。
「仕込みは終わったよ」
「いよいよ飴作り?」
「そうやで」
上白糖と水を計って鍋に水を入れ、馴染ませてから、火にかける。
「かき混ぜへんの?」
ソラが何もせず、鍋をじっと見ているだけなのが気になったのか、ハナがお玉を渡そうとしてくれた。
「混ぜたらあかんねん。触らずこのまま煮詰めていくから」
「そうなんや。何分ぐらい?」
「10分ぐらいかな」
「けっこうかかるんやな」
「あとで声掛けるから、遊んでていいよ」
「うん」
頷いたハナは、イスに座ってスマホを触り始めた。
ソラは鍋の中でぐつぐつと大きな泡を立てている飴の元を注視する。
淡い茶色になってきたところで、つまようじで飴をすくい、水につけてみる。
触れるとねちゃっとなり、まだだなと判断する。
それを何度か繰り返していると、ようやく固まった。
「ハナちゃん、できたよ」
急いで戻ってくるハナ。
弱火にした飴に、つまようじに刺したぶどうをくぐらせた。くるりと串を回し、全体に飴を絡ませていく。
「すごーい。フルーツ飴やあ」
ハナが歓喜の声を上げた。
「ハナちゃんもやってみる?」
「うん!」
ソラはお鍋を火から大きく離さないように気をつけながら、ハナがやりやすいように、横に移動する。
ハナもぶどうのつまようじを取り、飴に近づけていく。
「飴熱いから、触れへんように気をつけてな」
ハナがやけどをしないようにソラが注意する。
そっとぶどうにだけ飴を潜らせたハナ。くるりと回転させてから、飴から引き離した。
コーティングされたぶどうは、つやつやの光沢を放っている。
つまようじを立ててクッキングシートに置いたぶどう飴を、ハナは愛おしそうに見つめていた。
ふふっと微笑んだソラは、続きをしていった。
ぶどう、さくらんぼ、オレンジ、ブルーベリー。
足りなくなったらまた飴を作り、果物をくぐらせて、クッキングシートに並べていく。
大きなりんごをくぐらせると、ハナの目がよりいっそう楽しそうに輝き、キツネ耳がぴょんと飛び出した。
今は二人だけだから、耳ぐらいいいか、とソラは見て見ぬふりをしておいた。
「出来上がり!」
「わーい。食べよう食べよう」
「片付けてからな」
ソラは先に片付けようとした。ところがハナがしゅんと悲しそうな顔をし、耳が垂れ下がる。
感情がわかりやすいハナがかわいくて、ソラは苦笑しながら折れた。
「わかった。一個だけな」
「やった!」
二人とも最初に作ったぶどうの串を取り上げる。
「「いただきます」」
一粒を口に入れ、噛む。
パリパリザクザクと良い音がして飴が砕け、果汁が溢れる。果物の甘さと違う甘味と果汁が混ざり、
「美味しい!」
味も音も楽しい食べ物になった。
やめ時がわからなくなったのか、ハナがさくらんぼにも手を出した。
「さくらんぼは、美味しいしかわいいけど、種が邪魔やなあ」
と感想を呟いている。
その隙に、ソラは使った鍋などを手早く片付けた。
28
あなたにおすすめの小説
【完結】『左遷女官は風花の離宮で自分らしく咲く』 〜田舎育ちのおっとり女官は、氷の貴公子の心を溶かす〜
天音蝶子(あまねちょうこ)
キャラ文芸
宮中の桜が散るころ、梓乃は“帝に媚びた”という濡れ衣を着せられ、都を追われた。
行き先は、誰も訪れぬ〈風花の離宮〉。
けれど梓乃は、静かな時間の中で花を愛で、香を焚き、己の心を見つめなおしていく。
そんなある日、離宮の監察(監視)を命じられた、冷徹な青年・宗雅が現れる。
氷のように無表情な彼に、梓乃はいつも通りの微笑みを向けた。
「茶をお持ちいたしましょう」
それは、春の陽だまりのように柔らかい誘いだった——。
冷たい孤独を抱く男と、誰よりも穏やかに生きる女。
遠ざけられた地で、ふたりの心は少しずつ寄り添いはじめる。
そして、帝をめぐる陰謀の影がふたたび都から伸びてきたとき、
梓乃は自分の選んだ“幸せの形”を見つけることになる——。
香と花が彩る、しっとりとした雅な恋愛譚。
濡れ衣で左遷された女官の、静かで強い再生の物語。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる